受信しちゃったんだからしょうがないじゃない。
と言えば許され…ないかなorz

詠唱が厨臭いのは仕様なんです、自分でも時期によって痛いんですが周期的に使いたくなるので勘弁してやって下さい。


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今にして思えば。
カヴァクがいつもの巡回路を外れた時点で気付くべきだった。
部屋の探査を終え、帰ろうとした時、奴は妙に出口を遮るように動こうとしたんだ。

「我が誇りを介し、来たれ焔神!!(Magnum Break)」
胸のあたりに熱した鉄を叩きつけられたような、否、言葉通りの痛みが身を焼く焦がす。
肉体を切り裂いて過ぎ去る鋼鉄に遅れ、身に纏った魔力が慌てたように痛覚を麻痺させていく。
鮮血が相手の魔装甲冑(sプレート)を染め、しかしその赤色の届かぬ位置で魔術師が追撃を詠う。
――と、鍛えられた繊手が、美しいとすら思えるモーションで二本の矢をつがえる。
極限精錬された技術は魔法にたがわぬと云う説は真実だろう。
放たれた二矢は過たず唄を詠ずる魔術師が胸を貫く。
「偉大なる魔王、氷雪が魔狼、その――ガッっ……ハッ……」
「貫く双牙(Double strafing)」
無表情に呟き、カヴァクは弓を降ろす。
「てめっイカルス!! 中途半端にさぼってんじゃねぇよ!! 来い!冥府の殺塊!!(Soul Strike)」
「切り裂け昇竜、薙ぎ撃て降龍!! 連なる…(Bowling Bash)………ちょwwwwwwキレるの勘弁wwwwwwwっグギェ!」
「騎士様!!」
カヴァクに苦情を言いながら放った術式が招くは死霊の怨嗟。
物理耐久最強を誇る騎士とて、大技の隙をつかれては、なにより魔法攻撃たる数十に及ぶ怨霊の前には、赤子同然に憑り殺された。
「そ、そんな…我願う、主の保護を!!(Pneuma)」
「間違ってはないが一手遅い…そこは逃げるべきだな」
狂乱に陥りそうな精神を信仰の盾にて建て直し、より脅威たる攻撃を無効化する加護を願う女に、苦笑交じりに呟く。
「サボって無いって………やれやれ、キレたんなら殺し尽くせばいいものを…手を抜くのはお前の悪い癖だね」
「禍なる言の葉を破り、その響きを絶て!!(Lex Divina)……キャ…っ…」
つまらなそうに言いながら放たれた、天を目指す矢は天井にぶつかる寸前でありえぬ軌道を描き地を襲う。
この時点で尚足掻こうと、沈黙を司る天使を招来せんとする僧侶が、弓手の魔力により分裂した矢に肺腑を抉られ地に伏せる。

「悪いね、ニュマは上からの攻撃には弱いんだ。…ここは慣れてなかったみたいだな、こいつら」
小さく息をつきながら、カヴァクが地に転がった冒険者の胸を蹴る。
微かに煌く輝きがその全身から離れ、やがて消える。
「ウチら200人分の経験がコレってのは、ちょっと萎えるよな」
(俺らと違ってドロップも無いしってか?)
そう言ったつもりで、音がしていない事に一拍遅れて気付く。
「ん? …ああ、すまん沈黙食らったか。……てて」
両手を広げた誠意の欠片もないアメリコンな仕草で謝り、胸当てを外して顔をしかめる。
よくよく見れば、胸当ての覆う範囲の胴衣は真紅が染めていた。
(お、おい! お前その怪我!!)
慌てて詰め寄るものの、未だ天使の封印は自分から言葉を奪っていた。
「ん? ……あぁ、怪我か? 大丈夫だって。ちょっと応急処置すれば問題ないさ。あとでイレンドにでもヒール貰うよ」
その言葉に安堵の息を付きながら、裂かれた…というより焼かれた胴衣からちらつく胸に目を止める。
微かにふくらみを見せているように見える。…ふくらみ?
(……胸? いやいやまさか。3Fの"おねえさま"の妄想じゃあるまいし。……いやしかしこれは…どう見ても…)
傷口を綺麗に裂く程度の、ほんの気休めの応急処置を済ませてカヴァクが胸当てを手に取る。
と、その中途で動きが止まる。
「……ふふーん? なんだ今頃気付いたんだ?」
怪しげな光を湛えた瞳が、こちらをまっすぐに射抜く。
胸当てを置き、ゆっくりとこちらへ、つまりは部屋の奥へと近寄ってくる。
(な、なんだよ…?!)
その雰囲気に動転しながら放つ言葉は、しかしやはり天使の封印に阻まれる。
「なあ……この事は、みんなには内緒、だからな?」
そういいながら、いつのまにか辿り着いた部屋奥に設えられたベッドに向かい、身体ごとぶつかってくる。
声が出ない事、唐突に変じた相棒の様子、その他諸々が理由としてあげられるだろう。
しかしとにかく、身体がカヴァクと絡み合うようにベッドに倒れこんだ。
「なあ、マジで気付いて無かったわけ?」
(気付いてたらあんな話はしなかったっっっ!!!!)
先日の会話が思い出される。

