「風呂掃除?」
「そう、お風呂の掃除・・・一応当番で洗ってはいるけど、あの広さだからね」

突然、お風呂の大掃除をしよう、と言い出したのはアルマイアだった。

「隅っことかよく見ると、湯垢とか血のりとか、こびりついてる所があるんだもん・・・みんなも気になるでしょ?」

まあ、言われてみれば確かに・・・俺たちは日常的に、戦闘したり、頭から薬品かぶったりしてるからな・・・
風呂だって、そりゃあ汚れるってもんだよなぁ・・・

「それだけなら良かったんだけど、折角だから、景品つけてイベントにしちゃおうって、トリスが・・・」
赤面したセニアが、恥ずかしそうにちらちらと向こうを見ている・・・まあ気持ちはわかるけどよ。

何しろその視線の先には、似合いもしねぇかわいらしいフリルのエプロンを身につけた、アメプロマッチョなLK様が、
半裸で仁王立ちしていらっしゃるわけで。

「風呂掃除なら、俺の右に出る者はいない・・・この勝負貰った!!」
愛用の+10ソリッド・サイドライク・パーペェクト・デッキブラシ・オブバーサーカを構え、セイレンさんは既に気合十分だ。
・・・ってか、たかだかデッキブラシに、何てカードを刺していやがりますかこのLK様は!?

「あー・・・3Fにまで知らせるんじゃなかった・・・」
頭痛を堪えきれないという表情で、トリスが見ている先には・・・

「ふっ・・・優勝は拙者が頂くでござるwww」
当然のように、上半身裸で、ズボンを膝まで捲り上げたアサシンクロスが立っているわけだ。
腰に数種類の洗剤と、柄の短い二本のブラシをぶら下げたエレメスさんは、不適な笑みを浮かべている。
くっ・・・全て店売り未精錬品(アルマイア価格)って所が涙を誘うぜ・・・

・・・いや、よく考えたらこっちのが普通なんだけど、セイレンさんのデッキブラシを見た後だと、なんだかなぁ・・・

「僕も、お風呂場のちょっとした汚れは気になっていたんです・・・皆さん、がんばりましょうね」
妙に気合の入っているお二方とは対照的に、エベシは勝敗へのこだわりは無いようだ・・・まあ、こいつの場合はそうだよな。

「・・・で、言い出しっぺのアルマは出ないのに、俺は強制参加なわけですか?」

「だって、あんた今週の掃除当番でしょ?・・・お風呂掃除なんか、四人も居れば十分なんだしさ」
トリスが笑いながら、さも「当然」とでも言いた気な調子で答えた。

あー、へいへい・・・まったく、めんどくせぇったらありゃしねぇ・・・こういう事は、他の奴が当番の時にやれよな・・・

四人の参加者に、主宰であるアルマから、簡単なルール説明が行われた。

制限時間は、競技開始から、アルマイアが呼びに来るまでのおよそ1時間。
男湯と女湯をそれぞれ半分に区切り、時間内に、自分の持ち場をもっとも綺麗に掃除した者が優勝となる。

女湯の方が若干広く、装飾も多いとかで、こちらはセイレンさんとエレメスさんが担当する事になった。
自動的に、俺とエベシは男湯担当という事になる。

「順位に応じて、ちゃんと賞品も用意してあるから、がんばってね」
「へいへい・・・」

賞品ったって、アルマの言うこった・・・どうせ牛乳一本とか、そんなもんだろ?
しかも相手はあの二人・・・多少のハンデがあるとはいえ、俺に勝ち目などあるのだろうか、いや無い!!(反語&断言)

・・・掃除自体が目的になってる、綺麗好きのエベシならともかく・・・やる気の出しようがねえっての。

何が楽しいのか、にっこり笑って手を振るアルマ達に、ぞんざいに手を振り返して、俺達は「戦場」へと向かった。


あー、だりぃ・・・ま、どーせ負けは見えてんだし?適当にさくさく終わらせればいいか・・・


>>>


会場の一つである女湯・・・そこには、風呂掃除というのどかな行為にはおよそふさわしくない、緊迫した空気が流れていた。

「セイレン・・・お主は良き友、良き仲間ではござるが・・・今日の勝負、負けるわけには参らん!!」
「エレメス、お前、本気だな・・・いいだろう、俺も持てる技の全てを持って応えよう・・・」

男と男が、互いに不適な笑みを返す・・・二人の間に張り詰めた気合が、浴室の空気を、ぴりぴりと振るわせた。

「いざ!・・・」
「・・・尋常に!!」

「「勝負っっ!!!」」

吼えた二人は、全く同時に風呂場へと飛び出していく。

先手を取ったのは、やはりエレメスだった。

バックステップから、一気に体を入れ替え、浴室の隅へと飛ぶ。
「行くぞ!!・・・エンチャント・洗剤!!・・・ソニック・ブラシ!!!」

滅!!・・・命!炎!命!炎!命!炎!命!炎!!

