「エレメェェスッ!や ら な い か」
「嫌でござる!いいかげんにするでござるよー!!」
夕飯後のこのやりとりは既に習慣となっていて、誰も気にしていない。
最初は制止していたセイレンも、今では「腰を壊さん程度にしとけよー」と見送るのみだ(ノビたん写真集で懐柔されたという噂がまことしやかに伝わっていたりもするが)。
たまーに「やっかましぃいぃぃぃっ」とセシルがぶち切れることがあるが、肩にかつがれて「離すでござる〜」と叫びながらお持ち帰りされるエレメスを「強く生きろよ〜」と見送るのが習慣となっていた。
 
ハワードは自室にたどり着くと、いつものように慎重に鍵をかけた。
もともとついていた物に加えて3つ…エレメスの意見を聞きながら作った頑丈かつ開錠困難な逸品だ。
「毎度すまないな」
先ほどまでの嫌がりっぷりはどこへやら。
ぺこりと頭を下げるエレメスの頭を、ハワードは笑いながらぐしゃぐしゃとかき回す。
「気にするなって言ってるだろーが。ほれ、とっとと風呂入ってこいよ」
ハワードの部屋には、他の部屋とは違ってきちんと浴槽のある風呂がある。
鍛冶を行う彼に、皆が全会一致で譲った特別な部屋だ。
皆は大浴場の方を使っている。
エレメスが風呂を使っている間に、ハワードは皆から預かった武器の点検を行う。
これもいつものこと。
念入りに血を落とし、刃を研ぎ、油を薄くひく。
金臭い匂いがする中にやがてふわりと甘い香りが混じる。
「お疲れ」
湯上りのエレメスが冷たい茶を持ってくるのも、既に習慣。
普段は暗殺者の心得として体臭を消す処置をしているのに、湯上りのエレメスからはいつも甘い香りがする。
とくに香料の入った石鹸を置いているわけではないのに、だ。
「うわ?」
ぐいと腕を引いて抱きすくめる。
小柄なエレメスは、すっぽりとハワードの腕の中に収まってしまう。
「茶がこぼれたらどうするんだ」
むぅ、と睨むエレメス。
下着の上からハワードのお古のシャツを羽織っただけなので、上から見下ろせばかすかな…本当にかすかな胸の膨らみが見て取れた。
そう、ハワード以外の誰も知らない事実。
エレメス=ガイルは実は女性なのである。
「んー、いい匂いだなぁと」
ハワードはエレメスの首筋に顔を埋めて、風呂上りの女体の香りを堪能する。
鍛えられた体は、しかし本来の性にふさわしく男性の持ち得ないやわらかさを備えていた。
 
知ったのは、本当に偶然。
敵の攻撃で装甲が肉に食い込んでしまったのを剥がすために、服もろとも引っぺがした時のこと。
「見たな」
と瀕死の重傷を負いつつカタールを掴もうとした彼女に口外しないことを誓ったのは何故だっただろうか。
別に「女性は守らなければ!」なんて主義はない。
ただ、必死に隠そうとしているエレメスには隠すなりの事情があるんだろうと思っただけである。
知ってしまえば大浴場で見かけない、誘っても来ない理由がわかるわけで、風呂の提供を申し出たのもこの時だ。
そして、頻繁に連れ込む理由として「エレメスをお持ち帰りするガチホモのハワード」というお芝居を始めて現在に至る。
 
「匂いだけでいいのか?」
エレメスが誘うように囁いて耳たぶをぺろりと舐め上げた。
「お前なら、かまわんぞ?」
ハワードは胸元に伸ばされたエレメスの手を止めて苦笑する。
「やめとけ、体は大事にするもんだ」
「しかし、世話になっているばかりでは」
「んー、でもお前『ならいい』って段階なんだろ?」
「え?」
きょとん、と見上げるエレメスの額に軽くキスをする。
「お前『でなければいやだ』って段階になるまで待つさ」
さっと痛みが走ったようなエレメスの顔を見ないようにして、ハワードは立ち上がる。
男装にこだわる理由、それが色々推測できるだけにハワードは無理強いしたくなかった。
それに、時折ひどく投げやりになるエレメスに自分を大事にすることを考えて欲しいとも思う。
「とはいえ…」
浴室に入って一人呟く。
「いつまで持つかな、俺の理性」
 
 
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と、書きなぐってみた俺338
なんだかキャラが色々違うが気にしないでくれぃorz
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