「もぐもぐ」/うれしい
「・・・・・・うまいか?」
「うん・・・初めて食べる」
「そうか」
プロンテラの大通りをハワードとカトリーヌが歩いていた
カトリーヌは右手にパンをもって左手はハワードと手をつないでいた。
『これだけ人が多いと・・・迷子になっちゃうから』
という理由で手をつないでいる。
どうせだからカートに乗ったらどうだとハワードは提案したのだが
不機嫌な顔をされてオーラをふかれたので
恥ずかしさ満点ではあるがこうして手をつないでいる
「・・・・・・食べてみる?」
「ん?ああ、そんじゃ」
カトリーヌが自分の食べ物を他人あげるとはめずらしい
そんなことを考えながらつないでない方の手を出した・・・のだが
「あ〜ん」
「・・・・・・」
カトリーヌはそれを無視してパンをハワードの口の前に持ってきた
「あ〜ん」
「えっと・・・カトリ?」
「あ〜ん」
「あの・・・」
「はやくして・・・背伸びして・・・腕伸ばしてるの・・・疲れる」
ならそのパンだけ俺に貸してくれ
とは今のハワードには死んでもいえない
「はい・・・あ〜ん」
「・・・・・・あ〜ん・・・・・・もぐもぐ」
「・・・ね?・・・おいしいでしょ?」
「・・・・・・おう、うまいなこれ」
実のところ恥ずかしさで味なんてちっともわかってなかったのだが、
カトリーヌがうれしそうな笑顔で聞いてくるのでそう答えるしかなかった
「あ・・・・・・」
「ん?どうした?」
「・・・・・・かがんで?」
「は?」
「・・・かがんで?」
「なんでだ?」
「かがんで?」
「いや、だからなn」
「いいからかがんで?」
「・・・・・・はい」
結局カトリーヌの気迫に押し切られてかがむ
とはいえカトリーヌが手はつないだまま離そうとしないので
中途半端なかがみ具合になってしまった
具体的に言うとカトリーヌが背伸びして視線が同じになるくらい
「んで、なに?」
「・・・・・・・・・・・・ (////」
「ん?何真っ赤になってんだ、おm(ぺロリ)・・・・・・!?」
「口の横・・・・・・ソース・・・ついてた・・・・・・(////」
「お、おう・・・・・・さんきゅーな」
「どういたしまして」
二人とも顔を真っ赤にして
ハワードは状況がよくわかってないながら礼を言い
カトリーヌは普段はあまり見せることない笑みを浮かべて返した
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ねぇ、ハワード」
「は、はひ!?」
「やる前より・・・・・・やった後の方が・・・・・・はずかしいね」
「・・・・・・だったらすんなよ」
「だって・・・・・・やってみたかったんだもん」
「・・・・・・」
「・・・・・・つぎ・・・・・・いこ?」
「・・・・・・おう」
今日は、いやこれから二週間はもうカトリーヌの言うとおりにしよう
ハワードはそう心に決めて再びカトリーヌと歩き始めた。