「で、お前としてはどんな女が好みなんだよ? やっぱやらせてくれるのが一番?」
「馬鹿、そんなんどこの世界に…。………」
「…お前なら、上にいそうな気もするがね」
「…まあ! それはともかく!! …俺はそうだな、やっぱり惚れた女は守ってやりたいかな」
「守られる女がいい、と。つーか、ならお前なんで魔術師なんだよ。騎士じゃねえの?」
「(姉貴に憧れたとか言えっかよ…)…適正って奴だよ」
「ふーん? で? 最近はヤりたい女はいないのか?」
「ぶ!? どうしてオマエはそういう方面につなげたがる!!」
「あー……いや、ちょっと…同居人の性癖が気になってさwwww」
「ま、今に始まった事でも無いがな…。そうだな、いまひとつ実感わかないが、中性的な奴がいい」
「そっか。…きょぬー嫌いか。……いや、男としてそれはどうなんだ! 男ならば俺のようにきょぬー派でなくてどうするっ」
「そっちの方がどうなんだよ。オマエのはアレだろう、家族の反動というか、姉のs…いや、やめよう、寒気がした」
「OK、やめよう………」

「あはは、そっかそっか気付いて無かったのか。…でもさ」
それは言葉を封じられても通じたようで、カヴァクはくすくすと笑いながら、不意に笑みの質を変える。
「こんな形でも気付いて貰えたのって、”私”は、嬉しかったんだけど、な」
(……か、カヴァク…?)
胸当てを外した以外、さして普段と変わらないのに、何故かカヴァクから目が離せない。
「お前は…ラウは…私が嫌い…か?」
(そんな事はないっ! いやしかしっ!! 俺は姉貴が好きつか家族としてつか、いやしかし俺も男なわけであああ何言ってんだ俺!!)
カヴァクが身体の上にのしかかり、両手がカヴァクを跳ね除けようと動く手を押さえつける。
「好きでなくてもいいさ。ただ、嫌いかそうでないか、私を抱けるかどうかだけ…聞かせてくれないか?」
のしかかったまま、艶を含んだ瞳がこちらを攻め立てる。
柔らかい質感が身体に圧力をかけ、胸当ての外れた胸板からありえないハズの感触が理性を溶かして行く。
(き、嫌いでは無いが、それは同僚としてというか、そういう対象としては考えた事が無いというか…)
「そろそろ沈黙の封印も解けるだろう? 態度ではなく、お前の言葉で。イエスかノーか。答えを聞かせてくれないか?」
微かに含まれたからかいの色が消えうせ、真摯な瞳がこちらを見つめる。
それは、おそらく恋する瞳という奴で。
(俺は…)
それを見て、真摯に答える覚悟が決まる。
唾を飲む音がやけにうるさい。
心臓が転生職の連中と合間見えた時にも無いほど早鐘を打つ。
「…お前なら、抱ける。……と思う」

「いょっっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ウソウソウソウソーーーーーーwwwwwwww!!」
「ちょwwwww大損じゃないーーーーーー!!!」
一生分の精神力をつぎ込んだ答えの途端、カヴァクが快哉を叫ぶ。
同時に、ベッドのすぐそばと壁際から、聞き覚えのある声が響く。
(な、なにごとだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)
「魔なる焔よ、偽りを砕け(Sight)」
パニックになる頭と、どこか冷静な頭が混在し、後者が結果のわかりきった魔術を放つ。
部屋の中に現れたのは腐りかけた好奇心全開のトリスと、カケ札と思しき紙を手に青い顔をするアルマ。
「どーよ、オレ様の魅リキにかかればラウレル如き楽勝に陥落できるってわけよ」
「ね! ね!! ラウレルってそっち方面いけるんだ?! イレンドと今度絡んでくr」
「ああ…お兄ちゃんのロドクロ分丸々飛んでっちゃった…」
姿を現しても動じる事なく、それぞれが好き勝手にまくしたてる。
「…えーと…」
(つまり、だ。これはつまり)
「俺を誘惑して乗るかどうかという賭け?」
使い切ったハズの精神力を再動員し、普通の笑顔で問いかける。
「賭けなんてどうでもいいの! ラウレルがねー…あ、でも男装好きはハワードとは違うのかな?」
「どうでも良くないわよ! 私のお金……お兄ちゃんの装備ももう無いのに…」
「ちょwwwお前ら俺様の魅力ついてはノーコメントですかwwwwww」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ三人に。
「我招くは封ぜる魔力、凍てつく冷気よ!×3(Frost diver)」
ラウレル=ヴィンダー、生まれて初めて。何か大事な物が切れるのを自覚した。
「ぶ…ちのめせっっっっ冥府の殺塊!!!!(Soul Strike)×3」

その日、生体Dの一角で大魔法に匹敵する念属性の爆発が巻き起こったとかいないとか。

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