「ダンスパーティ〜!?」

 おおよそ女性らしい慎ましさのない声が響き渡る、ここは生体研究所。
 付け加えていうならば、そこは地下奥深く深くにある、人とよく似た、されど人とは異なる彼ら彼女らが暮らす場所。その中でも、特に奥深くにあるここは、さしずめ彼らの安息の場所か。
 今彼らは共に夕食をとったところ、くちくなった腹を抱えて雑談に興じている最中。だがそのときに、彼らと共に生活している奇妙な二人組みが提案したものが、先ほどの叫び声の内容。

「ええ、そうですよー。皆さんいつもいつもがんばっていらっしゃってますから〜」
「明日は週に一度の安息日。骨休め変わりに道楽にひたるというのも〜」
『それもまた一興、とはおもいませんか〜?』

 二人組みの名前はジェミニS−58。二人セットでこの名前、決してふざけているわけではない。双子の名を関した彼ら彼女らは、決して離れることのない織姫彦星か。
 その二人といえば、手と手を取り合い踊るように――もとい、その場で緩やかに翻り、優雅に、ただ優雅に舞を始める。

「あなた方は休みといえば食っちゃ寝寝ちゃくって」
「若いミソラ、ドレミファソなのに色気より食い気、花より団子のファソラシド」
『健全な男女として、あるまじき実態です!』
「だからこそ、のこの企画」
「れーっつ、しゃる・うぃ〜」
『だ〜んす?』

 踊る合間も口は止まらず、流れる動作は鳥の宴。最後の台詞と共に大胆なポーズでフィナーレを極める。絵になるような美男女の二人組みはそれだけで華やかさを増す。
 ほうっと見とれる声とともに沸く拍手。彼らはそれを聞くと共に二コリと一笑、ヒラリと一礼。
 一同に注目されながら、如何でしょうかと首を傾げれば、賛同の声――

「ちょおーっとまったぁぁぁ!」

 ――空気読めてない人がいました。
 ダタンと机に両手を叩きつけて勢いよく立ち上がったのは黄金色の長い髪がはっとする、躍動感あふれる健康的な少女。
 彼女の名前はセシル=ディモン。弓の名手にして誇れる美貌、すらりと伸びた肢体、そして何よりも目を見張るのはその絶望的なまでにまっ平らな胸ッ! もう一度繰り返しましょう、その絶望的な胸ッッッ!

「うるさいッッ!」
「そっ、某なにも言ってないでござアッー!」

 今また一人、尊い犠牲が生まれた。それはともかく。
 彼女はキッとにらみつけるようにジェミニに振り向き、腕を組んで一歩踏み出す。おおっと、そのポーズ、そのポーズッ!
 それは余りにも、寄せて上げて胸を強調するどころかまったく持って無意味ッ! むしろない胸がより一層目に付いて逆効果アッー!!
 ギンッッッ!
 ……虚空をにらまれました。ごめんなさい自粛します。それはともかく。
 彼女は一息ついた後、髪を掻き揚げながらジェミニに話しかけた。

「あのねえ、いきなりダンスとか言われたってコッチは困るんだけど?
 準備とか料理とかいろいろあるし? それにメンテがいつ終わるかも解らないし?」
「……セシル、それ……メタ発言」

 鋭い突っ込み。それを呟いた彼女は、彼女はああっ、なんてナイスバディッッッ! このすばらしい乳、乳、巨大な乳とかいて巨乳ッ! 彼女と並べばセシル、あまりにも、余りにも貧――

「また某に射らないでござアッーアアアアッー!」

 犠牲者に無常な追い討ち。恐るべしセシル、そしてそれよりも魅力あふれる恐るべし乳ッ!
 この余りにも魔力的な乳の持ち主の名前はカトリーヌ=ケイロン。あふれんばかりの胸と子犬的な従順さ、無口ながらも時折見せるはにかみ笑顔が目を引く美少女、美少女!
 ちなみに、さきほどから矢カモにされているのはエレメス=ガイル。黙っていれば美青年、戦う姿は修羅の所業。されどその真の姿は――