「・・・・・・おもしろかった」
「そうだな・・・・・・安い鉱石とかめずらしい食い物とか結構あったな」
「うん・・・これで…みんなの武器・・・直すのも・・・作るのも・・・大丈夫」
「おう、ついでに飯のレパートリー増えたしな」
「・・・・・・デート成功」
「・・・そうだな」
色々と唐突だったけれど結果だけを見ればこの『デート』は成功だった
ハワードがドキドキで寿命が減ったかもしれないということ以外は
「で、これからどうする?」
「ん・・・あと2時間あるけど・・・みんな心配してるかもしれないし・・・」
「だな・・・荷物だけ帰って本人たちは帰ってきてないんだからな」
「うん・・・これ食べたら帰る・・・でも」
「ん?」
「ゆっくり食べる」
「・・・そか」
「ぱぱとまま〜〜!!」
二人が会話を終えて、カトリーヌが菓子パンを食べるのを再開しようとしとき
カトリーヌに走ってきながら抱きついてきた少女がいた。
「・・・・・・まま?」
「・・・・・・ぱぱ?」
ハワードとカトリーヌがお互いを見合わせながら確認をしてみる
「・・・身に覚えないんだが」
「・・・わたしも」
「?・・・・・・パパとママじゃなかった・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
カトリーヌの顔を見て自分の母親でないとわかった少女は素直に謝りカトリーヌから離れた
「・・・・・・パパとママと・・・はぐれちゃったの?」
「うん・・・・・・」
「・・・パパとママは・・・わたしたちと同じ格好してるの?」
「うん・・・・・・」
「そっか・・・ねえ・・・ハワード」
「ん?」
「この子のパパとママ・・・・・・探してあげよっか?」
「・・・・・・了解」
「わたしはカトリーヌ・・・カトリでいい・・・こっちはハワード」
「カトリお姉ちゃんとハワードお兄ちゃん?」
「おう、俺らがパパとママさがしてやるからな」
「ほんと!?」
「うん、ほんと・・・あなたの名前は?」
「メルフィナ。パパとママはメルフィって呼んでる」
「よし、メルフィ!俺が肩車してやるからそれでパパとママ探せ」
「目立つようにメルフィの回りにサイト炊いておくね」
「うん、ありがとう。ハワードお兄ちゃん、カトリお姉ちゃん」


「わたしたちで・・・・・・よかった」
「ん?なにがだ?
「セイレンとマガレだったら・・・・・・誘拐事件が起こってた」
「・・・・・・」
「どうしたの?ハワードお兄ちゃん、カトリお姉ちゃん?」
「な、なんでもないぞ?」
「うん・・・メルフィ」
「うん?」
「パパとママが見つかるまでは・・・あなたを守ってあげるからね?」
「?」


「見つからないな・・・」
「だね・・・」
「・・・・・・」
探し出して1時間。
「子供放っておいて帰っちまったとか?」
「そんなことする・・・・・・親はいないよ」
「パパぁ・・・・・・ママぁ・・・・・・」
「時間もあと少ししかねえのに」
「・・・・・・アイリ」
「うん?」
「アイリはいつも・・・・・・どこにいることが多い?」
「んと・・・・・・お家はゲフェンだから・・・・・プロンテラにいることも少ないから・・・・・」
「・・・・・・そっか」
「あ、でも」
「でも?」
「友達が大聖堂にいるから、大聖堂にはよく行ってるかも・・・・・・」
「んなら大聖堂だな。最悪シスターに預ければどうにかなるだろう」
「そだね・・・・・・なら大聖堂にいこっか」


「メイルフィ、パパとママいる?」
「・・・・・・いない」
「だー、もう・・・・・・仕方ねえ。シスターに預けてくるぜ」
「うん・・・・・・ごめんね、メルフィ」
「ううん・・・迷子になっちゃったわたしが悪いから・・・・・・あっ!!」
「どうした?メルフィ・・・っと!?」
ハワードが聞く前にメルフィはハワードの肩から飛び降りて走り出していた。
その先にはホワイトスミスの男性とハイウィザードの女性がいた。
「ふぅ、最後の最後で見つかったな」
「うん・・・・・・よかった」
二人が眺めているとメルフィが両親を連れてこちらに戻ってきた。
両親に深々と頭を下げられ礼を言われた。
「本当はもっとちゃんとしたお礼がしたいんですが・・・・・・」
「すみません、俺たちもこれから用事があるので」
「・・・そろそろ・・・行かなくちゃダメなので」
「そうですか・・・・・・では、せめてこれを受け取ってください」
そういってWSの男性は青箱を二つ出した
「製造業と精練業を生業にしているのですが・・・同じWS相手ではそれもあれですからね」
「はは・・・たしかに。それではこれはありがたく頂戴いたします」
「・・・・・・ありがとうございます」
そう言って二人は受け取るとすぐに箱を開けた。
「お?」
「ん?」
二人そろって出てきたのは未鑑定アクセサリー
ハワードがそれを鑑定するとそれはダイヤの指輪だった。
「パパとママがつけてるのと似てるね」
それはそうだろう。この世界でダイヤの指輪の意味といえばエンゲージリングのほかに無い。
メルフィの言葉を聞き、ハワードとカトリーヌは顔を赤くしながら苦笑いを浮かべるしかなかった。


