『ガギィィィィン』
暗闇にそびえる隔壁に鈍い音が響く
「・・・相当な硬度だな、オリデオコンと・・・これはまさか・・・エンペリウムの合金か?」
数回に渡り短剣を壁に当ててみて反響音を聞き
短剣が突き立つこともなかった隔壁から僅かに削れた金属粉から成分を予想する
暗闇の中でも金色に輝く金属粉、そして蒼く煌く金属粉これらの合金であるということを確信する
加工しにくいが魔法的、物理的にも最高の硬度を誇る神の金属エンペリウム
そしてそのエンペリウムを唯一加工することのできる同じく神の金属と呼ばれる
物理的に最高の金属オリデオコン、この二つを合金とした扉だ
安易に物理的、魔法的に破壊しようとすれば反対に自らを傷つける結果となるだろう
こんなものを壊せるものは神の金属に熟練したホワイトスミスか
あるいはエンペリウムさえ砕くといわれる武器を使う位か
パゼラルドを腰に差し戻し、三重に鞘に包まれた一本の短剣を取り出す
「これを使うしかないか・・・」
鞘から物々しい封印と鞘に包まれた短剣とは似つかわしいが
言い表すのならば短剣であろう錐と呼ばれる物をを取り出す
その形状から硬く強固な物の隙間にねじ込み内部から破壊するそんな能力を持った短剣だ
しかしまだ続きがある
その能力は封印しなければ常に所持者が使う様々な技に作用を与えてくると言う事だ
製作者の魔力がすごかったのか
果てまたただ作ってみたらすごい能力を持ってしまったからなのか
結局封印されるにいたった経緯は知ることはない
誰も知るところのない場所でギルドより処分することを命じられている
ただそれだけの代物
一度だけこれを狙われ手持ちの武器がなくこれで応戦したことがある
切りつけられた相手は、その部分から傷が広がり破裂して死んだ
だから当時の封印より二重に増やした、間違っても人に使うことがないように
しかし今は使う、この隔壁を破ることのできる武器はこれだけだ
短剣を握り締め滑る様に足を踏み出し同時に上から下へ振り下ろす、縦に大きく亀裂が入った
右上から左下へ、左上から右下へ今度は一瞬にして二回振った、斜めに亀裂が入り大きく音をたてる
真ん中の三回切り込みが走った一点を貫き、隔壁は見事無残に崩れ落ちた、警報と巨大な質量が砕ける音を残して
「・・・俺は・・全てを終わらせてやる・・・」
禁断の短剣を元のように鞘に戻し、暗かった入り口と打って変わり
照明の光に満ち溢れた地下四階に足を踏み入れた




          *        *        *



「・・・・・疲れた・・・」
何故か自分のベッドで寝ているカヴァクの様子を見ながら椅子に座り
魔導書片手にマジシャンの少年はため息をつく
巡回が終わりプリンを食べようと冷蔵庫まで行ったときだった
『コンコン・・・』
「ん、誰?」
「・・・・・・・」
ノックがあるのに返事がない、こんな夜遅くに、エレメスさんが倒れてからというもの頻繁に来る姉ちゃんでもない
まず最初に姉ちゃんならば、『・・・ラウレル、私』とか言って来るはずだ
どこかのスナイパーみたいにノック無しで入るような姉ではない
「・・・まさかここまで侵入者が?」
ありえない話ではない、自分が巡回中にエレメスさんと会い少し話をして帰ろうとしたときに
影に潜み自分達を狙っていた暗殺者を一瞬で葬り去るという場所を一度だけだが見ているからだ
『・・・皆の技量を見くびっているわけではないが
どんな手段を尽くしてでも目的を達そうとするのが暗殺者だ
皆と戦わせるくらいならば・・・この手で消そう
・・・・・・っと思ってるわけでござる
ラウレル殿、皆には言わないでほしいでござるよ、特に負けず嫌いのトリスには』
いつでも笑顔を見せてくれるエレメスさんは今、動けてはいない
扉の前でサイトを炊き注意しながら扉を開ける
「・・・・・・なんだよ・・・カヴァクか」
緊張に高鳴っていた心臓が平静を取り戻しとりあえず一つ目の文句がでる
「まったく、返事くらいしろよ、んで何のようだ?」
「・・・・・・」
カヴァクが前のめりに倒れくる
あわてて右手に持っていたスタッフオブウィングを放してカヴァクの身体を支える
「・・・すまない・・・ショックで立ち直れそうにないんだ・・・」
「何があったんだよ」
「・・・最終的に部屋の扉とPC丸ごとを姉さんに壊されたというか消されたというか・・・」
「OKOK、なんとなくだが理解した」
「・・・・とりあえず扉を壊されて隙間風が寒いから泊めてほしいのと
愚痴でも聞いてくれないか・・・?」
それから四時間延々と愚痴を聞き、疲れたのかカヴァクは眠ってしまった
カヴァクに毛布をかけてやり、新しく出した毛布を被って自分は椅子で寝ようと思う
「・・・・恥ずかしくて一緒に同じベッドで眠れるもんか・・・」
毛布を被って寝る体制に入ったところでソファ、俺の部屋にもほしいなあとか思いつつ眠りについた