「姫ッ、姫……ッセシル殿が酷いッ! 痛いのに、某が止めて止めてといっても躊躇わずに……」
「あらあら。セシルちゃんの機嫌そこねちゃだめよ?」

 へたれである。傍らで紅茶を口にしている妙齢の――

「ちょ、姫何をするでござアッー!」

 あー、エレメス君がまたもやまたもや尊い消し炭に。……じょ、女性の年齢を憶測するのって、NGよね? ネっ?
 えー……ともかく、そこにいる女性の名前はマーガレッタ=ソリン。カトリーヌほどではないにしても、やはり目につく胸ッ! ぷるんぷるんっ♪
 すごい、すごいぞ生体研究所! 乳の集う万魔殿!

「無・視、すんなぁぁー!」

 あ、貧が切れた。彼女はカルシウムが足りないのかはたまたコンプレックスからか、よく切れます。取り扱い注意、銃刀法違反クラスの切れっぷりです。

「だ・か・らっ! なーんでいきなりダンスとか言い出すわけ、あんたたちッ!」

 その言葉にジェミニは、ジェミニはああっ、目に目に涙を浮かべてヨヨヨと泣き崩れるじゃありませんか。
 流石にこの反応には予想外だったのか、セシルもあわてだします。

「ちょ、何いきなり泣き出さなくったっていいじゃない……」
「だって……だって…………」
「私たち、スレに名前出てくることがないんだものっ!」
『私たちだって目立ちたいッッッ!』

 その気迫、53万ぱうわー。されど言葉は悲哀の化身。
 この言葉は、誰にも否定はできない。

「だとしたら、私たちが目立つように自力で奮闘するまでのことっ!」
「そのためのダンス、そのためのパーティ!」
『そして萌えろッ!』
「……………………」

 ……。
 フォローもありません。
 痛い、痛すぎるこの沈黙ッ! だがそこに、救いの神が現れたッ!

「あー……別にいいんじゃねえか、たまには? やってみりゃ多分、それなりには面白いと思うぞ。な、セイレン(むしろジェミニがキレてスレにカップル論議起こすかもしれないし、今のうちにストレス発散だ)」
「まあ……悪くはないがな(だからメタ発言やめろって)」

 台所から出てきた二人の男、セイレン=ウィンザーとハワード=アルトアイゼンがそう呟いた。
 ……小声の部分さえ見なければ、ああそこには温かい友情。
 ちなみに彼らは皿洗い当番。よく見れば可愛い花柄エプロンのペアルック。
 賛同者を得たのがうれしいのか、はたまた上がりきったテンションに押さえが効かないのか、ジェミニはセシルに指をさす。

「さあ、どうなのセシィィィルッ!」
「貴方だけが否定しているッ! 何故だ、共に踊ろうではないかっ!」
『好き嫌いイクナイ! 大人しく観念汁!』

 だけども返るのは沈黙、沈黙、沈黙。
 うつむいた彼女、何を震えているの? 拳を握り締め、顔を赤くして?
 やがて――
 蚊の鳴くような声で、彼女が搾り出した言葉は。

「……ないのよ…………」
『え?』

「踊れないって言ったのよ、私はぁぁぁーッッ!」



――――――――――――――――――――
自壊――もとい次回予告ッ!

結局ブチ切れしたにもかかわらずダンスパーティが決まってしまった生体研究所!
踊れないとわめき叫ぶセシルたん、貴方は当日踊れるのか? 踊れないのかッ!?
主役だ主役だと喜ぶジェミニ。どう見てもおまいら脇役だが作者は謝らないゾッ☆彡
それどころか2Fメンバーも乱入。さらにッ、リムーバの中の人すらそのベールを脱ぐ!そして、そしてセシルたんと共に踊る人は、一体、一体だれなのかアッー!?

命運は如何にッ。次回に続くッッ!?






追伸(´・ω・`)正直スマンカッタどす。
by CrItlh
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