9月23日(土) 晴れ

6:30
 夏も終わったってのに蚊の羽音で起こされた。ムカつく。
イライラしたのでソウルストライクで落とそうとしたら、天井の蛍光灯に当って割れた。
朝から床を掃除するハメになるとは思わなかった。
 箒を取りに台所に出ると姉ちゃんがテーブルについていた。
朝ごはんはまだかと催促された。一体何時から座っていたんだ?
 仕方が無いので冷蔵庫を開けたが、昨日の夜は一杯だった中身がきれいになくなっていた。
全く厄介な胃袋だよ姉貴の胃袋は!
 やむを得ずコッソリとカヴァクの部屋に侵入して奴の食料、カ口リーメイトを失敬してきた。
遅くまでネトゲでもしていたのか、ぐっすりと眠っていやがった。
3箱も持って帰ったのに、俺の口に入れられたのは1箱だけだった。姉ちゃん食いすぎ。
後でカヴァクには謝っておこう。


8:00
 暑かったのでシャワーを浴びた。蚊に刺された首の後ろが痒い。
脱衣所に戻ると下着姿の姉ちゃんがいた。こっちは男湯だっての、何ネボケてんだ。
相変わらず乳でっけぇ。白のレース。ちょっと前かがみになった。


9:30
 今朝箒で掃いた場所だけキレイになってて、周りの床と違和感があったので全部掃除することにした。
面倒臭い。でも一部だけ他と違うと気持ち悪くてイライラする。
結局最後は壁の雑巾がけまでしてしまった。カヴァクから借りたDVD、「悶絶!ドリアード対ペノメナ」は
隠し場所を変えておいた。時々姉ちゃんが俺の部屋に食料を漁りに来るので、
頻繁に隠し場所を変えないといけない。面倒臭い。
 蚊に刺されたところは後でイレンドに診て貰おう。そういえば午後から二人と遊ぶ約束してたんだった。


12:00
 食うものが無かったので、セシルさんとカヴァク、姉ちゃんと一緒に食堂に行った。
相変わらずセシルさんは美人だ。胸が少し小さいが、それがいい。
カヴァクはまだ眠そうな顔をしていた。
 余り食欲が無かったので、ローストチキン定食とカルボナーラだけにした。
姉ちゃんは俺と同じものに加えて、焼肉定食と鯖味噌、豚骨醤油ラーメンまで注文していた。
食いすぎだっての。
 食いながらカヴァクに今朝拝借したモノについて謝っておいた。
呆れた様な顔をしたが、許してもらえた。
今度街に出た時にアイツの大好物を買って来てやろう。巨乳好きだったよな確か。


13:30
 カヴァクと一緒にイレンドの部屋へ行った。
いつも思うんだが、なんでアイツの部屋はピンク色で統一されててファンシー趣味なんだろう。
マーガレッタさんの影響だろうか?兎も角刺された所を見せたら、これはヒュッケの分野だと言われた。
アイツちょっと苦手なんだよな。


15:00
 イレンドの部屋で三人で対戦格ゲーをしてると、マーガレッタさんが入ってきた。
凄い形相で、どうやらエレメスさんを探しているらしい。
イレンドがここにはいないよと言ったら、急にお淑やかになって「ごきげんよう」と去っていった。
美人だけど相変わらず裏表の激しい人だ。セシルさんとは正反対だな。


17:00
 明日の朝食に必要な材料の買出しをしないといけないので、二人を残して先に帰ることにした。
ついでにヒュッケの部屋に寄ったら、エレメスさんが出てきて今はいない、夜に来てくれと言われた。
マーガレッタさんが探していましたよと伝えると、わかったでござると言って中に引っ込んでしまった。
 部屋に帰ると、姉ちゃんが腹を減らして待っていた。作っている時間も待てないようだったので、
結局また一緒に食堂へ行くことにした。先に行って食ってりゃいいのに。
待っていてくれたのは嬉しかった。
 俺も腹が減っていたので、昼飯の倍くらいは食べられた。姉ちゃんは相変わらず良く食う。
リムーバーのおばちゃんが、もう材料がないよって困った顔をしていた。コーホー。


