ウホッ(ギャグ)というよりBL属性に付き注意。
行為シーンはありませんので、その点はご安心下さい。

―――猫線―――




「ぬおおおおおお」

「落ち着け。
 どうしたハワード、らしくもない」
「欲求不満だ!」
「介錯をしてやる、そこになおれ」
「たんまたんま、マジたんま」

 真面目なセイレンは、この友人のある点に関して、とても容赦が無い。
この時もすかさずボーリングバッシュの構えに入り、目が座っている。

「何ぞ言い訳でもあるのか」
「あるある、俺だって男だ! お前だってあるだろ、たまに!」

 普段はお堅く一直線なセイレンにも、確かに「そういう時」はあった。
しかも、彼の趣向はハワードほどではないが、常人とは大いに異なる。
程度が過ぎると叫ぶだけでは済まない分、我が身振り返ることは多い。
 そんな訳で彼は剣を収め、一応聞いてみることにした。


「毎日のように盛っている気がするが…」
「そうじゃねえって、実際は逃げられることが殆どだ」
「…逃げられなければ相手に構わず、か?」
「違う違う、だから剣を収めろ!」



 二人の話題は一貫して、エレメスのことである。
セイレンがハワードに対して厳しいのは、ある種の自衛でもある。
 そんな彼は、当然エレメスを不憫に思っていた。
何せ、見るからにマーガレッタを慕っているからである。
普段なら口を出せば、今度は自分の尻を追い駆けられかねない。
自分が主導権を握っている今だからこそ、こんなことが言えるのだ。

勿論、誤解はあったのだが。


「もしかしてお前、俺が無理矢理ばかりだって思ってるんのか?」
「…違うのか?」
「アイツだって全然逃げないこともあるんだぜ」
「それは、諦めているんだろう…」


 何を言うかと思えば、妙な正当化。
まるで客観性がない。
付き合いきれないと思ったものの、一度は応じた身。
話を最後まで聞かないのは道理ではなかった。


「それで、その欲求とやらは」
「いやさ、最近エレメスを見るとどうもな」
「見ると?」

「なーんか、見とれちまうんだよな」
「・・・は?」

「それでつい、追いかけるのを忘れちまうんだよ」
「けっこうな事だが……うむ」



 セイレンは一直線なだけに、ハワードはエレメスが好きなのだと思っていた。
にしては、この言い方はズレがあるように思う。
好きであれば見とれるのも無理はないが、聞いた言葉は最近とつく。
自分達の時間感覚が如何にあやふやかは知っているものの、それでも最近は最近だ。
近頃、ではない。


「ナイスな腰付きだなーとか、身体ほせえなあとか、技のキレがピカイチだとか」
「それは、まあ分かるが」
「そうか、お前にも分かるか!」

「まあ待て。
 とすると、お前は今まで見とれたことがなかったのか?」
「そうだけど?
 いつも綺麗だなとは思ってたが、見とれたのは本当に最近だ。
 手が休んでいる時は特にな」

「ふむ……」
「とにかく、そんな訳で欲求不満なんだよ。
 追い駆けるだけでも解消にはなってたからなあ。
 だから」
「断る」



 好きだから見とれることはあっても、確実に見とれる訳ではない……と、思う。
エレメスが技を変えたり、ポーズを変えたり、可能性は幾らでもある。
が、この素直な男のことだ。
自分の判断は間違ってないだろうと、セイレンは思った。
ので、


「ハワード」
「なんだ?」

「それは、
 好きになったからじゃないのか?」

「誰が?」
「お前が」

「誰を?」
「エレメスを」



 一頻りの沈黙。
その後、ハワードの顔がジワジワと染まっていった。
アイツも不幸なことだ、本気になられるなど。


「いや、そんな。
 あり得んって」
「だったら何で、いつも襲ってるんだ。
 それはそれで聞き捨てならんぞ」


「でもさぁ」
「でもだ。
 とりあえず、鏡を見てみたほうが良い」


「…えぇー…?」
「何を不満そうにしとるんだお前は」



 ハワードを目の前にしては何だが、エレメスは確かにいい男だ。
自分とは違った意味で一直線であり、恥を恥とも思わず、己の心根を簡単に曝す。
それが報われてはいないものの、相手がマーガレッタでなければ―――
―――そう、セシルなど恐らくは。
 因果なものである。
あれはあれで、幸せそうではあるのだが。


「自分の思いを確かめてみてはどうだ」
「確かめるってもなあ…」
「手っ取り早く、エレメス本人に話すとかな」
「マジかよ」
「俺がマジ以外の何かを言うか」
「そうだな」


 セイレンは即答されたことに少し傷ついたが、それは別の問題である。
 結果はどうあれ、友人を応援してあげたいとは思った。
研究所内にいては、どう足掻いても腐れ縁である。
関係くらい後腐れがない方が良い。
その筈だ。




―――という訳で―――



「エレメス、俺とつきあってくれ!!」
「けっこうでござるwwwwwwwwwww」

間。

「本気なんだ!」
「いやいや、漢字が違って聞こえるからにwwww」

「漢字って何だよ、アマツ語かよ!」
「今度は八つ当たりでござるかwwwwww」



―――結果―――



「振られた」
「けしかけておいて何だが、だろうと思った」
「てめ」
「しかしだ、少し晴れやかじゃないか?」


「そうでもねえよ!!」




―――ところで―――



「マガレって、ござるになびく気ないの?」
「うーん……もう少し、我が侭であればよかったのだけど」
「我が侭で?」
「尽くされるのは嬉しいものよ。
 でも、恋とは違うと思うの」




合掌。



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