「せいっ!やー!」
剣と剣がぶつかり合う無機質な音が響き渡る。
「ふんっ!」
キーン
跳ね飛ばされた剣はざくっという音をたてて床に突き刺さった。
「今日はこれまでだ、腕を上げたなセニア」
「ありがとうございました、兄上」
床に突き刺さった剣を引き抜いてセニアは一礼した。
「セニアよ、最近のお前の剣には迷いが感じられるがどうしたんだ」
「・・・わ、わたしは迷いなどありません」
「セニアよ、これは稽古といえども実戦を想定した真剣勝負なのだ、例え相手が兄であろうとためらうな」
「兄上・・・わたしは相手が兄上だからといってためらったりはしていません・・・」
「そうか、だがこれがもし実戦ならお前は命を落としているそのことを忘れるな」
「はい・・・」


相手が兄だから剣を振るうのをためらったりしているわけではない。
意識してしまった、彼を男として意識してしまった、その日からこの気持ちを抑えることができなくなった。
「あらセニアちゃん、こんなところで一人怖い顔してどうしたんですの?」
「あ、マーガレッタさん・・・その・・・胸を押し付けるのをやめていただけませんか・・・」
「あらあら、これは聖職者の親愛を示す由緒正しい挨拶の仕方ですわよ」
そう言ってマーガレッタはセニアに後ろから抱きついている腕を腰の方にまわした。
「そ、そうだったのですか・・・それは失礼いたしました」
マーガレッタはそれを聞いてくすくす笑いながらセニアの髪を優しく撫でた。
「ほんとにセニアちゃんはかわいいですわ♪」
「マーガレッタさん・・・」
うれしそうに笑うマーガレッタにセニアは神妙な顔で切り出した。
「あ、兄上には・・・その・・・将来を誓い合った方とか・・・その・・・そういう方はいらっしゃるのでしょうか・・・」
とたんにマーガレッタは目を輝かし始めた。
「あらあらあら、セイレンに恋人とかはいるかってことかしら?」
「ええ・・・」
「わたくしも彼のプライベートを全て知ってるわけではありませんけど、いないと思いますわよ」
「そ、そうですか」
安堵したような表情を見せるセニアに、マーガレッタは少し意地悪をしてみたくなった。
「あ、でも・・・もしかしたらいるかもしれませんわねぇ」
「え、そ、それは本当ですかっ!」
声を荒らげるセニアを見てマーガレッタはうれしそうに続ける。
「ええ、セイレンと同じように剣の道に生きてらっしゃる方ですわ」
「そうでしたか・・・兄上にはそのような方が・・・」


「・・・というわけですわ♪」
「姉さん、聖職者でありながらそんな嘘をつくなんてどういうつもりですか!」
憤る弟を意に介さずに姉は続ける。
「わたくしは嘘なんてついてませんわよ」
「これではセニアがかわいそうです」
「あら事実をセニアちゃんに教えてさしあげただけですわ」
「じゃあセイレンさんにそういう人がいるっていうのは本当なんですか・・・?」
「ええ、本当ですわよ」
「セイレンさんにそんな人がいたんですか・・・一体どなたなんですかそれは」
「イレンド、あなたほんとに鈍感ですわね」
「そうでしょうか・・・」
「セイレンと同じように剣の道に生きるって時点でセニアちゃん以外に誰がいるんですの?」
「!」
驚いて固まるイレンドを見てマーガレッタはにやりと笑った。
「あら、妹を愛するなんてそんなに珍しい事ではありませんわ」
「で、でも、それは神がお許しにならないのでは・・・」
「あらあら、わたくしもこんなにイレンドを愛してますのに」
そう言ってイレンドの頭を自分の胸に押し付けた。
「ね、姉さん、やめてくださいっ!」
「あらあらあら、イレンドは昔からこうして抱きしめてあげると喜んでたじゃないですの♪」
「僕はもう子供じゃありません!」
「それにしてもイレンド、あなた随分怒ってましたわね・・・もしかしてセニアちゃんのことが♪」
「な、何を言ってるんですかっ!ぼ、僕は神に仕える身・・・そんなことあるわけが!」
「あらあら、そういうことにしておいてあげますわ♪」
「ね、姉さん、とにかくセニアにちゃんとそのことを教えてあげてください」
「あなたが教えてあげればいいじゃない、イレンド」
「・・・わかりました、そうします」
イレンドはそそくさと部屋を出て行った。
「・・・面白くなりそうですわ♪」
部屋に残ったマーガレッタは1人不気味に笑った。


「ふんっ!ぬんっ!はあっ!」
無機質な空間にヒュンヒュンと風を切る音だけが聞こえる。
「相変わらず鍛錬ばっかりしてるんですのね、セイレン」
その声で空間を切る音がやんだ。
「マーガレッタか、どうした」
「実はセイレンに少しお話があって来ましたの」
「むっ、君が改まって話とは珍しい」
「セニアちゃんのことなんですの・・・」
「!!」
マーガレッタがセニアの名前を出した瞬間にセイレンの眉が釣りあがる。
「セニアが、セニアがどうしたのだ」
「セニアちゃん悩んでるみたいなんですの」
「何っ!セニアが悩んでいるだと」
「ええ、恋の悩みらしいですわ」
「何だと!」
今にも切りかかって来そうなセイレンの気迫にさすがのマーガレッタもたじろいだ。
「え、ええ・・・」
「相手は誰なのだ!マーガレッタ、教えろ!」
「せ、セイレン・・・落ち着きなさいな」
「誰なのだ!」
「セニアちゃんだってもう年頃ですわ恋の一つや二つしますわよ」
「そんなことはわかっている!相手が誰なのかと聞いているのだ!」
「い、今のあなたには教えて上げられませんわ」
「マーガレッタ!」
「と、とにかく・・・お相手はセニアちゃんと同じように剣の道に生きる騎士ですわ」
「何っ、騎士だと!」
「え、ええ、そうですわ」
「ぬんっ!!!」
ピシッ!
セイレンが放ったすさまじい剣風で大理石の壁が真っ二つになった。
「せ、セイレン・・・?」
「・・・・・・マーガレッタ、今すぐその男の居場所を教えろ」
マーガレッタはテレポで飛ぶ準備をした。