        *        *       *       




「ねぇ、あなたの名前は何?」
「俺は、『蒼髪の悪魔』貴女は『黒猫』それでいいだろう」
「六柱内では必要以上に情報漏れがない様に通り名で呼び合うんだけど、
私はプライベートで堅苦しいの、嫌い」
先程からこの調子である
皆が帰り自分一人になったのでインドラに愚痴でも聞いて貰おうと思いつつギルドを出た
外に出たところで待っていたかのような顔をして黒猫が座っていた。
「・・・エレメスだ」
「ふーんエレメスか、私、ヒュッケ、よろしく」
可愛いげな笑顔と猫のような格好、恐らくこの容姿すらも彼女の武器なのであろうなあと思いつつ帰路の道を辿る
「・・・何処まで着いてくるんだ?」
「どこへ行こうと私の勝手」
とうとういつもの丘が見える場所までヒュッケはついてきた
このままだとインドラに何を言われるか・・・
「よおエレメス・・・まさかナンパか?どっから連れてきたんだよその美女は」
「・・・・」
鉢合わせした上に予想通りの反応に正直がっくりくる
そして一瞬思考する、トリスに見られたらなんかやばい気がする
やってしまったかも知れないと思い辺りを見渡す
「・・・・トリスは?」
「お前が知らないのに俺が知っているとでも?」
「朝、確かにインドラの所に行ってくるとな・・・」
「・・・ああ、今日は用事があったんでな、帰って貰った」
「お前が用事とは珍しいな」
「俺がそんな暇人にみえるか?」
「・・・見える」
「節穴め」
ヒュッケが呆れた様に頭を押さえながら話に割り込んできた
「エレメス、この人と知り合いなわけか・・・・六柱『黒猫』情報の開示と連絡を要求する」
「ん、今回はあの男が連絡役じゃないのか、今は、エレメスが居るから後にしてくれないか?」
「問題ない、彼も六柱」
「ふーん、そうか」
「それに今回は、六柱の選定に当たった連絡、つまり彼の事」
「・・・すまない話が見えないんだが」
「こうなったら隠す必要もないだろう、俺はギルド間、最上級連絡員兼、
第二部隊副隊長、まあ肩書きだけだがな」
「とりあえず連絡内容とそちらの情報の開示お願いできる?」
「連絡内容は?」
「六柱に『蒼髪ノ悪魔』を入れ六柱を再構成、こちらの連絡員を六柱『銀蜘蛛』から六柱『黒猫』に変更
リヒタルゼンに置けるアサシンギルドの下級構成員の離脱
上級構成員十名から二十名に増員をギルドマスターの命にて通達します」
「副隊長の権限においてこれを事実として通達する、じゃあこちらの情報開示だ
まずそちらの元六柱の死因はそっちでわかってるだろう?」
「ええ、全身粉々、五体はバラバラの変死というくらいだけど・・・」
「あの死体は人の力でやられたものじゃない、こちらでも調べているがガーディアンによるものか決めかねている
あれほどの破壊力を出せる個体はこちらでもまだ確認してないし、向こうが公表しているガーディアンの中にもない
あと先に消息を絶ったという四人だがこちらでもまだ捕捉できない、これが今の中間報告だ」
「そう・・・これを正式なチェイサーギルドの情報として報告します、エレメスまたね」
その場からヒュッケの気配が一瞬で移動し、かなり遠くのほうに気配を感じる
(速い・・・・)
「なあインドラ、ガーディアンはどれほどの力が出るものなんだ?」
自分の先代にあたる者が粉々の変死だと言うのだ違和感が多くてしょうがない
「リミッター無しでゴーレムの三体分、通常の警備用はゴーレム一体分ってのが妥当な線だな」
「そんなものなのか・・・」
「調べはついてる、まあまさかお前が六柱とはなあ・・・世も末ってことか」
「・・・どういう意味か言ってみろ」
「・・・お前は強い、アサシンを凌駕する者の一人であり、六柱になっちまうような人間だ
群れることを拒み、だが後輩シーフ達の面倒を見たり変なところでお節介
家族や友、それに・・・仲間か、それらに対してお前は甘過ぎる
相変わらずお前は暗殺者には向かないと思うよ・・・
まあとにかくそんなお前が六柱なんていう軽くない肩書きを持つような人間には見えなかった訳」
「・・・・・」
確かに嫌々了承した肩書きだ
後のことを考えればと、どんどんため息になって出てくる
「・・・ああ、もう今日は厄日だ・・・」
「いつもじゃねえの?」
「お前が言うか・・・・この元凶・・・・」
「・・・・ふふ・・・そうかもな」
インドラのその笑みに初めて違和感を覚えたのだった




