「この紅茶美味しいわね。ありがとう」
「ありがとうございます、お嬢様」
そんな富豪の令嬢と執事のやり取りのような光景が繰り広げられる中。
「トリス・・・・・・普段からそうおしとやかなら、なびかない男なんていないのに・・・・・・」
いいじゃない、別にといわんばかりの視線だけアルマイアに向けて、再びにこやかに笑って
紅茶に口をつける。
ちなみにトリスは洗い立てのシーツを、体に巻いてうまくドレスのように着こなしている。
ドレスが無いための簡易措置だそうだ。
「はぁ・・・・・・まあいいけど。それにしてもイレンド、凶悪に似合うわね」

そう呼ばれた彼は執事役・・・・・・ではなくメイド衣装に身を包み、頭にはウサギのヘアバンドが
揺れていた。

事の始まりは数時間前。何のことは無い、トリスの発言からだった。
「この間のポーカーの賭け、罰ゲームはまだ1つ残ってたわよね?」
優勝者はビリに対して2つの命令を下すことが出来る。そのうちの1つはファッションショーに
使われていた。
「じゃ、今回の罰ゲームは・・・・・・」
冷や汗だらだらと流すイレンドを、悪戯好きのトリスが真剣な表情で溜める。しかし目は
笑っている。
「あたしの1日メイドさん」
「ちょ・・・・・・!?え?何?執事じゃなくメイド!?」
「トリス・・・・・・あなたそんな趣味が・・・・・・」
「いいじゃない、アルマ?イレンドのそんな姿見てみたくない?」
「う。確かに」
「アルマまで!?」

こんな願望は男だけだと思っていた、思っていたのだが。
命令を下したトリスだけでなく、アルマイアも夢見心地でイレンドの雑務を眺めている。
慣れていないのか(当たり前である)、ぎこちなく動くイレンド。ちょっと躓いたりする
イレンド。食器を洗うときに、危うく皿を落としそうになるイレンド。
「はぁ・・・・・・イレンド可愛い・・・・・・」
「ア、アルマお嬢様?微妙に傷つくんですが?」
冷や汗たらりと垂らして、口元ひくひく動かしながら穏やかな抗議をあげる。
「いいえ、よく似合うわよ、イレンド?これからもずっといて欲しいわ」
「ひぃぃ!」

「それにしても僕、ゴホン、私はそんなに男として見られていないのですか?」
「見てるわよ?見てるけど似合うんだから仕方ないじゃない」
あっさり言ってのけるトリスに、疑いの眼差しを浴びせるのは仕方ないことであろう。
「本当よ。これでもあたしは女の子よ。男の子と一緒の部屋にいたら、一応は押し倒されたり
することも頭に入れているわ」
ベッドに座りながら、傍らに立つイレンドの首に指を伸ばし、顎までそっと撫でる。
トリスの表情は妖艶な笑みに彩られ、同性であるアルマイアですら引き込まれている。
「ト、トリス。あなたエレメスさんのこと忘れてない・・・・・・?」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんよ。自分でもブラコンなのは認めるけど、セニアみたいに兄に
抱かれたいとは願って無いわ」
ノーマルな考え方にほっとしたのか、動揺したのか、アルマイアは沈黙する。

もっと動揺したのはイレンドである。
(え・・・・・・襲われる危険も考慮に入れて招いてるの?しかもあまり嫌がってなさそう・・・・・・
それってトリスは僕のことを?)
イレンドも姉に遊ばれたり、女の子のような容姿をしてたり、聖職者として恋愛に遠そうと
思われてても、れっきとした健全な青少年である。意識しない方がおかしい。
しかし一方で、トリスが自分に惚れるわけは無い、とも思っていた。どう考えても男として
見られているような気はせず、ただの玩具だと思っていたからだ。

2人の反応の鈍さに呆れたのか、トリスは次なるお仕事を追加した。
「じゃあ、イレンド。次はあたしの溜め込んだものを洗濯してくれる?」
「はい、かしこまりました。・・・・・・ってええ!?」
当然下着も入っているはずである。普通異性とみなしているものに、こんなこと頼まないのでは
ないだろうか?と思うのも全く自然な考えである。
「トリス〜恥じらいって無いの〜?」
アルマイアが呆れてしまう。
そんな親友の方を微笑みで返し、躊躇するイレンドに、
「あと2つ洗濯物追加していいかしら?」
「え?はい」
つい勢いで返事してしまう。