コンコン
「どなたですか」
「セニア、僕ですイレンドです」
「イレンドか、どうぞ」
静かにドアを開けてセニアの部屋にイレンドが入ってきた。
「どうした、イレンド」
「ちょっと姉さんのことで話が・・・」
「マーガレッタさんのことで話?」
「う、うん、そうなんだよ」
何だか言いにくそうにしているイレンドを見てセニアから尋ねる。
「イレンド、マーガレッタさんがどうかしたのか」
「さっき、姉さんとセニアは話をしたよね・・・?」
「あ、ああ・・・話をした・・・」
「実はそのことでセニアに謝らなくちゃいけないことが・・・」
「ん、わたしに謝ること?」
「姉さんがセニアに、セイレンさんには好きな人がいるって言ったでしょ・・・」
「・・・ああ」
「その好きな人っていうのは本当は・・・・・・」
ドン!
イレンドが言い終わらないうちに部屋のドアが勢いよく吹っ飛んだ。
「・・・・・・」
そこには無言で凄まじい闘気を放つセイレンが立っていた。
「あ、兄上・・・」
「せ、セイレンさん・・・」
「・・・イレンド、よもやお前がその騎士というわけではないだろうな」
「え、な、何のことを言ってるんですか・・・」
「そうか・・・ならばイレンド・・・席をはずせ」
「は、はいっ!」
セイレンのあまりの気迫に恐怖したイレンドは逃げるように部屋を後にした。
「あ、兄上・・・どうしたのですか・・・」
「セニア・・・お前は悩んでいるらしいではないか」
「え・・・」
「お前はある騎士に恋心を抱いている・・・違うか」
「そ、それは・・・」
兄上は全てを知っているのか・・・わたしはどうすればいいんだ・・・
「あ、兄上・・・兄上には愛する方がいらっしゃるというのは本当ですか・・・兄上と同じ道を歩む・・・」
「な・・・何を言っているのだ・・・」
馬鹿な・・・セニアは俺の気持ちに気付いているのか・・・
しばらく二人の間に沈黙が続く。
「セニア」
「兄上」
同時に口を開く二人。
「ど、どうしたセニア・・・」
「あ、兄上お先に・・・」
一向に会話が進展せずにいたずらに時だけが過ぎていく。
「その・・・俺にはそういう者はいない、せ、セニアそういうお前はどうなんだ」
「わ、わたしにもそ、そのような方はいません」
「そ、そうだったか、俺の勘違いだったようだな」
「わ、わたしも勘違いしていたようです」
「はは、せ、セニアよ悪かったな、お、俺はそろそろ戻る」
「あ、兄上、わ、わたしの方こそ勘違いしても、申し訳ありませんでした」
「はは、か、構わないぞ、セニア」
「あ、兄上、ありがとうございます」
「で、では俺は戻る、た、鍛錬を怠るな」
「は、はい、しょ、精進します」
お互い顔を見合わせないようにしながら、セイレンはそそくさと部屋を出て行った。
「あ、兄上・・・」
部屋に残されたセニアは安堵したように頬を赤らめた。


「と、いうわけでござるよwww」
「ほー、なるほどな」
「へー、ほんとあの二人は何ていうかあぶなっかしーわねー」
「・・・・・・セイレン・・・」
「あらあら、何とか最後は丸く収まったみたいですわね♪」
「ほう、エレメスはクロークでいつも通り盗み聞きしてたわけか・・・」
「そうでござるよwwwこんな面白そうなことなかなかないでござるからなwwwww」
エレメス以外の顔色がさっと変わった。
「あ、お、俺ちょっと斧を精錬してくるぜ、じゃ、お先に!」
「わ、わたし、罠きちっと仕掛けてくるの忘れてたから、い、行ってくるね!」
「・・・サイトしてくる・・・・・・」
「わ、わたくし、そろそろ神にお祈りをする時間でしたわ、そ、それじゃ!」
「ちょwwwみんなここからが面白い話でござるのにwwwww」
「そうかエレメス・・・その話の続き、俺にも聞かせてくれないか・・・」
「うはwwwwっをkwwwww拙者の人生もここで終わりでござったかwwwwwwwww」
「兄上・・・及ばずながら加勢いたします」
「ボーリング・・・」
「ちょwwwwwwwwwww」
「ダブルバッシュ!!!」
「アーッ!」
その後ベットでハワードに激しく看護してもらうエレメスがいた。



前回書いたセイレンセイレンの続きをと思いましたけど、今回はセイレンとセニアの話を入れてみました。
次は女になってしまったセイレンの続きか他のキャラを書いてみたいです。
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