両手に構えたブラシに、洗剤が塗布されたと見えた瞬間、湯垢のこびりついた蛇口の金属部品は、余す所無く磨き抜かれ、
新品同様の輝きで、エレメスの顔を映しだす。

だが、彼の動きはそこで終わりではない・・・決して途切れる事無く、流れるように滑らかに・・・抜く手も見せぬ八連撃が、
次々と金属製の蛇口に襲い掛かり、その恐るべき威力で、瞬時に湯垢やくすみを落としていく。

瞬く間に風呂中全ての蛇口を磨き終えたエレメスは、セイレンに向かってにやりと余裕の笑みを浮かべた。

・・・だが、この恐るべき技を目の当たりにしてもなお、セイレンの余裕は、いささかも揺らぐ事はなかった。

「やるなエレメス・・・だが、貴様は風呂掃除のなんたるかをわかってはいない・・・」

「何!?」

風呂の中央に踊り出たセイレンは、自分の周りに、ばらばらとたわしと洗剤をばら撒きはじめた。

「お主・・・一体何を!?」

「細かな部位を磨く事だけに拘っていては、風呂全体を綺麗にするという目的を見失ってしまう・・・」
たわしを撒き終えたセイレンは、デッキブラシを正眼に構えたまま、ぴたりと静止する。

「この構え・・・まさかっっ!!?」
「エレメス、お前に・・・真の風呂掃除という物を教えてやる・・・見るがいい!!」

セイレンが静かに息を吐く・・・ただそれだけで、ぎしり、と音を立てて、空間がゆがんだかのような錯覚。
目に見えない糸が、きりきりと引き絞られていくような・・・誰しもが一瞬「え、ここ風呂場だよね?」
・・・という、疑問を胸に抱いて当然の・・・途方も無い緊張感が、たった今、この場所に現出する。

最後のたわしが、ようやくその動きを止めた・・・その瞬間。

一閃!!・・・裂帛の気合と共に、風を撒いて、セイレンのデッキブラシが振り下ろされた。
互いにぶつかりあい、激しく泡立つたわしが、螺旋を描くように回転しながら四方八方へと滑り、広がっていく。

流星の如く、風呂場の床を縦横無尽に駆け巡る、無数のたわし・・・その一つ一つが、小型の竜巻のように激しくうねりながら、
浴室中のタイルを、完膚なきまでに磨き上げていく。

一撃・・・ただ、一撃であった。

恐るべきたわしの群れが通り過ぎた後には、文字通り磨きぬかれたタイルだけが存在し、もはや一片の汚れも残されてはいない。

「・・・なんという威力だ・・・セイレンめ・・・これほどまでとは・・・」
セイレンの恐るべき掃除能力を目の当たりにして、エレメスは思わず息を呑む。

「・・・これが、長年の研究の末たどり着いた究極の風呂掃除法・・・T・B・B(たわし・ボーリング・バッシュ)だ!!」

エプロン姿で威風堂々と浴室の中央に立つセイレン・・・その姿は正に、輝けるタイルの野に降り立った王者の風格であった。

「だが!!」

彼の、研ぎ澄まされた暗殺者としての本能は、その微かな弱点を、瞬時に、そして正確に見抜いていた。
エレメスは臆する事無く、手にした洗剤を次々と放り投げ、複雑な印を結ぶ。

「洗剤・ダスト!!!」

宙ではじけとんだ洗剤が、みるみるうちに浴室中を覆い尽くして行く。

「むぅ!?」
セイレンが、飛んできたしぶきを払い落としたわずかの間に、エレメスの姿が、立ち込める泡の中へと掻き消える・・・そして。

「グリム・・・ポリッシュ!!!」

泡の中から突き出した固いブラシが、タイルにこびりついたがんこなカビを、ぬめりを、黒ずみを・・・力強く落としていく。
細部に渡って染み渡る洗剤によって弱められ、浮き上がった汚れは、その威力に抵抗する事ができない。

「拙者の調合した洗剤は、どんなに頑固な汚れの中枢にも浸透し、やがては汚れも、カビそのものをも分解する・・・
 セイレン・・・お主の技は、細かな部位の汚れを処理するには雑すぎる・・・この勝負、拙者が貰ったぞ!!」

己の技の弱点を見抜かれたにもかかわらず、セイレンはまだ余裕の態度を崩さない。

「あの一瞬で、良くぞ見抜いた・・・おもしろい・・・おもしろいぞエレメス!!・・・こんなに楽しい風呂掃除は初めてだ!!
 ・・・デッキブラシ・ブゥゥゥーメラァァァンッッ!!」

洗剤の塗布された床を、手の届かない天井を・・・セイレンのデッキブラシが駆けぬける!

