トリスの部屋のドアが開いたとき、何を見たんだろう。
一瞬いかがわしいような、でもとても甘美なもので・・・・・・
セニアは自分が倒れ、大量の鼻血を出しながら朦朧とする意識の中で、自分を介抱する人の
方を見た。
フリル沢山の真っ白いエプロン―――血が付いているが―――での裸エプロンなイレンド。
彼が自分の身体を強く抱いて揺さぶっている。
どう見ても止めです、ありがとうございました。

「う・・・・・・ん・・・・・・」
セニアが目を覚ますと、そこは見慣れた自室の天井が目に映ってきた。
「あ、気がついた、セニア?」
「あ・・・・・・うん」
やや意識が朦朧としつつも上半身を起こすと、目の前を白い何かが通過して、お腹の上に
落ちる。どうやら濡れタオルを当てられていたらしい。
「あ、イレンドが介抱してくれたんだ・・・・・・ありが・・・・・・」
礼を言おうとして気がつく。今の自分は普段着ではなく、お気に入りのピンクのパジャマ。
瞬間、体中の血が顔に集まるのを感じる。再び鼻血が出るのではないかと思うほどに。
枕をぎゅっと胸に強く抱いて、
「み、見た・・・・・・?」
「え、いや見てない見てない!運んだのと付き添いはやったけど、着替えさせたのはアルマ
だよ!」
「あ・・・・・・そ、そう」
お互い真っ赤になってしまう。

とはいっても、ここまで運んできたのはイレンドである。しかもお姫様抱っこ。鼻血吹いてる
女の子ではイマイチロマンに欠けるのだが、それでもその柔らかい身体の感触を存分に両腕に
記憶させている。

「ね・・・・・・イレンド。さっきのあの格好は?」
流石に異様な格好だったので、言い出していいかどうか迷いながらも尋ねてみる。
「この間のポーカーの罰ゲームだよ。嫌だって言ったのに・・・・・・」
恥ずかしそうに頬を染めるイレンドは、確かにセニアにとっても魅力的に思えた。
普段周りに子ども扱いされている彼女でも、イレンドにお姉さんぶりたくなるくらいに。

「ね、私にもさっきのやってくれないかな?」
「え!?いや・・・・・・衣装とか無いし」
やりたくない一心で、衣装の有無に逃げるイレンド。しかし・・・・・・
「じゃ・・・・・・えーと、これあたりかな?」
換えの剣士服を引っ張り出してきて、少し考えて白いエプロンをクローゼットから引だす。
「こんなのどう?」

「似合うじゃない!可愛い〜♪」
この天然娘は!と心の中で抗議をあげつつ、表面は精一杯の苦笑いを浮かべる。
「あとね、えーと・・・・・・さっきの裸エプロン・・・・・・」
「却下!」
セニアが言い終わらないうちに、イレンドは剣士服を脱ぎつつ、言葉をかぶせる。
「ふ〜ん。女の子の部屋であんな格好してたのに、私の前ではできないんだ?」
痛いところを突かれて、精神的に数歩よろめいてしまう。

「あのね、セニア。これでも僕男なんだよ?少しは危ないとか思わないのかな?」
「だってイレンドだし。全然大丈夫〜」
自覚してる安全さを叩きつけられつつ、今度はポーカーフェイスでセニアに詰め寄る。
剣士服を脱いでいるために、今のイレンドは上半身裸で近づいてきている。本来なら少しは
怯えてもいいくらいなのだが、セニアは危険を全く感じていなかった。だから反応が遅れる。

「え・・・・・・?」
ベッドの上に押し倒されて、イレンドがセニアの上にまたがるように四つん這いになる。
「こんなことされることもあるんだよ?」
しかし。
「形勢逆転だね。甘いよイレンド」
あっさりとイレンドは横倒しにされ、その上に馬乗りになるセニア。筋力では誤差程度しか
違いがなく、イレンドは本気ではなく完全に脅しであったために、そして武術に関する経験と
修練の差により、あっさり立場が逆転してしまう。

