『愛しい人よ 貴女といられるのなら 僕は何にでもなろう』

「あれ?ジェミニさん、ここで何をしているのですか?」
栗毛のアコライト=イレンド・エベシ=が見た目通りの物腰の低さで尋ねてきた。
「あぁ…ちょっと思い出にふけっていただけさ…」
「そうですか…」
何か言いたげにうつむく。やがて意を決したのか
「あの…こう言ってしまっては失礼だということは重々承知なのですけど…」
と切り出してきた。
「ええと……お、想い人と一緒になれることって、やっぱり嬉しい事なのですよね…?」
顔を真っ赤にして尋ねるその姿は、見ていて初々しい。

僕の体は僕だけのものではない。同じ体に…彼女もいる…。
そんな事情を考慮してくれるのは
彼も…彼だけじゃなく、この研究所にいる皆が、似たような境遇であるからだろうか。

取りあえず…聞かれたからには答えねばなるまい…
「そうだね…今はこんな形になってしまったけど…それでも…彼女と倶にいられるのなら嬉しいよ」
彼が期待していた通りの言葉を得られたのが、小さくガッツポーズをしている。
「ジェミニさん、ありがとうございました」
あまりの判り易さに、不意にいたずら心が湧いた。
「…ふーん…こんなことを聞くって事は……いやはや…まだ子どもだと思ってたのにねぇ…」
「な、なんのことですか…?」
「とぼけたって……で、誰が意中の娘なんだい」
彼は、見る見る頬を上気させ赤くなっていく。
「そ、そんな…意中だなんて…」
何やら言動もしどろもどろになってきた。そろそろいじめるのも止めておこう。
「ははは…そんなにうろたえる様じゃ、後々大変だよ?」
「あぅ…」
そんなところに、少女がやってきた。
「あーイレンド、こんなところにいたの?あ、ジェミニさんまでいる」
「あ、アルマ」
「「あ、アルマ」じゃないわよ全く…もう相当数入り込んできてるんだから、働いてよね」
「ごめんごめん、今行くよ」
怒られているというのに、怯えている様子もない。むしろ…喜んでいる?
「ははぁ…なるほどね…」
僕のつぶやきが不可思議だったのか、アルマイアが小首をかしげている。
「・・・?・・・ジェミニさんもそろそろ出番ですから、準備しておいてくださいね」
「あぁ…大丈夫だよ、言っておいで」
こちらに礼をしていくイレンドの襟首をひっつかんで、2人は戦いに出かけていった…

《初々しくて可愛いわね》
「なんだ、起きていたんだね」
《えぇ》
「…あの子たちには…僕たちみたいにはなって欲しくないね…」
《……後悔…してるの?》
「してないと言えば嘘になる…この手で君を抱きしめることも唇を重ねることもできないんだからね…」
《そうね…》
「でも…常に一緒にいられることに…後悔はないよ」
《私も…同じよ…》
どたどたと足音が近づいてくる。侵入者だ…。
「それじゃ…行こう」
《えぇ…一緒に…ね》

「いたぞ、ジェミニだ」
「JTと風矢DSで仕留めるぞ、前衛耐えろよ」

また…動乱の一日が幕を開けた…
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