「まだまだぁッッ!!洗剤・スプラッシャーッッ!!」
「負けるかっ!!デッキブラシ・クイッケン!!」

うなるデッキブラシ、舞い踊る風呂用洗剤・・・次第に輝きを増していく風呂場の中で、二人のプロフェッショナルの戦いは、
いつ果てるとも無く続いた・・・


>>>


「・・・なんだか、あっちはずいぶんにぎやかだね」
「ま、最初から俺らが勝てるわけねーんだし、こっちはこっちでまったりやろうぜ」

白熱する女湯の様相とは対照的に、男湯の二人は、早々に試合を放棄していた。
監視の目が無いのを良い事に、勝敗は最初から捨て、協力してさっさと掃除を終わらせようという魂胆だ。

「あはは、そうですね」
屈託無く笑いながら、さっそく、ブラシでタイルをこすろうとするエベシを、ラウレルが止めた。

「んな事、いちいちやんなくていいって・・・洗面器とか椅子とかシャンプーとか、小物なんかだけ避けてくれや」
言うなりラウレルは、壁といわず天井といわず、風呂中のいたる所に水をぶちまけ始める。
エベシは、首をかしげながらも、指示に従って、風呂場に置いてある小物類を集めに走った。

「これで全部集めたけど・・・いくらお風呂とはいえ、こんなに水浸しにしちゃってどうするの?」

「まあ見てろ・・・」

ラウレルが、愛用の杖で軽く床を叩くと、ほんの一瞬、同心円状に広がる詠唱陣が浮かびあがる。
実体の無い影が次々と沸きあがり、思考の速さで空を裂いて乱れ飛ぶ。

エベシにも見慣れた魔法・・・ラウレルは、浴室の隅から隅までを、丹念にソウルストライクで打ち抜いているのだ。

「うわ!?ラウレル、何をっ!!?」
驚いたエベシが止めようとすると、ラウレルはめんどくさそうに、ソウルストライクで打ち抜いた場所を指差した。

「大丈夫だから、見てみろって・・・」

目を向けてみれば、太古の霊が通り過ぎた場所は、水気もからりと取れて、磨いたようにぴかぴかと輝きを放っている。

「な、なんでこんなに綺麗に?」
エベシが思わず目を丸くする。

「風呂場は背景とアイテム扱いで無属性。ぶちまけた水は当然ながら水属性・・・つまり、SSは壁やタイルは傷つけないで、
 高威力で水だけをぶっ飛ばすだろ?・・・そん時の衝撃で、汚れやら、ついでにカビなんかも吹き飛んでるってわけよ」

「こんな方法があったなんて・・・」
聖水と古くなった牛乳で、地道に隅々まで磨くつもりだったエベシは、あまりの出来事にカルチャーショックを受けていた。

「高圧念属性洗浄ってやつだ・・・たまにテレビ通販とかであんだろ?普段はナパームビートで適当にやってんだけど、
 今日は「大掃除」らしいからな・・・ま、こんくらいやっときゃいいだろ・・・どっか汚れの気になるとこあるか?」

風呂中のセルを全て打ち抜き終わったラウレルは、エベシに確認を求めた。

「うーん、特に無いかな?・・・いつもと比べて、すごく綺麗になってると思う・・・魔法使いってすごいなぁ・・・」
素直に感心するエベシに、ラウレルは肩をすくめて見せた。

「とことん綺麗にしたい時や、小物なんかが相手だと、聖水の方が格段に上だけどな・・・ま、元手も手間もかからねぇし、
 便利っちゃ便利か?・・・おし、エベシに気になる所が無いなら、あとは浮いた汚れを水で流して、終〜了〜っと・・・」

ぐっと体を伸ばしたラウレルは、早々に帰り支度をはじめる。

競技開始から、わずか5分の早業であった。

「それじゃ、後は僕がやっておくから、ラウレルはお茶でも飲んでおいでよ・・・僕ほとんど何もやってないし」
「そうか?んじゃ任せた・・・お前の分も用意しとくから、さっさと終わらせてこいよ」
「うん、これならすぐ終わるよ・・・それじゃまた後でね」
「おう」

その10分後には、エベシも食堂に移動し、制限時間いっぱいまで、二人でお茶を飲みながら、活発な議論
(主に、家事の話題と、日常的に己の身に降りかかる、苦難やらあれこれについて)に花を咲かせていたという・・・


>>>


競技の優勝者は、夕食の後で発表される事になった・・・俺とエベシには関係のない話だから、正直どうでも良いけどな。

そんなわけで、久しぶりに、2F、3Fのメンツが揃った食事会になったわけだが・・・セニアとトリスの様子を見てると、
掃除はおまけで、メインの目的はこっちだったんじゃないかって気がしてくる・・・おーおー、「お兄ちゃん」の隣に座って、
ご満悦ですねおまいら・・・まったく、このブラコン娘どもときたら・・・。

俺たちにだけ働かせておいて、お前らはそれですか?・・・手抜きしたとは言え、なんとなくむかっ腹がたってきたので、
その苛立ちを不参加だったカヴァクにぶつける事にする・・・これは八つ当たりではない!我々の正当な権利なのである!!

「おいカヴァク、お前なんで参加しなかったんだよ?」

俺の隣に座るカヴァクは、いつものポーカーフェイスで、軽く肩をすくめて見せた。
「仕方ないだろう、「景品」は競技に参加不可と言われたんでな」

けっ・・・事も無げに言ったもんだぜ・・・


ん?・・・・・・景、品・・・ですと?


「おい、それってどういう・・・」
気になる単語について、意味を聞き返そうとした時、アルマがタイミングよく立ち上がった。

「それではいよいよ、結果発表です!・・・優勝は・・・ラウレル=ヴィンダー!!」

読み上げられた名前に、皆から惜しみない拍手が贈られる。

あー、ほら、やっぱりな・・・まあ俺には関係な・・・・・・・・・・って・・・俺かよ!?・・・マジで?


