ジリリリリリリリリ…突如深夜の三階鳴り響く火災報知器の音
今夜の当直だったエレメスも何が起きたのか把握できていない。
束の間の休息から目を覚ました他の面々も続々と起きてくる。
異常があった場合集合する部屋は各々既知の上である。

「何があった。」先ほどまで夢の中に居たとは思えない程厳しい剣幕のセイレン。
「拙者にもわからないでござる。3階すべてを見渡したのでござるが
特に火の手のようなものは見つからなかったでござるよ。」
機械ならまだしも、見回って調べたというエレメスの言葉に安堵したのか
ただでさえ眠そうだったセシルが大きな欠伸をした後
「なんだ…ただの誤報か、私いちぬーけた。」と自分の部屋に帰ろうとした刹那

ドン!という耳を劈く轟音と共に壁を揺らすほどの振動が伝わってきた。
全員に緊張が走る。もう寝ぼけた顔をしているものは居ない。
次の瞬間またドン!ドン!と轟音と振動が伝わる。
部屋を飛び出した面々の目に、闇の中に揺らめく炎が見えた。
「あれは階段のほうだな…」ハワードが呟く。
二階と唯一の連絡通路である階段のほうから火の手が上がっている。
「でもおかしいわね、入り口のほうのスプリンクラーが作動しているから
すぐ消火されるような気がしないでもないけれど。」
冷静に状況を判断するマーガレッタだが、その炎は降り注ぐ消火剤を含む液体
に対してまったく勢いが衰える気配がないのだ。
「…魔力を感じる…」突出した魔力の持ち主カトリーヌはそう言った。
全員の脳裏に過ぎった「侵入者」という単語。同時に彼等は臨戦態勢に入る。

「とにかく入り口の方に向かおう。この炎が侵入者によって作られたものなら
そいつを倒すしかない。」ハワードはこう言った。「だが−」セイレンが間に入る。
「あれだけの炎では三階全体に行き渡るはずもない。こちらにはカトリも居るし
魔力をぶつければいずれ消火することが出来る。あんな炎では逆に侵入を知らせる
羽目になって逆効果じゃないか。」ただの敵襲と見ず、深読みをするセイレン。
「けど、侵入者の姿が見えない以上、消火に向かうにせよ、撃退するにせよ
階段のほうに向かわねばならないでござるよ。」
「エレメスにしちゃ割と真面目な結論ね。」
「失礼な。伊達に修羅場をくぐっちゃいないでござるよ。」
珍しく暗殺者らしいエレメスとそれを茶化すセシル。
「とりあえず行きましょう。火災報知器がまた鳴ったら寝れなくてお肌が荒れちゃうわ。」
こんな時にまで肌の心配をしているマーガレッタ。危機感は皆無のようだ。
それもそのはず。今まで侵入者にせよ小火にせよ、六人そろっている状況で
対処できなかったことはないのだ。

「…確かにここでこうして手をこまねいていても仕方ない。
臨戦態勢を維持したまま向かうぞ。」重い腰をあげたセイレン。皆が表情を引き締める。
エレメスがその身を隠しつつ先行し、セイレンとハワードがその後に続き
マーガレッタ、セシル、カトリーヌが後衛の形で最後に続く。
いつもの隊列。その先にはいつもの戦闘があるに違いないと誰もが思っていた。
入り口まであと数十メートルかというところまで来たときまたドン!という
爆発音と同時に爆風が彼等を襲った。軽く吹っ飛ばされたセイレンとハワードが振り返ると
後方には巨大な火柱が立ちはだかっていた。
だがそこにマーガレッタを始めとする女性後衛陣の姿はなかった。
「マーガレッタ!セシル!カトリーヌ!」
意識しなくてもセイレンは叫んでいた。だが火柱が発するまるで
竜巻のような風と轟音にその声が向こう側に届くことはなかった。
「分断…されたか。向こうも無事だといいが。」
「あの三人なら拙者達よりタフでござるから大丈夫でござるよ。」
心配するハワードにこの期に及んでまで余裕のエレメス。
だがそういう会話も掻き消すようにセイレンが叫んだ。
「来るぞっ!」

続く…かも
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