魔 王 

この夜更け、暗闇と風のなかに、
鋼を駆るのはだれだ。
それは騎士と暗殺者。両者は獲物を
かたく腕に抱き、つよくつよく抱きしめていた。

友よ、何故道化て素顔を隠すのだ。
ともがらよ、魔王がみえぬでござるか。
王冠をつけ、黄衣の裾をひいた魔王でござる。
友よ、それは夜霧のまやかしだ。

気高き友よ、こちらへおいで。
みんなでたのしいコロシをしよう。
あたりには美しい血潮が噴いて、
おまえの仲間も哀れなむくろをこしらえて待っている。

ともがらよ、あれが聞こえぬでござるか?
魔王が声高く拙者に契約するでござる。
おちつくのだ、友よ。よく聞けば、
獲物へ向かう矢が鳴らす弓弦の音だから。

友や、さあ、いっしょに向かえ。
悪魔たちはやさしくもてなすだろう。
輪おどりおどっておまえをあやし、
おまえをたのしませ、死者の悲鳴がおまえをよろこばせる。

ともがらよ、ともがらよ、見えないのでござるか?
魔王と悪魔たちがほの暗い柱のかげでおどっている。
友よ、わかっている。
朽ちた古い剣が燐光を反射するのだ。

かわいい男だ。おまえはほんとに力強い。
いやなら無理にひきつれる。
ともがらよ、魔王に魂をつかまれた。
魔王が拙者を引き込むでござるよ。

騎士は恐怖に身震いし、あわてて剣を構え振り返る。
青白くうなされる友を見て、
ようやくヤツを知りえたが、
すでに自分も腕のなか、己の魂もすでに魔王に奪われていた。


     鼠 捕 り

拙者、名うての暗殺者。諸国各地を
経めぐって、刃でならした鼠捕り。
この由緒ある研究所、
さぞや拙者が御入用。
ねずみがどれほどいようとも、
亡者もぐるに騒ごうと、
きれいさっぱり片付けて
みごと退治をつかまつる。

ごきげんさまの歌うたい。
ときには拙者、子ども狩り。
おもしろおかしく嘲笑たい、
どんな腕利き冒険者でも
有無をいわさずみなごろし。
あばれん坊もツンデレも、
拙者、カタール一ふしで
ばたりばたばた崩れ死ぬ。

手練手管の鼠捕り。
拙者、ほかにもおホモ捕り。
ゆくさきざきの町や村、
仕とめた男は数知れず。
どんなノンケのおとこでも、
どんなムッツリの旦那でも、
カタール振るいて一ふしやれば、
心も空に、身もそぞろ、
あとからあとからついて来る。


   歓会 と 別離

胸がうつ。いざ上へ!
と思うまもなく、まっしぐらに四肢をとばせていた。
すでに夜はこの地をねむらせている。
試験管には黒いとばりが垂れ、
壁にかけられた白衣のかずかずが
おそろしい亡霊のようにぼくの行手をふさぐ。
柱のかげから、鈍い機械の目で、
メタリンのむれがのぞいている。

灰色のメノリウムのむこうがわ、
悲しげな白いランプが照らす。
夜かぜがかすかにカートをうごかして
耳のまわりに不安な音をたてる。
ここはかず知れぬ怪物をうみだしたが、
ぼくの心は真赤にもえていた。
ぼくの鼓動にはなんという火!
ぼくの愛には何という焔!

ぼくはあなたを見た。あなたの狂気の眼差しから
あらたな研究意欲がみてとれた。
ぼくの欲望があなたの欲望とひとつになる。
ぼくの呼吸が一つ一つあなたのために喘ぐ。
うつくしい薔薇いろがあなたのおちくぼんだ頬をそめる。
ぼくに対するあなたのよこしまな研究心の深さ。
ああ、神々よ。ぼくはそれをねがったが、
ぼくはすこしもそれに満足せぬのだ。

やがてしののめの光とともに
ちかづく絶頂がぼくの胸をしめつけた。
あなたの口づけには何という恍惚!
あなたの眸にはなんという狂気!
ぼくは彼にまたがった。あなたは黙って眼をふせた。
そして涙の眼でじっとぼくをみつめた。
ああ、愛せられるということはなんという幸福だろう。
そして神々よ、愛することは何という盲目だろう。


     リンコイスの歌

あたしは射るために生まれてきた。
射ることがあたしの職分だ。
地下室からみると、
世界はあたしには気に入らない。
あたしは遠くを見る。
あたしはまた近くを見る。
柱や床を。
天井や血のりを。
この場はすべて
研究者たちの欺瞞の装飾だ。
世界はあたしを気にいったけど
あたしはぜんぜん気にいらない。
不幸な二つの目よ、
あたしの射たものは、
何が何であろうと
さすがにみんな砕け散った。



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あやまれ、ゲーテに謝れ!

注:ゲーテ詩集をお持ちの方はお手元の原詩と比べないでください。

・魔王:悪魔に囚われたセイレン&ガイル。わりと真面目。
・鼠捕り:序盤カコイイだったけど最後はうほっ。ちょっと後悔している。
・歓会と別離:文句は 9スレ目>>643 に言って下さい。ボルゼブうえっ!
・リンコイスの歌:さすがにガチホモで閉めたくないのでひねり出した。

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by CrItlh
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