「優勝賞品として、一週間の間、一番風呂を独り占めできる権利と、風呂上りに牛乳飲み放題サービス!!
 並びに、お好みの2Fの女性に背中を流して貰える権利が与えられます!!・・・おめでとう、ラウレル♪」

「・・・・・・は?」
思いもよらない賞品に、おれの顎がかくんと落ちた。

今何か、アルマが笑顔で、とんでもない事をのたまってたような気がするんすけど・・・
・・・ってか、何もかも聞いてないんですけどッッ!!?


「うはwwwうらやましいでござるwwwできる事なら代わって欲しいでござるwww」
「くっ・・・セニアとのうれしはずかしお風呂タイムの夢がッッ!!!」
がっくりと泣き崩れる生体最強の男二人・・・お願いですから、もう少し威厳を持って下さい、ほんの少しだけでいいんで・・・

「兄上・・・」
「ったく、恥ずかしいなぁ、もう・・・」
セニアとトリスが、大掃除開始前と同じ表情で、それぞれの兄を見つめている。

競技開始前の、こいつらのあの眼差し・・・そして、セイレンさんとエレメスさんの、不自然なまでの気合の入り方・・・
なるほどな、そういう事だったのかッッ!?・・・今ようやく納得がいったぜ!!?

「おめでとうラウレル!!・・・いやー、景品が『別の物』だったら、俺も参加していたんだが・・・」
「ちょwwwなぜそこで拙者を見るでござるか!?www」
「・・・女性は参加不可だなんて、ずるいと思わない?」
「マーガレッタ、あんたは自重した方がいいと思うわ・・・」
「・・・すけべ」

何気に姉ちゃんが酷ぇ!?・・・俺は無実だ!!冤罪だッッ!!
ってか、聞いてなかったのは、俺とエベシだけかよコラァァッッ!!?

おのれアルマ!!謀った喃!!謀ってくれた喃!!?

アルマイアの方を軽く睨むと、奴はやけにいい笑顔で、俺に向かって親指をつきあげて見せた・・・OKアルマ!グッジョブ!!
・・・じゃねぇだろコラ!?・・・せめて前もって知らせとけやっっ!!


はっ!?・・・待てよ・・・良く考えたら、この裁定・・・おかしな点があるぞ!?

「ま、待ってくれ、この結果にはどうしても納得がいかない点がある!!・・・相手はセイレンさんとエレメスさん・・・
 俺が優勝できたとは、どうしても思えない!!・・・裁定の基準と、判定理由を教えてくれ!!」

あれほどまでに気合の入っていた、セイレンさんとエレメスさんが、そう簡単に負けるとは思えない・・・
景品があれだとすれば尚の事だ・・・これには何か・・・俺の知らない裏が隠されているに違いない!!

すると、トリスがあっさりと俺の疑問を解消してくれた。

「兄貴は、桶3個とシャワーのノズル2本。後は置いてあったシャンプー、リンス、コンディショナーをスプラッシャーして全部。
 セイレンさんはデッキブラシを湯船に突きこんで壊しちゃったんで、判定で二人とも失格になったのよ」


・・・そんな、説得力のありすぎる理由がッッ!!?


「拙者とした事が・・・ついつい気合が入りすぎてしまったようでござるwww」
「ふっ・・・俺も、まだまだ修行が足りないな・・・風呂掃除とは、中々に奥深い物だ・・・」

いや、たかが風呂掃除の感想を、そんな「やるな」「おまえもな」みたいな、いい笑顔で言われても・・・

「兄上ったら・・・まったくもう・・・」
こいつ・・・絶対「やんちゃなお兄様もステキ!」みたいな事を考えてやがるな・・・
はいはい、セニアはいつも幸せそうでいいですね・・・あーまったくもう!!


「あとは・・・ん〜・・・そうだ!!少なくとも、俺とエベシは同点のはずだろ!?」
そうだよ、共同作業だったんだし、仕上がりは同じはず・・・こうなれば、死なば諸共よ・・・うらむなよエベシ!!

「あ、それは・・・僕が事情を話して、辞退させてもらったんです・・・実際、掃除をしたのは、ほとんどラウレルだったし。
 ・・・まさか、景品がこんな物だとは思っても見ませんでしたけど・・・」

なんていい奴なんだエベシ!!このやろう!!その穢れの無い善意が憎い!!憎すぎる!!

・・・だが逃がさん!!お前も蝋人形にしてくれるわッッッ!!!

「エベシも一緒にがんばったんだ、これは俺たち二人で勝ち取った優勝だろ・・・一緒に分かち合おうぜ!!」
そうだろエベシ!?俺たちは友達じゃないかッッ!!分かち合おうぜ!!・・・主に苦労の部分を!!

「ラウレル・・・」
俺の発した熱い言葉に、エベシは素直に感動している・・・

おお、なんという罪悪感・・・この胸の痛みは、間違いなく俺の良心。

・・・すまん!!許してくれエベシ・・・見るな!!そんな純粋な目で、穢れた俺を見ないでくれッッ!?

