「よし、できた!トリス、そっちはどう?」
「ん〜もうちょっと・・・・・・」
「手伝おうか?」
「いや、あとここだけだから・・・・・・と」
数分真剣に見ていると、トリスが顔を上げて、にっこりと綺麗な笑みを浮かべる。
「はい、完成〜」
「おつかれさま〜」

「結構時間かかったねぇ・・・・・・」
アルマイアは部屋中に飾られてる服を見て言った。
「でも後半は結構スピードあったんじゃない?」
そうね、と返し、満足げに微笑む。
仕込みは全て完了。あとは実行に移すのみ。

始まりは数日前の夕食後。食堂に集まったみんな―――セイレンとエレメスを含む―――で
カードで遊ぼうということになった。選択したゲームはポーカー。
研究所に落ちていたネジをチップ代わりに順位付けして、トップのものはビリに、2位は
ブービーに罰ゲームを課すようにしたのだ。なお、トップは2つ課す事ができる。
トップは圧倒的な差でトリス、2位はアルマイア、ブービーはセニア、ビリはイレンドだった。
アルマイアは知っている。トリスは実はイカサマをしている。だが具体的にはどんなイカサマ
しているかは知らない。それなのに何故わかるかといえば、同じイカサマ師としての勘である。
しかしレベルの違いは明らかだった。

本来イレンドはかなり強い部類に入る。頭もよく、冷静でポーカーフェイスが巧い。運も
かなりいい。だが『何故か』僅差ではあったがビリであった。
トリス曰く。
「頭よくても生真面目じゃ、裏は読めないわ」
とハートマークがつきそうな口調で言ったものである。
ルールを侵すものがいなければ強くても、勝負事はそれだけでは勝てはしないと言いたげである。

「というわけで、あたしのイレンドへの罰ゲーム。イレンド君女装ファッションショー!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!姉さんじゃあるまいし!」
「いや〜、されてるのはわかってるんだけど、マーガレッタさん1人で楽しんでるから、みんなで
楽しもうかと」
酷いやトリス、とかぶつぶつ呟いているが、アルマイアとトリスは衝立の裏でごそごそと準備を
始める。

「皆様、お待たせしました!イレンドくんのファッションショー!最初はアコライト女の子
バージョンです!」
トリスの声が響くと、顔を真っ赤にしたイレンドがおずおずと姿を見せる。
おおおおおおおおおお!
中身男なのに男たちは歓声を上げる。
真っ赤に染まって視線をそらし、もじもじする姿はなんとも可愛らしい。しかも何故か内股っぽい。
ラウレルとカヴァクは歓声を上げながら口笛でちゃかし、セイレンは何かを悟ったような爽やかな
笑みでちょっと目が泳いでいる。
エレメスはというと、拙者には姫が姫がと呟きながら頭を壁にがんがん叩きつけている。

「第二弾!プリーストバージョン!」
「な・・・・・・!?本当にイレンド殿でござるか!?」
ウィッグをつけて、胸パット入れて、スリットから除く足には脛毛の1本すらない。
「こ・・・・・・これはマガレを超えたかも・・・・・・?」
本人に聞かれたら撲殺されるような台詞がつい口から出るセイレン。
「ラウレル、カヴァク。何ですかその呆けた顔は」
「はっ・・・・・・いや、アレの破壊力は姉ちゃんの氷雷コンボに匹敵すると・・・・・・」
「ぶち切れ姉さんの矢を食らったかのようにハートにズキュゥゥンだ・・・・・・」
女性陣よりイレンドに高い評価を下す男性陣に、アルマイアは口元がひくひく引きつっていたり
する。
ちなみにトリスはエレメスの反応を見て嫉妬するかと思えば、むしろ楽しんでいる様子。
ああ、あれは今度どんなネタでからかってやろうかと思ってる顔だ、とアルマイアは感づく。

「第三弾!女アーチャー!」
ほう、という溜息が4人の男から漏れる。
ミニスカワンピで弓を持って登場。カヴァクがその矢で貫いてくれとほざくが、ラウレルが
スリッパで彼の頭に突っ込みを入れる。
比較的普通の雰囲気なので、みな穏やかに楽しんでいるようだ。

「それでは第四弾!ハンターです!」
うおぉぉぉぉ!?
4人の歓声がひときわ大きくなる。胸を強調した衣装(パットだが)にへそ出し、ふともも
もろだしスパッツとに誰もが目を見開いて凝視するほどの破壊力である。
「ト、トリス、これ強力すぎ!」
「あ、あたしもうダメ・・・・・・鼻血出そう・・・・・・」
「2人とも・・・・・・人にこんな格好させておいてそれは・・・・・・泣くよ?」

第五弾、第六弾の剣士、商人は清楚で可憐というありがたい評価をいただいたイレンドくん。
ちなみにアルマイアはそんな評価貰ったことなど一度も無い。
この場にいないセニアも兄にそこまで褒められてないので、この差に愕然とするアルマイアと
トリスであった。

「第七弾!シーフでございます!」
「おお・・・・・・ハンターほどではないがこれもなかなか・・・・・・」
「イレンド殿の可憐さでシーフ服だとミスマッチでござるが・・・・・・かえってそれがいい・・・・・・」
2階男子は特に反応しないので、この2人の感性がぶっとんでいるんだろうか、とトリスは感じて
いたりする。
ラウレルとカヴァクは段々見慣れてきたので、というのもあるが、ロリなセイレンと、トリスを
妹と見ているエレメスには違って見えるのであった。
(こんなんで3階って大丈夫なのかしら・・・・・・)
トリスの不安ももっともであるが、それ以上にぶっとんでいるマーガレッタやハワードがいるので
無用な心配ともいえる。

「さて!本日のメインイベント!イレンドくんマジシャンバージョン!」
「ぐはっ!?」
「ぶっ!?」
「むおぉ!?」
「はぅっ!?」
下着と見間違えるほどの上半身と、前後に布をたらしただけの下半身、そしてふとももは剥き出し
である。
吐血するセイレンに、茶を噴出すエレメス、鼻血を出すラウレルに急に前かがみになるカヴァク。
「ひぃ!?」
怯えて体をすくめるイレンドに反応して、4人の男たちはあまりの興奮に失神してしまった。
「・・・・・・し、失礼だなぁ。ねえ、アルマ、トリス?」
とイレンドが振り向いた先に見たものは・・・・・・
顔を真っ赤にしてへたりこんでスカートの上から両手で股間を抑えるアルマイアと、4つんばいに
なって首をとんとんと叩いて鼻に手を当て、鼻血を抑えるトリスの姿があったということである。

「ところでセニアの罰ゲームってなんだったの?」
イレンドはセニアがこのファッションショーにいなかったのを疑問に思っていた。
「・・・・・・セニアの罰ゲームは、この間自分の作った料理を完食すること」
あさっての方を向いてアルマイアが呟く。
「セ、セニアー!?」
慌ててセニアの部屋に救急箱を持って駆け込むイレンドであった。
それをみて、
(ナース服も似合いそうね)
と同時に考えていた女2人でありましたとさ。

「あ」
「どうしたの?トリス?」
「マジシャン服でブレイクしちゃったんでウィザード服試せなかった・・・・・・」


アルマ分補給・・・・・・とみせかけてイレンド分補給。
ありきたりなネタですが、一度はやってみたかったイレンドくんファッションショー。
女性陣から見ると、男の中だとイレンドとラウレルが弄りやすそうですね。
カヴァクはどうも冷静にボケるイメージがあるので、みんなにハリセン持たせて突っ込ませたいです。
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