ぐき。
「あ、あれ・・・・・・?」

不自然なほどに横を向きながら歩いてくるアルマイアに、セニアは不思議そうな視線を送る。
「アルマ・・・・・・?何やってるの?」
「あ、セニア。いや〜昼寝したら寝違えちゃったみたいで」
「うわぁ・・・・・・災難だね・・・・・・」
2人ともあまり緊迫感が無いが、この2人れっきとした前衛であって、運動量は多いほうである。
この状態のまま戦闘に突入したら目も当てられない。

「でもアルマ、うなじ見えて色っぽいよ〜」
そういう発想と無縁と認識されるセニアが、変なことを言い出した。
「え〜?トリスならともかく、童顔な私がうなじ見せても・・・・・・」
「ほんとほんと。マーガレッタさんに見つからないうちに、イレンドに診てもらったら?」
そりゃ確かにぞっとしないな、とアルマイアが感じるのも無理は無い。
「そ、そうだね・・・・・・あはは・・・・・・って痛!?」
引きつった笑いを浮かべると、寝違いした首までちょっと影響があるらしい。

コンコン。
「イレンド・・・・・・アルマイアだけど、いる?」
イレンドの部屋の扉をノックしたのだが、反応が無い。さてどこに行ったのだろうかと
しばし彼女が考えていると。
「あ」
背後にイレンドがいた。女性もののハイプリーストの格好で。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばしの沈黙の後に口を開いたのはアルマイアだった。
「に、にあうわね・・・・・・」
「え、うん。ありがとう・・・・・・」
もし神の助けを望んだとき、女装イレンドとマーガレッタが並んでいたらどちらにすがるかと
言えば、間違いなくイレンドのほうだな、と思うほどに清楚な雰囲気が似合っている。
(この写真は高く売れそうね・・・・・・)

事情を話し、中に入れてもらうアルマイア。
毎朝起こしに入ってるのにもかかわらず、ちょっと緊張が見える。
どうしたの、と普段のアコライト姿に戻ったイレンドが尋ねてくる。
「ううん、何でもない」

「じゃ、軽く診察するから・・・・・・首見せてくれるかな?」
「あ、うん」
楽な角度に座りなおして、指で髪の毛を掻き分けて首を露出させる。
イレンドのハッと息を飲む気配を感じ、アルマイアもさらに緊張してしまう。
「イレンド・・・・・・どうしたの?」
先ほどのセニアの言葉を思い出しながら、ちょっとからかってみたくなってしまう。
「綺麗な・・・・・・首だね・・・・・・」

アルマイアにとって、イレンドが恥ずかしがることを予想、というか期待していたので、素直な
賞賛は逆に気恥ずかしい。
場合によっては、口説かれてるとも勘違いされる台詞である。
「ね、触ってみてよ」
「うん・・・・・・」
後で思い返せば、アルマイアも「触って診てよ」の言葉が、挑発にしか聞こえないと気づくのだが、
この時は緊張のあまり、言葉が足りなかったのだ。

イレンドの細く白い指が、アルマイアのうなじに触れ、ゆっくりと動かし始める。
「ん・・・・・・」
アルマイアの体に快感が走るのだが、本人は触診と認識しているので、呻きは最小限に抑える。
イレンドの指が首を少し強く押したり、首筋を撫でたり、耳の周囲を触れていくのを、アルマイアは
顔を真っ赤にして快感を抑えていたりする。

イレンドが指を離すと、アルマイアは止めていた息を吐き出し、かすかに喘ぐ。
「イ、イレンド・・・・・・どう、かな?」
聞きようによっては、これまた挑発的な態度なのだが、実際は診察結果に対して真剣である。
「アルマ・・・・・・凄く敏感なんだね・・・・・・」
イレンドが顔を真っ赤にして、少し視線を逸らすと、アルマイアは一連の言動が、挑発的であった
ことを初めて気が付く。
「ああああああ!?ああいやその、ち、違うんだからっ!」
あたふたあたふたと羞恥心で慌てて、勘違いを正そうと思って手をばたばたと動かす。

それを見たイレンドは、ちょっと面白く感じて、
「わかってるよ、アルマ。だから落ち着いて」
「あ、うん・・・・・・」
「純情なアルマの精一杯の背伸びだったんだね」
「子供扱い!?」
いつもの彼女なら、もうからかわれているのに気づいても良さそうだが、動転しまくりの状態では、
ムキになってしまう。
「子供扱いして無いよ、ただ僕でよかったのかなって」
「いいから来たんでしょう!?イレンドに触られて嫌なわけ無いじゃない!」

「あ」

ここに来て、自分がいかに恥ずかしい台詞と態度を発してきたか、アルマイアはようやく気づく。
実はイレンドはちょっとふざけただけで、色事の話では無いのは、いつもの彼女なら判っていた
筈だが、それに釣られて「触られて嫌じゃない」と言ってしまった。
「あ・・・・・・あぅ・・・・・・」
顔が真っ赤に染まり、恥ずかしくて顔を両手で隠してしまう。

イレンドはイレンドで、そんなつもりじゃなかったのに、アルマイアの可愛い一面を見て、こちらも
赤面してしまう。
一応やることはやったので、
「あー、うん、首の骨がちょっと歪んでいるようだね、これはどっちかというとエレメスさんの
方が専門かも」
「え・・・・・・?え・・・・・・?」
「暗殺者だからね、聖職者とは別な意味で人体の構造に詳しいから。それで骨の矯正あたりは、
エレメスさんなら上手く出来るんじゃないかな?ねぇ、エレメスさん?」

イレンドが炙り出しの光の呪文を唱えると、壁際で覗き見していた暗殺者が浮かんでくる。

「い、いやぁ、いつになく色っぽいアルマ殿がイレンド殿の部屋に招かれているのを見て、
いてもたってもいられなくてでござるので・・・・・・」
アルマイアの出す羞恥と怒気のオーラに、沈着冷静な筈の暗殺者は、怪しげな文法の言葉を発し
つつ、冷や汗を出しながら、わずかに後退する。

「速度減少」
「あ!?ひ、酷いでござるよ、イレンド殿!?」

惨劇の後、寝違いはとりあえず治してもらい、恥ずかしそうにアルマイアは帰路に着くのであった。

何やら男2人に妙な認識を植えつけてしまったようだが、
「まあ・・・・・・いいか」
夕飯の準備をすることにした。


いつもからかわれてるイレンド君逆襲の巻
いやちょっと違うかも
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