良心の呵責に苦しみ、次の一歩を踏み出せないでいた俺に、セシルさんが助け舟を出してくれた。

「それなら・・・二人仲良く、景品半分こって事で良いんじゃない?」
よし、流石はセシルさんだ!!良い事言うぜ!!

「そう言う事なら、俺は・・・」
そう・・・それなら、俺が一番風呂の権利を貰えば万事解決だ・・・後の権利は、エベシなら絵面的にも問題ない!!
・・・それに、どうせマガレさんが乱入するだろうから、なんだかんだでうやむやにできるはず!!完璧だ!!

さっき痛んだ良心は、心の棚の一番高い場所まで蹴り上げて、俺は限りなくクールな結論を導き出す。

ごめんよエベシ・・・でも、お前なら普段から慣れてるだろうし、きっとわかってくれるよな・・・
健全な青少年である俺には、その景品は、ちょっとばかり刺激が強すぎるんだ・・・

・・・だがその時、思わぬ伏兵が、俺に止めの一撃を叩き込んでいった。

「では、僕は一番風呂の権利をいただきますね。ラウレルはいつもお風呂遅いですし」

え・・・?エベシさんッッ!?・・・貴方、そんな人畜無害そうな笑顔で・・・いったい何をおっしゃっているのッッ!!?

「牛乳はもともと飲み放題ってことで問題なしね!・・・はい、それじゃあ決まり決まり〜」
せ、セシルさん!?あんたって人は!!そんなサクサクと!?

ちょ、チョトマテクダサーイ!!・・・ちがうでしょぉぉぉ〜?ナニモちがうでしょォォゥゥッッ!!?
NO!!解散NO!!・・・ストォ〜ップ!!皆さん解散STOP!!・・・俺の話を・・・AAAAGGGHHHHH!!!!?


「・・・いやー、それにしても、景品が『別の物』だったらなぁ・・・本当に惜しい(じゅるり)」
「ちょwwwだから、なんでそこで拙者を見るでござるか!?www」
「次回は、女性も参加可能にして、景品は2F3Fの全女性の中から選べるようにすべきだと思うわ!」
「マーガレッタ、あんた少しは自重しなさいよ・・・あと、あたしはそんな景品役、絶対にやらないからね!?」
「・・・変態」

げぇっっ!?姉ちゃんの視線が、ブラックスワンLVから、一気に水瓶座の黄金聖闘士の凍気にまで急転直下っっ!!?
・・・だから姉ちゃん!!冤罪だってばッッ!!?

「・・・そんなえっちな子は、私の弟じゃありませんのだ・・・つーん」
な、なんじゃそら〜〜〜〜ッッ!?

問答無用ってわけか・・・へへっ・・・こいつはまいったな・・・ははは・・・硬派で鳴らしてきたはずの俺が、
気がつけばいつの間にか、「すけべで変態でえっちな奴」にされちまったよ・・・はは・・・HAHAHAHAHAHA・・・

談笑しながら、ぞろぞろと引き上げていく3Fの人々・・・激しく打ちひしがれる俺の肩を、大きく力強い手が優しく叩いた。

「ラウレル、改めて、優勝おめでとう・・・」
「セイレンさん・・・」
セイレンさんは、俺の肩に手を置いたまま、にこやかな笑みを浮かべた。

「いい試合だった、完敗だよ・・・」
「いえ、まぐれっすよ・・・」
むしろ、セイレンさんたちが自滅してくれたおかげで、こっちはいい迷惑って言いますか・・・

「謙遜する事は無いさ・・・俺もエレメスも、全力を持って戦ったんだ・・・そして、君はそれを打ち破った・・・
 そうそう誰にでもできる事じゃないぞ?」
なんてさわやかに笑う人なんだろう・・・流石は騎士の鑑。
この、試合の結果に遺恨を残さない潔い姿には、素直に尊敬の念を覚える。

「まあ、勝ったって言っても・・・風呂掃除じゃ、自慢にはならないっすけどね」
思わず、照れ笑いが浮かぶ・・・なんか、こういう爽やかなのって、俺のがらじゃねぇっていうかさ・・・

でも、なんだか誇らしい気分なのは確かだ・・・そう、俺達・・・まぐれとは言えこの人に、こんなすげぇ人に、
勝ったんだもんな・・・うわ、なんか、今になって初めて、ちょっとだけ嬉しくなってきたぜ・・・ちょっとだけ、な。

「勝負は勝負、誰に恥じる事も無い・・・それでだ、君が得た『景品』について、一言だけ忠告をしておきたいんだが・・・」
俺が、なんだかスポーツマンっぽい、爽やかな充足感を感じていると・・・急に、置かれたままだったセイレンさんの手が、
みしみしと音を立てて、俺の肩に食い込んできた。

「せ、セイレンさ・・・」

か、顔は笑顔なのに、目だけ笑ってねぇーーーッッ!!!?Σ((((((゚Д゚;))))))ガクガクブルブル・・・

「もし君が・・・そんな事は無いと信じてはいるが、それでも万が一、魔が差して・・・セニアを指名する・・・
 なんて事があれば・・・俺は、君に一体何をするか・・・いや、脅しているわけじゃあない、決して脅しではないんだ・・・
 君は精一杯戦った・・・その権利は正当な物で、行使したいと思うのは、もちろん当然の事だ・・・だが、それでも、一応な?
 ・・・君ならきっと、こんな事は、わざわざ言わなくても、わかってくれているとは思うんだが・・・」

痛い・・・痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!?

