薄暗い部屋の中に、携帯コンロの明かりだけが煌々と灯る。
その明かりに照らされる顔が2つ。

「まだなのか?」
「まだだ、大佐。この任務は忍耐力命だ」

俺がこの部屋に入ってからかれこれ10分が経過している。
ぐつぐつと煮えたぎる鍋を見つめながら、真剣な表情でその煮え具合を確かめる。
「OK、良いだろう、兄弟。食べごろだ」
「お前の部屋にコンロがあって助かったぜ、カヴァク」
何故か知らないが、破壊された食堂の調理室は、今もリムーバたちの必死の復旧作業の真っ只中だ。

「けど、ラウレル、こんなものどこから手に入れた?」
「・・・」
俺は、黙ったままもくもくと箸を進める。
なぁ、兄弟・・・世の中知らない方が良いこともあるさ・・・
心の中でそう呟きながら、何の肉かよくわからない肉を噛み締める。
なんだかわからない割にはうまい。
「一つ、聞いて良いか?ラウレル?」
「なんだ」
「その格好は、何の冗談だ?」
「ふむ・・・覚悟。かな?」
「食事する格好には見えないわけだが」
頭にあれ。風マフラに風シルク。靴にいたっては、ガラスの靴。そして、タラフロ盾。




…あれは今から30分前の出来事だ…
俺は姉貴の部屋に侵入し、昼間に全滅させられた俺のおやつのカタキを取ろうと
姉貴の冷蔵庫を物色していた。
あの、四次元胃袋め…あってはならん胃袋だというのに!
バケツプリン一ヶ月分の恨み、今回は晴らさせてもらう!
SG→JTが怖くて弟が務まるか!

ところが、だ。いざ冷蔵庫を開いてみれば、そこは空っぽだった。
いや、一つだけ・・・鍋が鎮座していた。
鍋物のくせに冷えてもぐつぐつと蠢く、見た目にも危険な一品だが、コレしかないからしょうがない。
姉貴の秘蔵の鍋だ。絶品に違いない!
俺は覚悟を決めて、鍋をもってカヴァクの部屋へと向かった。



さらに、30分前のこと・・・
「カトリーヌがVIT39、マーガレッタが41、あたしが・・・・27・・・・orz」
ぐつぐつぐつ・・・
「スレの常識ではっ!VITが上がればっ!私の…ゴニョゴニョ…だって、カトリ並みになるはず!」
ぐっとコブシを握り締めながら、セシルは鍋に具を投入し続ける。

「えーっと、止まらない心臓、イグドラシルの種、アンティペインメント」
ぐつぐつぐつ・・・

人魚の心臓、辛口ソースに返魂のお札、とても苦い草・・・それと〜〜〜」
ぐつぐつぐつ・・・

「ふふふふ、コレで私もぼいんぼいんに」
怖い笑顔でセシルは鍋を見つめ続ける・・・・

ぐつぐつぐつ・・・・ぐぅ〜・・・・・ぐつぐつぐつ・・・・・ぐぅ〜〜〜


「ん?ぐぅ?」
「おいしそう・・・それ・・・なに・・・?」
ぎょっとして振り返ると、目をキラキラさせる氷の魔女が肩口から熱い視線を送っている。
「カ…カトリーヌ?いったいいつから?? ってか、なんでもないっ!これは食べ物じゃないっ!」

カトリーヌがなにやらぶつぶつと呟くと、目の前に半透明のプレートが出現した。
鍋の材料と、そこから推測される料理名、調理法からおいしい頂き方までがずらずらと現れていく。

「世界六大珍味の一つ・・・不死のチゲ鍋・・・」
「なんなのよ?!それ?! モンスター情報なんてあんた取ってたわけ?ってか、なんか違うしッ?!」
「セシル・・・ おいしそう・・・ね・・・」
「あ、あげないわよ!コレだけは譲れないんだからっ!」
「………せし…る?……」

目がすわってる(汗 

周りの空気が次第に重くなる・・・(涙

って、なんかほんとに重いような、立ってるのも辛い!

メキメキと音を立てながら、調理台が、床が!!沈んでいく!
「・・・セシル・・・」
これって・・・プレッシャー・・・パラディンの立場がないよカトリ・・・イタイイタイ(;;

「は、はい・・・orz」
「不死のチゲ鍋は・・・火が通ったら・・・一度冷やして・・・寝かせてから食べるのが通・・・」
「はい?」
「私が・・・冷やしておいて・・・あげる・・・」
カトリは鍋を抱えて、うれしそうに自室の冷蔵庫に向かった。ふと、カトリーヌが立ち止まり。
「1時間後に、・・・私の部屋で・・・」
「あげないって、言ったよねー?(涙」
半壊した調理室にがっくりと膝をついて、セシルはうなだれる。
「どうすんのよ。この調理室・・・」
温められないじゃない!!!ってか、あとで怒られるのわたし?!
まぁ、早めにリムーバさんに修理お願いしちゃおう。
鍋をカトリから奪い返すのは、ほぼ不可能だし(カトリから食べ物をとるなんて_><;

うーん・・・ピコーン(/あはは)
あっ!材料大目に取ってきてた。流石だな私!!
もう一個作れば良いじゃ〜〜ん♪
ごそごそと、材料を漁りながら・・・アレと、コレと・・・あれ?


