「夕空に鳥を見た。」 ある日の事だ。 私は、夕暮れに鳥を見た。 その空はオレンジ色にほど遠く、灰色に薄汚れている。 吐く息も凍る季節・・・街は静かだ。 なのに、それは元気よく羽ばたき、五月蝿いくらいにはしゃぐ。 少し経つと、それは樹に戻る。 少し飛んで、少し留まって。 どっちかにしろ、と言わんばかりの姿に、私はちょっと笑った。 寒いのに、暇だからと、ただそれを眺めていたら・・・ いつしか、二羽に増えている。 親かな?と思う間に、それは黒い塊になった。 何十羽にもなる、盛大な音楽隊。 耳には車を蒸かす音と、バサバサ、バタバタ。 信号は赤になり、空には灰色だけが残り、世界はまた、静まり返った。 一瞬、この世界に、たった一人になったような気がした。 そんなことはすぐに忘れて、携帯を取る。 何も受信していないなら、こっちから送ってしまおう。 私は一人じゃないし、あの人も一人じゃないのだから。 タイトルは、鳥がすごかったよ、これに決まり。 その後は、カツコツという、足音だけが耳に響いた。