「もっ!!もちろん心得ているであります!!サーッッ!!!」
なんて威圧感だ・・・前言撤回ッッ!!「騎士の鑑」改め、さすがは「シスコンの鑑」ッッ!?

「・・・その言葉に、偽りは無いな?」
なんつう握力ッッ!!!・・・まるで万力で絞られてでもいるようだッッ!!?
・・・ってか、折れるッッ!?・・・いくら俺が念属性でも、そいつは折れる!!!折れるってばッッ!!!!!??

「か、神と姉貴とDMC様に誓って!!俺はセニアに背中を流してもらうなんて事はしませんッッ!!
 ・・・マジですって!!!?信じてくださいよッッ!!!!!」
急激に、手の力が弱まった・・・俺の言う事に嘘は無いと、ようやくわかってもらえたらしい。

あ、危ねぇ・・・危な過ぎるぜ・・・なんて凄みだ・・・怖すぎる・・・

「そうか・・・はっはっはっ!・・・すまない、一応確認だけはしておいた方がいいと思ってな・・・お互いの為にも」
「ハハハハ・・・そ、そうっすね、疑いが晴れたなら、俺も・・・マジで、助かります・・・ハイ・・・」

これは、俺にとっても掛け値なしの本音だ・・・何しろ、さっきまで掴まれていた肩が、今もぜんぜん上げられない・・・
もし、あとほんの少しでも力が加えられていたらと思うと、正直「ぞっとする」なんて生易しいもんじゃない、
もっと恐ろしい、絶望的な気分になるぜ・・・

「いやいや、今日は本当に良い試合だった・・・それでは、またな」
ようやく疑念が晴れたらしく、セイレンさんは、爽やかな笑みを残して、颯爽と3Fに去っていった。

この人は・・・この人だけは、絶対に敵には回したくない・・・誤解が解けたのは、本当に何よりだ・・・


その後姿を見送るセニアが、寂し気にぽつりとつぶやいた。

「兄上とあんなに楽しげに・・・いいなぁラウレル・・・」

・・・じゃあ代わってくれよこのブラコン娘がッッ!!?・・・と、こいつの耳元で叫びたーい!!声を限りに叫びたーい!!

そんな気持ちを、ぐっとこらえて・・・ぶっちゃけ、まだセイレンさんが近くにいそうなので、なんとか自重したって感じ?
えらいぞ俺、ナイス自制心・・・さっきの今では、流石にちょいと怖すぎる・・・

いや、あせった・・・マジでちびるかと思ったぜ・・・だが、危機は回避した・・・

安心したと思ったら、急に大自然が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
・・・今のうちにトイレでも行ってくるとするか。

ああ、疲れた・・・


>>>


俺がそそくさと用をすませて手を洗っていると、ふと鏡の中に人影が入り込んできた。
いつの間にか背後にエレメスさんが立っている。

「やあラウレル君www奇遇でござるなwww」
やばい!!・・・口調はいつものエレメスさんだが、さっきのセイレンさん同様、明らかに目が笑っていないッッ!?

まずいって・・・このパターンは・・・たぶん恐ろしくまずい!?

「ち、ちわっすエレメスさん!!今日はお疲れ様でした!!じゃ、俺はこれで!!」
挨拶だけして、さっさと逃げようとしたその時。

何か冷たい物が、俺の首筋をふわりと撫でていった。

思わず固まってしまった俺の背後から、固く、鋭く・・・何よりも冷たい声が、どこまでも無機質に響いてくる。

「急いでいるようなので手短に言おう・・・お前がもし、ヒュッケバイン=トリスを景品として指名するのであれば・・・」

こつ、こつ、こつ・・・と、音を立て、それは少しずつ近づいてくる。

「その瞬間から・・・お前が口にする物の全て、歩きなれた通路、全ての影、全ての闇、光の中、昼と夜、
 起きる時、眠る時、夢の中、そして、愛する者の腕の中にさえ・・・未来永劫、お前の心の安らぎは、
 唯の一つとして、この世には存在しなくなる・・・」

人の形をした死の影が・・・その淡々とした静かな声が・・・やけにゆっくりと俺に迫ってくる。

「・・・少なくとも、俺か、お前のどちらかが、息をしている間には、な・・・心しておけ、ラウレル=ヴィンダー・・・」

ささやくような微かな声なのに、一言一言が、これ以上ないくらいはっきりと耳に響いてくる。
それだけでも十分に恐ろしいというのに、その事よりも何よりも・・・

ご・・・「ござる」が一つもついてねぇッッ!!!?? Σ((((TДT;))))コワイヨー・・・

足音は、俺の真後ろまできて、ぴたりと止まった。

やべぇ!!怖すぎて足が動かねぇ!?・・・逃げなきゃ危ない、玄人好みの扱い難すぎる状況だってのに、なんだって俺は!?