 ひ と つ た り な い


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ひとり黙々と鍋をつつく意味不明な相棒を見ているのも飽きた頃だ。
俺の部屋の扉を誰かがノックした。
こんこんこんっ

びくんっ!と大きくラウレルが反応する。オーバーアクションだろ?
「・・・カヴァク・・・ラウレル・・・きてない?」
扉の向こうから、小さな声がする。気の性か、足元が寒い。
空になった鍋に箸を置き、ギギギギギギギと人形のように首をこちらに向けながらラウレルは大きく腕を交差させる?
「ん?なんだ、相棒。いないって言えばいいのか?」
慌てて口元でひとさし指を立ててみせるラウレル。
「なんだ、何が言いたい。はっきり言ってくれ相棒」
よく聞こえないぜ、と言おうとした瞬間・・・
『・・・へぶんずどらいぶ・・・』
轟音と共に、ドアが吹っ飛ぶ。

氷の彫像のように、立っているのはハイウィザード カトリーヌ=ケイロン。
MVPタイムでもないのに、全開でオーラ吹いてます。
凍りつきそうな視線だけをこちらに向けて、カトリさんは俺に聞いた。
「・・・食べ・・・た・・・の・・・?」
ぶんぶんぶんっ! 首が飛んでもいい 全力で横に首を振るべきだと本能が告げている。

「た・・・食べて・・・ま・・・せ」
言い終わる前に、カトリさんは部屋の奥の弟に視線も向けずに言い放つ。

「・・・なんで・・・?」
「ぷ、ぷ、ぷりんの恨みはっ、わわわすれmせんy!お姉さま!」 

OK、相棒。理解した。その格好も、謎の鍋の出所も。
けど、膝が笑ってる上に、敬語じゃ格好つかないぞ。
しかも、言えてねーし。せりふ。

「ふはははは!今日こそ、恨みは晴らす!俺は姉貴を超える!!!」
・・・壊れたか・・・相棒・・・プリンごときで、命を投げ出すとは・・・
「この食い意地魔人めっ」

ラウレルよ。「つ やっぱり姉弟だなぁとしか思えない件 」
いつか食い物が原因で、この研究所は消し飛ぶだろうなぁと思いながら、慎重にカトリさんの背後に回り
ドアの残骸を越えて部屋を出る。

部屋の中の張り詰めた空気を無視するように、廊下には壁に背を預ける姉がいた。
「よかったねーカヴァク。無事に出られて。中にいたら死んじゃうかもよ」
笑顔でのほほんと姉のセシルは笑っている。
「姉さんは、ここで何してるのさ?」
「ん〜。戦闘終了待ちかなー?」
「止めてあげないの?」
「まぁ、カヴァクも悪いし。そもそも、私じゃむりだしね。ラウレル君倒れたら、元に戻るでしょう」

「倒れてくれないと、都合悪いし・・・」
姉さんはボソリと呟いたが、声が小さくてよく聞き取れなかった。

ピリピリした空気の中、先手を打ったのはラウレルだった。
「俺だって、いつまでも弱いままじゃない。見せてやる姉貴!俺の奥義!」
それを無視して、カトリーヌの杖にあわせて出現するストームガストの魔法陣。
あー、死んだな。相棒。 先ナムー(=人=)

「ランドプロテクター!!!」
おぉ、流石だな兄弟。奥義というだけのものを出してきたか!それで、アンフロじゃなくて対JT装備ね。
「ふははは!厄介なスキルだよSGは!しかし!当らなければどうということは無い!!!」
混ざってるぞ。

「喰らえよ!最終奥義!! ソウルバーン!!」


ス キ ル 使 用 失 敗


「・・・あれ?????」

「ラウレル・・・お仕置き・・・する・・ね」

「まだだ!ユピテルサンダーなどこの装備で・・・」


・・・マ ジ ッ ク ク ラ ッ シ ャ −・・・

「ちょwwwwwwwおまっwwwwwwア リ エ ナ スwwwwwwwwwぐはっ!」

お葬式のような表情で、空になったお鍋を胸に抱えて、無言で部屋を出て行くカトリーヌさんを見送って。
対象的に晴れやかな表情で部屋の中に、姉が入っていく。
「何?姉さん後片付け手伝ってくれるの?」
「そーよー?ありがたいでしょう?」
そういって、セシルはピクリとも動かないラウレルの横に座り込み。
にっこりと何かを拾い上げた。


 死  者  の  遺  品  一個取得


・・・続くもんかw




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一応、説明みたいなもの。
「不死のチゲ鍋」 効果:VIT+10
材料 
止まらない心臓20
死者の遺品10
イグドラシルの種1
アンティペインメント2
人魚の心臓10
辛口ソース2
返魂のお札10
とても苦い草2

初投稿なんで、読みづらかったらごめんなさいっ
面白くなくても、ごめんなさいっ
ゲーム中に料理作ってて、なんとなく受信した電波でした。









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