19:00
 風呂に入っているときに首を刺されていた事を思い出した。
面倒だが、痕が残ると嫌なのでヒュッケのところに行っておこう。


21:00
 ぽかぽかした風呂上りの体で外を歩くと気持ちがいい。
途中、アルマイアに会ったが、怪しい薬を勧められたので断っておいた。
アルマイアの薬を飲むぐらいならヒュッケの解毒の方が余程信頼度が高い。
最近、アルマイアの奴はどうにも製薬に凝っているみたいだ。アルケミストにでもなるつもりだろうか。
 ヒュッケの部屋に着くと、もうエレメスさんは帰った後みたいだった。
蚊に刺された首筋を見せると、ヒュッケは面倒くさそうな顔をして中に入れてくれた。


21:30
 ツンツンしてる性格とは裏腹に部屋は綺麗で、ベッドの枕元にはポリンのぬいぐるみが置いてあった。
もっと何も無い部屋を予想していただけに、少し意外だった。
 出された座布団に座って暫く待っていると、ヒュッケが緑色の軟膏が入った瓶を持って戻ってきた。
金属製のフタを回してはずし、人差し指と中指で糸を引く軟膏を掬った。何だか卑猥だ。
「見せて」と言われて思わずズボンを脱ごうとした。何を考えてるんだ、俺。
後ろを向いて、襟を少し下ろして患部を露出する。ひんやりした感触と共にヒュッケの指が…あぁ…
妙に繊細な指動作に感じてしまう。くそっ、落ち着け!ラウレル=ヴィンダー!
 更にヒュッケは俺に追い討ちをかけてきた。
あろうことか、薬を塗り終わった患部にふぅふぅと息を吹きかけ始めたのだ。
近づく顔、洗いたてのシャンプーの香り…あぁ、俺はどうにかしてしまったんだろうか!
 振り返ってしまいたい衝動を堪え、猛り狂うマイサンをなだめ、必死で自制する。
頑張れ俺、負けるな俺。お前のその魔力は飾りか?魔術師としての精神力を今こそ見せてやれ!


22:00
 地獄の責め苦が終わり、ようやく俺は戒めから解放された。よく頑張った!感動した!
ヒュッケが薬を片付けに出て行って、一心地つき、もう一度ゆっくりと部屋を見渡した。
 良く考えると、姉ちゃん以外の女の子の部屋に入るのは初めてだった。
イグニゼムやアルマイアの部屋もこんな感じなんだろうか。なんだか一皮剥けた気分だ。
ヒュッケが戻ってきて、俺は礼を言って帰ろうと思い立ち上がった。
 じっと座布団に座っていたからだろうか、それともガマンが祟ったのだろうか。
俺は痺れた足によろけ、あろうことかヒュッケのベッドへと仰向けに倒れこんでしまった。
 舞い上がる沢山の布切れ、自分の顔の上に乗っかったそれを広げてみてみると。

 それは、なんというか、女性用の、極めて布地の少ない、黒くてスケスケの。

 ヒュッケも目の前の光景が信じられなかったのか、暫くぽかーんと口を開けていたが
はっと我に返ると顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
「こんなの、アタシのじゃないから!アタシのはもっとこうシンプルで…じゃなくって!」
 慌てて散らかった下着を拾い集める行動になんか萌えた。いやそうじゃなくて
手伝おうにもこれは俺が触っていいものかどうか…悩みながらそのまま仰向けに倒れていた。
 間の悪いというか何というか。部屋の扉がノックされて良く通る声が響いた。
「私だ、イグニゼムだ。明日の予定について皆で話し合いがあってだな…入るぞ」
 鍵のかかっていない扉を開けて、俺たちのリーダー、イグニゼム=セニアが姿を見せた。
 
 さっきヒュッケが薬を片付けて、部屋の入口と寝室の間にある仕切りの扉は開いていたわけで。
 部屋には現状、セクシーな下着類が散乱しているわけで。
 ベッドには俺が仰向けで横たわっているわけで。
 その上に跨る感じでヒュッケが下着を両手に抱えているわけで。

 どうみてもいかがわしい行為です。本当にありがとうございました。

「な…な…何をしているっ!貴様ら!部屋の鍵も掛けずにこのような、いや鍵は関係ないか
 と、兎も角このような破廉恥でふしだらで不潔極まる行為を…」
「どうしたのーセニアー、って…あらあら、いつのまにお二人さんそんな関係に?」
「ラウレルさん…貴方、早く帰ったと思ったら…そういうことだったんですね。
 いえ、僕は何も否定しませんよ。神よ、この者達に祝福を!ブレッシング!」

 どいつもこいつも勝手な事を抜かしやがって。こんな事ありえない、ありえない、ありえない!
ぶち切れそうになったところで、イレンドの後ろからカヴァクがひょっこりと顔を出して言った。

「これ、何てエロゲ?」









――おしまい
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送