「・・・今日は良い試合でござったなラウレル君wwwそれでは拙者はこれで失礼するでござるよwww」
最後に、いつものような、いかにもエレメスさんらしい軽い声が聞こえて・・・軽く、優しく、肩を叩かれた。

そして・・・それきり、何も聞こえなくなった。

恐る恐る振り向いてみても、そこには既に、エレメスさんの姿どころか、人が居た、という気配すらも無い。

鏡を見ながら、冷たい何かが通り過ぎていった場所・・・首の周りに手をやって確認する
怪我はしてないが、コートと、首まであるアンダーウェアの襟の後ろが、ぱっくりと、大きく真横に裂けていた。
細い切り口がわずかにずれて、そこから地肌が露出しているのが見えた。

切り口越しに触れた指が、かたかたと細かく震えている。
鏡の中の自分は、酷く青白い顔をしているように見えた。

「生きている」と、実感したとたん。全身が激しく震え、冷たい汗が滝のように噴出してきた。

・・・いかん!!あの人たち、いくらなんでも怖すぎだろ!?
この分じゃ、アルマを選んでも、絶対に何か一悶着あるに決まってるぜ・・・!?

ど、どうしたら・・・俺はどうしたら生き残れるんだ・・・風呂掃除したから死ぬなんて・・・いくらなんでも理不尽な・・・

嫌な汗が、後から後から背筋を滑り落ちていき、全身の震えは、激しさを増していくばかりだった。


>>>


叩きつけるようにして、何度も何度も顔を洗ってはみたものの・・・染み付いた恐怖は中々消え去ってはくれなかった。

トイレから帰ってきた俺の挙動不審な有様を見て、エベシが心配そうな顔で声をかけてくれた。
まあ、こいつは、先程俺の身に降りかかった生命の危機なんか、これっぽっちも感づいてないんだろうが・・・

「・・・ラウレル、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ・・・景品は『権利』なんですから」

福音は授けられた。
・・・・・・おお・・・神よ!!・・・偉大なる神よッッ!!
目からうろこがぼろぼろ落ちた。

「・・・そうだ、権利、権利だもんな!!義務じゃないんだ・・・無理に行使しなくてもいいんだ!!」
救いはあった!!・・・いや、最初から用意されていたのだ!!もはや、恐れる事は何も無い!!

「ありがとうエベシ・・・お前が友達で良かった・・・本当に良かった・・・ああ!!生きてるってすばらしい!!!」

俺が全身で生の喜びを実感しているのを見て、エベシも一緒に喜んでくれた。
「女の子と一緒にお風呂に入るなんて、やっぱりちょっと緊張しますからね・・・」

と、エベシが苦笑する・・・勘違いも甚だしいが、わざわざ訂正して、この喜びに水を差す事もあるまい・・・
ああ、友情って素晴らしい!!生きてるってすばらしい!!たった今、心の底から実感したぜ!!

「これで、心置きなく、安心して風呂に入れる・・・んじゃ早速、ひとっ風呂浴びてくるとするかな!」
さっきから嫌な汗をリットル単位でかきっぱなしだ・・・いいかげんさっぱりしておきたい・・・

「あはは、良かった・・・うん、それじゃ行ってらっしゃい」
「おう!!」

命の心配が無いとなれば、洗い立ての風呂に一番乗りだ、気分も多少は浮き立ってくるってもんよ!!
俺は、鼻歌なんかを口ずさみながら、意気揚揚と、風呂場に向かった。

・・・ほんと、生きてるってスバラシイッッ!!最高にハイってやつだァァァァッッ!!!!


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「やあ・・・ようこそ生体研究所クアハウス(男湯)へ

 このブラジル水着はサービスだから、まずはじっくり眺めて堪能してほしい。
 ・・・うん、「私が一番風呂」だったんだ。すまない。
 仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

 でも、風呂場で「ウェールカーム!!」している私を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
 「お約束」みたいなものを感じてくれたと思う。
 殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思ってここで待ち伏せしてたんだ。

 ・・・じゃあ、注文を聞こうか。」

こんな状況で、俺が言うべき言葉は一つしかない・・・だって、他になんと言えばいい?

「帰れ」

だが、やはりというか・・・予想はできていたとはいえ、奴は俺の言う事なんざ、はなから聞いちゃいなかった・・・

「ほう・・・ブラジル水着よりもスク水の方が256倍(当社比)は萌えるとは・・・流石だなラウレル」
「一言も言ってねぇ!?・・・つーか、カヴァク!!男湯で何やってんだお前ッッ!?」

・・・そうだった、立て続けに襲ってきたマキシマムな恐怖に、こいつの存在をすっかり忘れていた・・・

「女湯の湯船は、セイレンさんが壊してしまったのでな」
本当にもうあのLK様ときたらっ!!イラン事ばっかりしくさりやがって下さってッッ!!?

「それに、景品の身としては、心身ともに疲れているラウレルを、からかって遊・・・いや、慰労してやるべきだろうと・・・」

・・・神は死んだ!!・・・ってか、いま明らかに「からかって遊ぶ」、とか言いかけただろうが!?