(う・・・・・・本当にイレンド可愛い・・・・・・)
上から微笑むセニアが、イレンドには挑発的に見え、セニア自慢の髪が肩からこぼれ、イレンドの
顔をくすぐる。そんな状況ではイレンドが赤面して顔を背けるのも無理は無い。
イレンドの胸には、馬乗りになったセニアの形のいい小さめなお尻の感触がきっちり伝わっている。
イレンドの上半身は裸な上、セニアが着ているのは薄い生地のパジャマと下着だけである。
パニックなイレンドと、熱くはなっているものの、冷静な判断力を残しているセニア。殆ど
一方的な展開である。

ぷち

「え・・・・・・?」
嘘だと思いたかった。一番こういうことと縁遠いと思われていたセニアが、半裸の男の上に
馬乗りになりながら、パジャマの一番上のボタンを外したのだ。
「ちょ、ちょっとセニア!?」
「こういうこと期待していたんでしょう?だから押し倒したんじゃないの?」
悠然と微笑み、2つ目のボタンを外す。パジャマ姿なのだから当然ブラジャーは着けていない。
イレンドは見とれつつも、異様な焦りを覚えた。セイレンにばれたら殺される。
谷間―――というには凹凸が小さすぎるが―――の白い肌が見える。セニアが3つ目のボタンに
手をかける。

イレンドは更に慌てだす。いくら小さな胸であったとしても、3つ目のボタンが外されれば、
イレンドを見下ろす体勢のセニアのパジャマははだけて、上半身が丸見えになってしまう。
しかし、セニアはここまでのつもり、ただの脅しだった。彼女にしては珍しい悪戯だった。
セニアはセイレン以外に見せるつもりは毛頭無いのだから。

「・・・・・・セニア、だいじょう・・・・・・ぶ?」
カチャ、という音がして心配したアルマイアが覗きにくる。

瞬間。
3人は凍りついた。

「セ、セニア!?イレンドを押し倒して何やってるの!?」
「いやいやいや違う〜!これは色々あって!」
「そうだよ!僕らは何もして無い!・・・・・・多分」
どうみてもセニアがイレンドを襲っているようにしか見えない。言い訳も墓穴に直結する。
「色々・・・・・・?つまりそういう関係になる色々なことがあったってことよね?」
「そうじゃなくて〜!ええと・・・・・・そ、そう!イレンドが襲ってきたから!」
「いやどう見ても、今襲っているように見えるのはセニアのほうなんだけど・・・・・・」
事実を言ったところで信じてもらえる材料が無さ過ぎる。
「ふ〜ん?襲われた方が自分からパジャマのボタン外すんだ?」
「あぅ。い、いやこれはえぇと・・・・・・ちょっとした悪戯で・・・・・・」
「あ、本気じゃなかったんだ。ほっとしたような傷つくような」
どんどんドツボに入るセニア。
「つまり献身的な介護してくれたイレンドを、悪戯で手をかけようとしたって事?極悪〜」
「なんでそっちのほうに行くの〜!?悪戯ってのは悪戯って意味で・・・・・・ああもう!」
「つまり僕は遊ばれたって事なんだね・・・・・・」
収支誤解が解けることは無く。
「アルマ!ノック位してよぉ!」
「したわよ!でも寝てると思って弱めだったけどね!」
「強めでもあの状態じゃ多分聞こえなかったなぁ・・・・・・」


次の日。
「セニア、兄さんは悲しいぞ・・・・・・まさかいたいけなイレンドを襲うなんて・・・・・・」
「セニア殿、やるでござるな!拙者感服したでござる!」
「一番子供だと思っていたんだが・・・・・・やるねぇ」
「仲間だと思っていたのに!先を越されたわ!」
「あらあら・・・・・・うちの弟に手を出すなんて・・・・・・覚悟はよろしいかしら?」
「・・・・・・セニア、凄い」

「セニア、お前もやるもんだな、まさかイレンドを手玉に取る悪女になるとは思わなかったぜ」
「素晴らしい体勢だったみたいじゃないか。ぜひとも再現してもらいたいものだ」

「セニア・・・・・・随分度胸あるじゃない?ふぅ〜ん・・・・・・あなたイレンド目当てになったってことね」

「ち〜が〜う〜〜〜〜!!ア〜ル〜マ〜!覚えてなさい!」


アルマ分投下です。
今回は前回から思ってたセニア色を強くしてみました。
でもセニアってどうしても遊ばれるイメージが強くなってしまいます。イレンドとは別の意味ですが。
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