「はい、これが今回の分です、ありがとうございました!またお越しくださいませ〜」

生体研究所のとある一角。アルマイアは地道に闇商売でお小遣いを稼いでいた。
勿論、メマー代はここから出ている。
また来るよ、と満面の笑顔で帰って行く冒険者。彼らは普段なら侵入者として敵対するべき
者達である。
敵同士が取引を、とその場で不意うちする冒険者も最初のころはいたものの、最近では
冒険者側が取引氾濫分子を始末してしまうので、めっきり減っていた。
アルマイアを倒せば全部手に入るのではないか、との問いを投げかけるものもあったが、
それは彼らの「萌え道」に反するらしく、あっさりと口を塞がれてしまった。

「ふっふっふ、今日のは凄いですよ、お客さん。なんと取れたてイレンドのこすぷれせっと!」
うおおおおおおおおお!
行列をつくる冒険者たちの歓声が沸き起こる。
うんうん、と満足げな笑みを浮かべてアルマイアは取引を始める。
ちなみに「こすぷれせっと」の内訳は、写真とその衣装である。当然数に限りがございます、
とのことである。

「物好きもいるものねぇ・・・・・・いや私もかなり興奮しちゃったけど」
取引の帰り道、イレンドのいろいろな衣装姿を思い出し、思わず身体の芯から熱くなるので
ある。
今回のイレンド関連商品は特別商品というもので、優待客限定の品である。通常はセニアの
パジャマピンナップなどささやかな物だ。
しかし彼女自身やトリスのヌードは、当然ながら商品化しない。
仲間が持つアイテムも売らずに利益を上げるのに、毎日工夫しているのだった。

「待って下さい!アルマイアさん!」
「あら・・・・・・あなたは・・・・・・」
優待客の一人である。名前は知らないが、毎週来て何かしら買って行くのだが、今日は珍しく
並んでいるだけで、商品には興味が無かったようだった。
「今日の商品に何かご不満でもございましたか?」
「いえ・・・・・・そうではないのですが・・・・・・」
クレームではなさそうなのだが、いいづらそうにしている。

「ええと、何でしょう?」
見当が付かないので、とりあえず聞いてみる。
「アルマイアさんは、普段からそんな話し方なのですか?」
「いえ、勿論これはお客様への礼ですが・・・・・・」
当たり前のことを聞いてくるので、つい答えてしまう。ハワードならうまく答えただろうに。
「アルマイアさんは、きっと普段どおりの話し方のほうがファンが多くなると思うのですが」
「え・・・・・・?」
意外に思った。自分では・・・・・・決して魅力が無いとは思わないが、自分目当てにいる客がいるとは
想像していなかったからだ。

アルマイア自身の写真を並べていれば、理解していたかもしれないが、今日のイレンドセットを
除けば、セニアが一番人気だと思っていたのだ。
3階女性陣の写真も用意しているのだが、セニアのパジャマ姿は圧倒的な人気を誇っていたのだから。
ちなみに人気順は、セニア、セシル、カトリーヌ、ハワード、イレンド、トリス、マーガレッタ、
エレメス、セイレン、ラウレル、カヴァクである。
勿論トリスの写真は普段着である。
この売れ行きをマーガレッタが知ったら、ひたすら落ち込むに違いないとはアルマイアの笑いの
種である。

「急に話し方かえるのは・・・・・・恥ずかしい・・・・・・かな?」
普段どおりの話し方をしただけで、どうしてこれほど赤面するんだろうというくらい、羞恥心を
感じてしまう。
「ぐぅぅぅぅれぃと!」
のた打ち回って叫ぶ冒険者。彼はこういう人だったのかと思わず引いてしまう。
しかしアルマイアとて百戦錬磨の商人である。この程度の反応ならばイレンドファッションショーで
男性陣の反応を見て免疫ができている。

「いや・・・・・・まあ、そんなに感激するほどのことでも無いと思うわ」
冷静な突っ込みに、再び冒険者はのた打ち回って鼻血を出し、吐血しながらサムズアップしてくる。
どう対応をしたらいいかしばし迷っていると、急に冒険者は毅然とした態度になり、
「アルマイアさん、好きな男性はいらっしゃいますか?」
「・・・・・・え?」
この人は何を言っているんだろう。そんな感想を持つのは当然である。2人きりでこういうことを
聞いてくる意味は、アルマイアだって知っている。
「えと・・・・・・一応・・・・・・いますけど」
「付き合ってるんですか?」
「い、いえ・・・・・・まだ付き合ってませんが」
気おされて結局丁寧語に戻るアルマイア。冒険者は後ろを向き、何度もガッツポーズをとっている。

意を決したように冒険者は向き直り、少し上ずった声で、
「ア、アルマイアさん!おおおおお俺と付き合ってください!」
「ごめんなさい」
「がふっ」
前述の質問が無ければ少しは迷ったかもしれなかったが、予想できていたので躊躇無く答える。
「し、しかしそれもまた萌える・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・もしもし?」
冷や汗がたらりと頬を伝うのを感じつつ、ちょっと後ずさる。

「アルマ殿?何をしているでござるか?」
通りすがりにひょっこりエレメスが現れる。
(エレメスさん、ごめんなさい!)
そう思いつつ、エレメスの腕をとって、胸に抱きしめる。
「ごめんなさい、わ、私、この人が好きなんです!だからあなたの想いには応えられません!」
「アアアアアアアルマ殿!?」
「なんと・・・・・・エレメス=ガイルと・・・・・・それでは俺では太刀打ちできませんね・・・・・・」
動揺するエレメスをスルーしつつ、ほっとするアルマイア。

「エレメスさん。どうか彼女の想いに応えてあげてください。片思いだったみたいなので・・・・・・」
ほっとしたのも束の間、アルマイアの思考と身体が凍りつく。
(って何をいいやがるんですか!この男は!)
錯乱しまくるアルマイアに、エレメスは妙に男らしい表情になって向き直る。
「アルマ殿。今までその想いに気づかず申し訳なかったでござるよ」
「え・・・・・・いやちょっと・・・・・・」
意外な展開にさっきまでとは比にならないほど焦ってしまう。
「そうだ!エレメスさんもその気なら、御2人の始めにキスでもいかがでしょう!?」

(えええええええええええええ!?)
ふとエレメスを見やると、もう準備オッケーな感じで目を瞑って唇を突き出している。
とても超一流の暗殺者には見えない思えない。
(ええい、こうなったらなるようになれ!)
アルマイアにとっては初体験ではあるが、エレメスに好意的なのは確かなのだ。ただ、こういう
相手になるとは予想外だったが。

「こおぉぉぉの馬鹿兄貴ぃぃぃ!」
「あ、トリス」
トリスの出現に2人の声がはもる。
突然の出現に加え、いきなりの不意打ちにエレメスが何の抵抗も無く鳩尾を殴られる。
「あ、トリスちょっと待って」
アルマイアが止める間もなく、トリスはエレメスを抱えたまま消える。これも新しい技術だろうか。

その後、冒険者はお幸せに、とだけ残し、潔く去っていった。まともなアプローチをしてきたら
彼にもチャンスがあっただろうに、と他人事のように考えるアルマイアだった。

その後、アルマイアの元にエレメスから花束が届いたり、タキシードを着たエレメスが現れたりで
誤解を解くのが大変だったということである。
誤解を解いたら解いたで、今度はマーガレッタに散々弄られたりするのが彼の不幸なのか幸せなのか。


アルマ分投下。
なんだかトリスが段々2F離れしたキャラになりつつあります。
彼もまさか妹にいきなり殴られるとは予想外だったということで。
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