と、一発怒鳴りつけてやろうと思った・・・思ったのだが・・・
カヴァクの「水着姿」を、もろに見てしまいそうになって、思わず視線を逸らす。

「で・・・その・・・なんて言うか・・・紐?みたいな物は、一体何のつもりだ・・・」
・・・それは、水着と呼ぶには、余りにも布地が少なすぎた・・・むしろ、ハンドタオルの方がましってくらいに・・・

「よく見ろラウレル、こいつはれっきとした水着で・・・」
「嘘をつけっ!!そんな紐状の物体は、断固として水着とは認めないッッ!!」

いかん!?・・・これまで緊張の連続だったせいか、いつになく簡単に、俺のタオルでインディアンがティピー生活を
始めてしまいそうだ!?・・・NO!?お祭りNO!!・・・酋長sit!!sit down please!!!?

「大丈夫だ、こう見えて、要所要所はきちんと隠れている・・・・・・(ぼそっと)たぶん」
「たぶんってなんだこらァァッッ!?」
「いや、面白そうだったので、だいぶ前に通販で買ってはみたんだが・・・このデザインだ、流石に着る機会が無くてな・・・
 正直、自分でもどうなってるのかわからん」
カヴァクが、自分の体をあちこち確認するように、身をよじりながら苦笑する。

ちょwwwおまwwwその動きはやばwwww・・・はっ!?見てはいかん!!・・・耐えろ俺!!?がんばれ理性ッッ!!!

「そんな、着てる本人にもわからないような代物は捨ててしまえ!!むしろ、燃やしつくすくらいの勢いでっっ!!」
それか、押入れの奥にでも、一生しまいこんでおいてくれ・・・俺の心の平穏の為にもなッッ!!

「ふむ、今日は景品という事で、丁度いいかと思ったんだが・・・なんだ、本当にスク水の方が良かったか?」
なんなら着替えてこようか?・・・とでも言いた気に、にやり、にやり、と、カヴァクが笑う。

「な・・・何だってェェェッッ!!?」

確かに、布地の量としてはスク水の方が圧倒的に上・・・だが、ここで「せっかくだから、俺はこのスク水の方を選ぶぜ!!」
等と答えようものなら・・・俺が今まで大切にしてきた何かが、音を立てて崩れ落ちてしまうような気がするッッ!!?
・・・ああ、せめて普通の水着であったなら!!これほどに躊躇する事は無かったというのにッッ!!!

あらぬ方向に視線をそらしながら、腰の引けた内股で真剣に悩む俺を、カヴァクは実に楽しそうに眺めている。

おのれカヴァクッッ!!・・・貴様、なぜ笑っているっっ!?・・・何が楽しい!!・・・何が楽しいッッッ!!!!?

たっぷりと時間を置いてから、カヴァクが、またしてもにやりと笑った。

「ふむ・・・ブラジル水着もスク水も・・・どちらも嫌なら仕方ない・・・」

そして、色々といっぱいいっぱいになっている俺をあざ笑うかのように・・・いや、実際笑ってるんだけどな・・・
かろうじて体を覆っている「紐状の物体」に、ゆっくりと手をかけた。

「ま・・・待て!!早まるなッッ!!?」

「やはり、風呂場で水着というのは、風情が無いしな・・・」

にやり、にやり。

「それなら脱衣所に行くか、せめてタオルで隠し・・・」


また・・・このパターンかよぉぉぉぉぉッッッ!!!!!?


「キャスト・オフ!!!」


き゚あ゚〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!??

き゚あ゚〜〜〜〜〜〜〜!!!!!?

き゚あ゚〜〜〜〜!!?

き゚あ゚〜・・・

あ゚〜・・・

〜・・・

・・・

※ここから先のお話は、登場人物のプライバシーを著しく損なう恐れがございますので、放映する事ができません。
 続きをご希望の方は、引き続き、脳内放送でお楽しみください・・・お察しくださいっ!!ごめんなさいっ!!


ぴかぴかに磨かれた浴室のタイルと、たちこめる乳白色の霧の中。
ラウレルの悲鳴は、いつまでもいつまでも、反響し続けましたとさ・・・


>>おまけ。翌日、リムーバーさん控え室にて・・・

ざわざわざわざわ・・・

「・・・まさか『エスエスヘタレ』がくるとはなぁ・・・」
「本命の『シスコンホマレ』と、対抗の『ゴザル・デ・ゴザル』が共倒れだしな・・・昨日は波乱の展開だったぜ」
「俺が賭けてた『モエールアコキュン』なんか、出走拒否だぜ?・・・八百長じゃねーの?」
「単勝で過去最高の配当が出たらしいけど、誰か買ってたやつ居るのかよ?」
「儲けたのは胴元だけって感じだなぁ・・・あ〜あ、次のレースが待ち遠しいぜ・・・」

ざわざわざわざわ・・・


アルマイア「さ〜て、思いのほか多額の臨時収入もあった事だし・・・みんな、今日はごちそうだよ〜♪」

カトリ「・・・万馬券・・・ぶいv」


生体研究所は、やっぱり今日も、なんだかんだで平和です。・・・おしまい。
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