トリスは立ち上がり、イレンドと鼻先が付くほどの距離に間を詰める。
「トリスお嬢様、近すぎです」
驚いたイレンドに、再び微笑を浮かべ、トリスは自分の背中に手を回し、かすかに動いたと思うと、
シーツ製のドレスの胸元に手を差し入れ、空色のブラジャーを引き出す。
「え・・・・・・?」
アルマイアとイレンドはあっけに取られる。イレンドからは、胸元に手を入れるとき、抜くときと
2度トリスの胸の谷間がはっきり見えたりしたので、なおさらである。
「ちょ・・・・・・ト、トリス?」
さらにトリスはドレスの裾から同じく空色のショーツを下ろしていく。イレンドに向かって上目遣い
に頬を染め、自慢の美脚を見せ付けるかのように、曲げた膝を高くあげて片足ずつ抜いていく。
上から見ているイレンドには、太腿までしか見えなかったが、床にクッションを引いて座っていた
アルマイアには全部はっきり見えていたりする。

「じゃ、この2つもお願いね」
空色のセットをイレンドに手渡して、ベッドに腰掛ける。太腿をむき出しにしたまま足を組んだり
しているので、アルマイアは気が気でない。
イレンドはストイックな性格だがそれでも、トリスのドレスの下がどうなってるかわかっているため、
やはり太腿から視線を外せない。
「なあに?ずっと足見つめたりして?」
「い、いや、だって・・・・・・」
「そんなに興味あるなら触ってもいいわよ。でも、あたしのお願い、もう一つ聞いてくれるかしら?」

セニアはトリスとお茶を飲む約束のため、指定時間にトリスの部屋の前に辿り着いた。
「セニアだけど。トリスいる?」
ノックのあと、少し大きな声で中に呼びかける。
(ん?)
トリスにしては反応が遅い。いや返事はされたのだが、いつもならすぐにドアを開けてくれるはず
なのに。
中から何か言い争いっぽい声が聞こえる。イレンドのようだ。しかしアルマイアの笑い声が聞こえて
いるので、深刻ではなさそうでもある。
しばし迷っていると、トリスがイレンドにドアを開けさせようとしているようだ。
(また何かイレンドで遊んでいるのかなぁ?)

カチャ

「い、いらっしゃい。セニア。あー、セニアお嬢様、どうぞお入りくださ・・・・・・い?」
鼻血を吹いてスローモーションのように倒れていくセニア。慌てるイレンド。
その2人を見て笑うトリスとアルマイア。
「ぷっ・・・・・・いやー、流石に・・・・・・あはははは!セミ裸エプロンは効果あったね、くくくく!」
「わ、笑っちゃ悪いよトリス。私たちだって鼻血出したじゃない・・・・・・あははははは!」
イレンドはフリルがふんだんに付けられた真っ白いエプロンを、セミヌードの上に着ているのだった。
なお、セミなのは、流石に下は履かないとならないとの判断で、女物の「 空 色 」のショーツを
履いている。

後にアルマイアが耳打ちされたところによると、セニアを巻き込んだ壮大な悪戯だったらしい。
イレンドが可哀想過ぎるんじゃ?との問いには、
「だから色々オトコノコにサービスしたんじゃない♪喜んでたでしょ♪」
とのこと。
「そ、それって色香で釣ったと言わない?」
「いやまあ、見えそうなときには目隠ししてもらったし。同年代の女の子の背中を流すなんて
貴重な体験の前にはそんなの大した問題じゃないわ♪」
アルマだって、あたしの身体見て興奮してたじゃない、と口封じまでしてくる始末であった。

「あー、楽しかった!」
トリスは1人になった部屋でベッドに仰向けに倒れ、ぐっと伸びをする。
ひとしきり笑った後、天井を見つめながらそっと呟くのだった。
「・・・・・・いくじなし」


アルマ分投下・・・・・・のはずがトリスとイレンド分投下に!
しかし、罰ゲーム使い切ってしまったので、以前リクがあったファッションショーその他職業
バージョンをどうするかはまだ未定になってます。
しかし最近トリス分が多いなぁ・・・・・・
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