「ハワードお兄ちゃん!カトリお姉ちゃん!またねー!!」
夏日がほぼ沈んだ夕焼けの中をメルフィ達の家族が帰っていく。
おそらくカプラかWPで帰るのであろう、南広場の方ヘ向かっていった。
「またね・・・・・か」
「・・・・・・研究所以外でなら・・・・・・会いたい・・・かな」
「・・・・・・そうだな」
自分たちがこの先どれだけあの研究所に閉じ込められているかはわからない
もしかしたら明日にでも脱出できるかもしれないし、そんな日は永遠に来ないかもしれない。
仮に永遠にこなかったとしても、あの家族たちが研究所に来ることは勘弁して欲しかった。
「・・・・・・子供・・・・・・ほしいな」
「はっ!?」
「・・・・・・でも・・・・・・今のわたしたちじゃ・・・・・・無理だよね」
「・・・・・・」
ほとんど覚えていないがかすかにある記憶。
霧がかかったその向こうにほんのわずかだけ見える昔の自分たち。
少なくとも今の自分たちは『人間』ではない。
クローン、強化人間、人造人間
まともないいかたが出来ないがいまの自分たちはそういう存在だ。
なにより今の研究所を守るためには子供を作ることなど不可能だ。
「オリジナルたちは・・・・・・どうなったのかな?」
「・・・・・・さあな」
もしかしたら逃げ延びて今は幸せに生きているのかもしれないし、
研究所が今のようになった原因のときに死んでしまったのかもしれない。
「それでもよ」
「?」
「いつか『自由』になったら、そういうことも考えていいんじゃねえか?」
「・・・・・・そう・・・・・・だね」
真っ赤に染まった空の下、その赤が写った大聖堂の前で
二人はそんな話しをしていた。
すでに6時50分。二人っきりのデートも残り少ない。
そんなことを考えながらカトリーヌはハワードの手をとった。
「・・・・・・?カトリ?」
「・・・・・・」
なにかを決心したように息を吸い、見上げなければならないほど高い位置にある
ハワードの顔をみてカトリーヌは言葉をつなげた
「わたし、カトリーヌ=ケイロンは死が己が命を蝕むまで、
 ハワード=アルトアイゼンを愛することを誓います」
「!?」
ハワードは驚いた顔でカトリーヌを見た。
その顔は夕焼けの赤に負けないほど真っ赤で今にも泣き出しそうな顔だった。
「・・・・・・ただの・・・わたしの決意・・・・・かな?ハワードを・・・・・・縛るつもりは・・・・・・
 ちっとも無いよ・・・・・・ただ・・・・・・知って欲しかっただけ・・・・・・だから」
「・・・・・・女にここまでされてなにもなしじゃ男が廃るってもんだ」
そう言ってハワードはカトリーヌが持っていた指輪を取り先ほどのカトリーヌと同じく、
決心したように息を吸いカトリーヌの肩に手を置き、カトリーヌの目を見ながら言葉を繋げた
「わたし、ハワード=アルトアイゼンは死が二人を分かつまで、
 カトリーヌ=ケイロンを愛することを誓います」
そう言ってハワードはカトリーヌの左手の薬指に先ほど出てきたダイヤの指輪をはめた。
そして自分の箱から出てきた指輪をカトリーヌに手渡した
「・・・・・・ありがとう」
照れくさそうに笑いながらカトリーヌもまたハワードの左手の薬指に指輪を通した。
「・・・・・・」
「・・・・・・あとは・・・・・くちづk」
カトリーヌが言い終わる前にハワードがその大きな体をかがめてゆっくりと口付けた。
これほどハワードが積極的に動いてくれるとは想像してなかったので驚いたが、
それもほんの一瞬。あとはもうハワードに身を任せた
「・・・・・・本番前の練習くらいにはなったろ?」
「・・・・・・十分」
「・・・・・・帰るか」
「・・・・・うん」
そう言って二人は『まーがれった』によって発動したWPにのって研究所に帰った




