姉譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。
研究所1Fに居る時分中央の水場に階段から飛び降りて一週間ほど腰を抜かしたことがある。
なぜそんな無闇をしたと聞く人があるやも知れぬ。
別段深い理由でもない。階段の上から下を見下ろしていたらトリスが胸元をあけて風をいれていた。
覗き込んで落ちただけのことである。
姉が「…どうしておっぱいを覗き込んだりしたの」と叱ってきたので、
この次は落ちないように覗きますと答えた。

 エレメスさんから洋モノの裏DVDを貰って自宅で試写会を開き、友達(約2名)に見せていたら、
一人が「モロだけど美しさに欠ける」と言った。モロでも美しいものはあるのだ。エベシ。
見てみろ、この通りだとズボンを下ろして俺の狼(愚息)を見せると丁度姉が帰ってきた。
 幸いイレンドが一緒にいたので、未だに黒こげにはなったが生きている。
しかし息子が数日は立たなくなった。

 姉はちっとも俺を可愛がってくれなかった。
そしてセシルさんは毎日キレていた。
このセシルさんはやに乳が小さくて、男装をしても違和感が無いくらい漢らs…………


 み、見るたびに綺麗で美しい人だと俺とカヴァクとイレンドが云った。乱暴dいやすいません違いますちがいます
…えーと、お淑やかでとても将来が楽しみだとセイレンさんが云っていた。多分。
 ここに来てからは、姉と二人で暮らしていた。
姉は何もせぬ女で、人の顔さえ見れば「ラウレル…ごはんまだ?」と口癖のように云っていた。
何度食べれば気が済むのか未だに分からない。妙な胃袋というか満腹中枢があったもんだ。
それでいて太らない。乳はでかい。
 毎日食事を作っても作っても終わらないので、もう出て行くといったら姉が、泣きながら俺に謝って、
俺も仕方なく折れた。シャレじゃねーぞカヴァク!笑うな!違うっつってんだろうが!

 姉は元々由緒のあるものだったそうだが、どこをどう間違えたのかこの研究所に居ついている。
この姉が、どういう因縁か俺を非常に重宝してくれている。主に食事で。
姉は時々台所で人の居ない時に「…あなたはすぐキレるけどよい料理人だ」と褒める時が時々あった。
しかし俺はちっとも嬉しくない。違うぞトリス、別に俺は嬉しくなんか…ねーよ…。
 それでも姉は本当は俺を可愛がってくれる。
ガマンは止せばいいのに、折々は自分のおやつを半分のこしておいてくれる。
寒い夜などはひそかにうどん玉と調味料を一式買って来て、枕元に置いておいてくれる。作れってことかYO。
おさがりのシルバーローブ[1]も貰った。死者の遺品も貰った。いや、姉ちゃんこれは青箱じゃなくてね。
これはずっと前の事になるが、おこづかいもくれた。30z。本当に小遣いかYO。


中略


ぶうと云ってアルマがむくれると、イレンドがまぁまぁと擦り寄って諌めて来た。
ハワードさんは真っ裸に赤ふんどしをしめている。3Fは恐ろしいところだ。
俺の+3スタッフオブウィングが壊れたからハワードさんはどこだと聞いたら、
俺の財布を引きたくってのそのそと歩き出した。まだPC3かYO。
ハワードさんはエレメスさんを今まさに襲おうとしているところだった。
アルマがむくれたのはこのせいだ。
ハワードさんが「修理費は3kzでいいぜ」と言ったのも理由だったかもしれぬ。安かったと思った。

 修理中にうとうととしたら姉の夢を見た。
姉がアマツのさくらもちを葉っぱごとむしゃむしゃと食っている。
姉ちゃん、それは香り付けのモンだから別に剥がして食ってもいいんだぞと云うと、
「…この葉っぱが殺菌効果があるの…」と云って旨そうに食っている。
俺があきれ返ってハハハ…と笑ったら眼が覚めた。修理が終わっていた。相変わらずアルマは不機嫌そうだ。



 ある夜、カヴァクから急な連絡が入った。
「イレンドの奴のところへ、セニアがお泊りをしかけるらしい」
 とんでもない醜聞(スキャンダル)だ。これをセイレンさんが知ったらどうなるだろうか。
俺も急にうれしくなって、何も詳しい事を聞かない先から愉快愉快と云った。

「今夜七時半頃セニアがイレンドの部屋へ入った」
「イレンドも一緒か?」
「いいや、奴はマーガレッタさんのところだ」
「それじゃダメじゃねぇか」
「いや、セニアはトリスと二人連れだが――どうも有望らしい」
なんだよ有望って
「どうして」
「どうしてって、兄貴がああいう奴だから、二人連れで安心させておいて、トリスは帰るかもしれない」
「そうかも?しれない。もう九時だろう」
「今九時十二分ばかりだ」と、腹巻からダイバーズウォッチを取り出して見ながら云った。
それ腕に巻くもんじゃねぇの?

 世間は大分静かになった。3Fから僅かにエレメスさんの悲鳴が聞こえてくる。
と、往来から人声が聞こえてきた。イレンドの奴だ。
姿を突き止めることはできないが、段々近づいてくる模様だ。

「もう大丈夫ですね」
「強がってばかりいるけど可愛いものだ」
「全くあのセニアときたら…」

途切れ途切れに会話の内容が聞こえてくる。
俺は余程「俺も混ぜてくれ!」と飛び出しそうになったが、やっとのことで辛抱した。

「おいカヴァク」
「あぁ、ラウレル」
「不埒な話だ、全くけしからんな」
「全くだ。よりによってあのセニアを強引にとはな…性職者と性騎士め」
「全く持ってけしからん、あぁけしからん。ガマンできん」
「落ち着けスネーク。こうなれば俺達も混ぜてもらうんだ、現場に乗り込んで」

 二人の影法師がイレンドの部屋へ入るや否や、俺達は疾風のように後ろから飛び込んだ。

「俺達も混ぜろ!」
「けしからんぞ!聖職者や騎士殿とあろうものが、強姦や近親相姦を容認するとは!
 よって俺達も混ぜろ!混ぜてくれ!お願いします!」

 部屋の中にいた4人は、まるで別の生き物を見るかのようにポカーンと口を開けてこちらを見ていた。

「ラウレル、カヴァク。」

 セイレンさんが静かに言った。

「近親相姦とは何かね?我々はトリスの相談に乗っていただけの話なのだが。
 返答如何によっては君達に何らかの粛清を下さねばならん」

 見る間にセイレンさんの足元から蛍の光が立ち上り、迸る闘気が俺達を圧迫する。
あぁ、ごめん姉ちゃん。俺、勘違いしてはやまったよ。
死んだら後生だから姉ちゃんのお寺へ埋めてください。お墓の中で姉ちゃんの来るのを楽しみに待っています。

なんて思うわけもなく。

俺達は必死で飛んでくる剛槍をかいくぐって逃げ出したのだった。
一発ドタマにもらったがなんとか生きていた。全く念属性でよかったぜ。








――おしまい



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送