「困った・・・」
トリスはただ一人ジャングルの中で途方にくれている
「何であそこで消えるんだか・・・・・」
道がわからず帰れないという怒りのあまりに地団駄を踏み頭を掻き毟る
「もう、インドラさんのバカァァァァァァァァ!」
とりあえず叫んで一応すっきりしたので座り込む
朝たずねて行った時にやんわりと断られ、あまりに暇だったので後をつけることにしたのである
ジャングルのほうへ入っていくインドラを追いかけ、うまく尾行できてると思ったのだが
赤いハーブをむしり取ってるところを見たが直後、跡形も無く消えてしまったのである
ぽけっと口を開け、しばらく草があったところを眺めふと気づいたときにはジャングルの奥深く
人が通るわけでもなく民家も無いとんでもない所に置き去りにされてしまったと慌てた
「・・・・まさかここで死ぬとか・・・ない・・・よね?」
疑問系で聞いたところで誰もいないのが当たり前である
「はぁ・・・・・・・・」
『ガサガサ』
「ひっ!な、何?」
おそるおそる茂みを掻き分けるが何もいない
「何にもいないじゃない・・・」
「君」
「キャー!」
後ろからかけられた声に思わず叫び声を上げてしまう
「初対面の女性に叫ばれるほど化け物でないつもりなのだが・・・」
「す、すいません・・・・・」
「む、ローグですか君はここに何か用が?」
「・・・えっ・・あ、はい」
思わず答えるが"ここ"と言う言葉に疑問をもつ
「・・・ここって何があるんですか?」
「知らないのにここに来たのか・・・・誰かをつけて来たんじゃないだろうね?」
あまりに図星なのでギクリとする
「あはははは・・・実はそうです・・・」
声がどんどん小さくなっていくやっぱり恥ずかしい
男はやれやれとした顔で聞いてくる
「君は誰か師匠でもいるかい?」
「一応いますけれど・・・」
「・・・つけられたマヌケはそいつか・・・・違うかい?」
「・・・・・」
やっぱり図星なのでなんとも言えなくなる
「・・・ここに来るときは尾行に気をつけろと普段から・・ぶつぶつ・・・・」
独り言を始めてしまった男を眺めつつこの場から逃げようかと考えてみるが
地理も知らないこんな場所で逃げ切ることはできなさそうなので、とりあえず独り言が終わるのを待つしかないようだ
握り拳に青筋が出た後、独り言をやめた男が再度質問を投げかけてくる
「・・・そのマヌケの名前を教えてくれるかな?」
「あ・・・はい・・・言っていいのかな・・・」
「言いなさい」
思いっきりにらまれている、しばらく考えるが無言の圧力に耐えかねとうとう話してしまう
「・・・インドラさんです・・・」
「な・・・・・奴を本当につけてきたのか?」
「・・・気づかれてるような気もしましたけど一応・・・」
「奴が何と呼ばれてるか知ってるかね?」
「知りませんけれど」
「・・・第二番隊副隊長『紅き神殺し』そのギルドの五本の指に入るほど強さ
天才的な戦闘センスに洞察力、情報収集、追跡能力、隠密術、交渉話術のそれぞれの能力の高さ
それゆえにローグになった当初よりチェイサーへの勧誘をしたものだよ
・・・今は私の下についているが奴が本気を出せば隊長である私と言えど勝てるかどうか怪しいものだ
とにかく奴が他人に後をつけさせるはずはない・・・奴があえて君を連れて来たと見るべきか・・・」
手を顎に当て何か考え込んでいるようだがもう言っていることが
自分の想像を軽く超えてしまったのでだんだん困ってきた
「君をギルドに招待しよう、奴が認めた人材だ間違えはない」
「え、え?ええぇぇぇぇぇ!?」
あまりの話の発展振りに戸惑うことしか残されていなかった












五話目となりました、終わる気配が皆無です(´д`;)
やっぱり置き逃げです空気なんて読みません本当にゴメ(ry

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