「・・・・・・なんの騒ぎだ?」
「・・・・・・今日って・・・・・なにかあるの?」
帰ってきた二人を待ち構えていたのはたいそう豪勢な料理と仲間や妹たちによるクラッカー音だった
赤飯、タイの尾頭付き、紅白饅頭etc・・・・・・
「だって、今日はわたしたちの仲間が結婚を約束した記念日ですもの^^」
「指輪交換までしたんだから、もう夫婦扱いで良いんじゃないか?」
「そうでござるな。大聖堂の前であれだけやれば十分でござるな」
「どうせだからマガレが牧師のかわりやって結婚式あげちゃう?」
「くそ・・・・・・姉ちゃんがあんなホモ野郎に・・・・・!!」
「う〜・・・・・・お兄ちゃんがあんな大食い無口女に・・・・・!!」
「「いいな〜・・・・・・わたしもいつか(兄上/兄貴)と・・・・・・」」
「エベシ。この後の自体を予測して緊急脱出用のWPを開くって言うのはどうだろう?」
「奇遇だね、カヴァク。ぼくもそれ考えてた」
10人の仲間や妹たちが好き勝手言っているのを聞いて
ハワードとカトリーヌの二人は顔を真っ赤にしてオーラをふいている
「お前ら・・・・・・最後にひとつ聞いておきたいことがある」
「どうやって・・・・・・わたしたちの・・・・・・様子知ってたの?」
「あら?言ってませんでしたっけ?その『まーがれった』には音声と映像を
 魔力の供給主であるわたしに伝えることが出来ますのよ?」
「ちなみに私たちはマガレから面白い話をしてやると聞いただけでそのことは知らなかったんだ!!」
「うむ、つまり詳しいことを全て知っているのは姫だけということでござるな」
「まあ、マガレのことだから途中で情報の改ざんがあるだろうとは思ってたけど・・・無かったみたいね」
「くそぅ!!姉ちゃんが!姉ちゃんが!!」
「うぅ〜!!お兄ちゃんが!お兄ちゃんが!!」
「「血はつながってないんだからわたしと(兄上/兄貴)だっていけるよね・・・・・・」」
「とりあえず2F・・・いや、1Fでほとぼりが収まるまで逃げてようか?」
「そうだね、死にたくないし」
皆色々言いながら自衛手段を着々と作り上げていく。
もっともオーラをふいた彼らの前でそれがどれだけいみを為すかはわからないが
「アドレナリンラッシュ!!ウェポンパーフェクション!!オーバートラストマックス!!」
「其はすべてを凍てつかせし者・・・・・・」
「「「「「「「「それじゃあ!!」」」」」」」」
「逃がすかぁ!!HF!!」
「ストームガスト!!」


次の日、研究所を訪れた冒険者の話
「わたしが着いたときにはすでにこうなってました。研究所内のいたるとこが凍っていて
 ハンマーのようなもので殴られたような後があちこちについていたんです。
 その日あちこち探してみたんですが結局DOPどころか、ウィレスさえ見つかりませんでした」



おまけ

「ちょwハワードwwwおぬしはカトリ殿と愛の誓いを交わしたのでなかったでござるか!?」
「おう、だからカトリが大切にとっておいたおやつを食っちまったお前にはおしおきが必要だよな?」
「ちょwwwカトリ殿!!おぬし旦那がほかの男と交わるのを放っておいていいのでござるか!?」
「大丈夫・・・ハワードが・・・本気で愛してくれてるのは・・・わたしだけだから・・・」
「そういうわけだ。さあ!しばらくご無沙汰で寂しかったろう!?存分にサービスしてやるからな!!」
「ちょwwwそんなサービスはいらn・・・・・・アッー!!」

「・・・・・・でも・・・やっぱり・・・・・・ちょっと・・・くやしいから・・・今日の夜は・・・寝かせない」
「ガクガクブルブル( ( ( ( ; ゚ Д ゚ ) ) ) )ガクガクブルブル」
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