「う～・・・これは押し洗い、これは漬け置き・・・」
今、姉さんの洗濯物を素材と汚れの種類別に仕分けしている僕は、ごく普通のアコライト。
ちょっと姉さんにお願いがあるとすれば、できれば下着くらいは自分で洗って欲しいって事かナー？
名前はイレンド＝エベシ。

そんなわけで、僕がため息をつきながら、漬け置き用の洗剤液を作っていると、ハワードさんとセシルさんがやってきた。

「・・・いいのかい？俺は男物でも女物でも構わず洗濯しちまうような男なんだぜ？」
「いいのよ、普段ならともかく・・・なにしろ今日はこの量だもん、贅沢言ってられないわ」
「でも、ずいぶん溜め込んでたんだな・・・俺のカートがパンパンだ」
「ち、違うわよ！？あたしのはほとんど無いってば！！・・・ほとんどカヴァクが溜めてた奴なんだからねっ！？」
「そうか、それじゃしっかり洗っておかないとな・・・時間が経っちまうと、染みなんかは落ちにくいんだ」
「・・・まったく、こまめに洗えって言ってるのに。あの馬鹿、いっつもぎりぎりまでやろうとしないんだから・・・
それじゃハワード、悪いけどお願いね」
「おう、任せておけ！」

セシルさんは、ハワードさんに洗濯物を渡すと、僕にも軽く手を振って、いつもの巡回へと出かけていった・・・

それにしても、カート一杯の洗濯物って・・・ウボアーッ！？す、すごい量・・・

そう思っていると、突然ハワードさんは、僕が見ている目の前で、山のような洗濯物を仕分けも下処理もせずに、
洗剤と水の入ったカートにまとめてに放り込み、ぐるぐると激しく振り回し始めた。

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカートレボリューション！！！！！！！！！！

「ん？・・・どうしたエベシ。なんならそいつも一緒に、あ　ら　お　う　か　」
「いえ、手洗いしないといけない物が多いので・・・」

そういえば、姉さんと僕以外の洗濯って、誰がやっているのか考えた事も無かった。

彼、ちょっとゲイっぽいホワイトスミスで、名前はハワード＝アルトアイゼンと言う。
洗濯にもずいぶんと慣れているらしく、僕が分類した姉さんの洗濯物を一目見たとたん、洗える物は手早く畳んでネットに包まれ、
ハワードさんの洗濯用カートに放り込まれてしまった・・・断わったのに。

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカートレボリューション！！！！！！！！！！

「ところでエベシ、この洗濯物を見てくれ・・・こいつをどう思う？」
「すっごく・・・汚れが落ちてます」
「おほっ！嬉しい事言ってくれるじゃないの～・・・それじゃあ今度は、とことん濯ぎ洗いしてやるからな」

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカートレボリューション！！！！！！！！！！

言葉どおり、彼は、素晴らしい速さで濯ぎ洗いをはじめた。
僕はと言うと、洗濯ネットに包まれた姉さんの服が、カートの中で激しい波にもまれるのを見て、不安に身を震わせていた。

しかし、その時、予期しなかった出来事が・・・

「うっ・・・し、濯ぎ終了だ」
「えっ！？もうですか！！・・・洗っていた時間も込みなのに、ずいぶん早いんですね・・・」
「違うぞエベシ、今日は量が多いから、これでもかなり遅い方なんだ」
「す、すごい・・・でも、どうやって洗濯物を絞るんですか？」
「ああ、次は脱水だ・・・」

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカートレボリューション！！！！！！！！！！

洗濯物をカートに入れて振り回すなんて、なんて人なんだろう・・・
しかし、驚く程の汚れ落ちと仕上がり、作業の早さ、服へのダメージがほとんど無い事を見ているうちに、
この洗濯用カートの購入を姉さんに相談してみたいという欲望が・・・

「これで洗濯は完了だ・・・しかしこの量を干すとなるとなぁ・・・」
「それじゃ、干すのを手伝いますよ」

いくらなんでもこの量では、ハワードさん一人で干すのは大変だろう・・・陰干ししなきゃいけないものもあるし。

「よし、良い事を考えた・・・エベシ、この洗濯物片っ端から全部並べて干しちまえ」
「ええっ！？女物も男物もわけないでですかぁっ！？・・・絶対姉さんやセシルさんに怒られちゃいますよ！」

「なあに、男は度胸！何でも試してみるもんさ！」
「だめですよ、干す時にちゃんとしておかないと、伸びたり縮んだりして着れなくなる物もあるんですから・・・」

僕とハワードさんは、のんびりと談笑しながら、次々と洗濯物を干していった。

「ほ、干し終わりました・・・」
「ようっし！！洗いあがった洗濯物ってのは、やっぱり気持ちいいもんだな！」
「はい、そうですね」

僕は、ハワードさんにお礼を言って別れると、いつも通りの方法で、残りの洗濯物に取り掛かった。
・・・やっぱりあのカート欲しいなぁ・・・幾らくらいするんだろ？・・・アコライトでも使えるのかなぁ・・・

こうして、僕の洗濯用カート初体験は、まずまずの結果に終わったのでした。

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