「結局ここしかねえ……」
ラウレルは苦りきった表情でその場所の前にいた。
ドアに掲げられたプレートにはこう記されている。
”研究記録保管室”と。

事の始まりは彼と最も仲のいい友人のカヴァクが実は女だったと
発覚した事から始まった。最初は混乱もあり、まともな
思考もできずにいたが、状況が落ち着いてから考えてみたら
おかしい話だったのだ。

ラウレルとカヴァクは風呂入った時にナニのでかさで勝負したり、
連れションに行ったりだの普通の男子的生活をしていた仲だ。正直な話

「どう考えてもカヴァクが女なんてありえねーってば」

となるのは自然な流れだった。それで、イレンドに
「お前ら実は俺をドッキリカメラ仕掛けてんじゃねえのか?」
と、カマをかけてみたが
「うーん……それは断じて違うよ。でもさ、ラウレル以外は
みんな知ってたよ?だからラウレルも知ってるんだと思ってたんだけど」
「いや、残念ながら知らん。むしろカヴァクが男だと確信する確信しか無い」
「……そっか。じゃあカヴァク本人に聞くか自分で調べるべきじゃないかな。
カヴァクが話してないんじゃ僕から言える事は無いよ」
言外に、ラウレル以上にカヴァクの事情を知っていると匂わせる
イレンドの態度にラウレルは何故か腹が立った。
「わーったよ。自分で調べるっての」
キレる5秒前といった感じでラウレルは去った。

そして、彼は研究記録保管室前に至った。
「あーうざってえ。さっさと済ませっか」
うんざりする程大量の資料の中から彼はようやくカヴァクの
記録を見つけた。そして、閲覧する。

まず、どのような経緯で彼がここに連れてこられたかが
記してあったが、読み飛ばす。その辺はどうせ自分や姉と
さほど変わりないだろうし、どうでもいい。

そして、強化記録という項目を読んだ。。


 カヴァク=イカルスは優秀な素体である。
アーチャー強化実験において、他の素体が
耐え切れずに終わった多くの実験をクリアした。
だが、ここに至って問題が発生した。
スナイパーに関しては、セシル=ディモンという
完成形がいるため、バード系のアプローチを
するという事はすんなり決まった。
そこまではとんとん拍子に決まったのだが、
ダンサー系強化を担当していた班も
カヴァク=イカルスを実験に使いたいと
申し出たのだ。既に性別反転実験は完成の域にあり、
その成果を利用すれば不可能という訳ではない。
無論、バード班が
譲る筈も無く、泥沼の言い争いが始まった。
しかし、他の班の研究員が更にとんでもない
折衷案を出してしまった。

男にクラウンやらせて女にジプシーやらせりゃいいだろ?

彼が提案したのは、まだ試作段階だった
両性保持実験と合わせてカヴァク=イカルスを
強化し、バードもジプシーもやらせてしまえという
非常に冒険度の高い物だった。
無論、議論は荒れに荒れた。だが、
カヴァク=イカルスならあるいは と述べた
研究者に賛同する者が思った以上に多く、
2つの実験を同時に行う事となった。

「…………なんじゃこりゃ」
それ以上読む気になれなかったので、元の位置に
資料を戻したが、実験が成功したというのは確かなのだろう。
つまり、カヴァクは男でもあり、同時に女でもある。

「つーか、何で俺だけ知らなかったんだよ」
そう考えると、何故か苛々する。
「正直言うと、怖かったからなんだな」
何時の間にか、カヴァクが後ろにいた。
「はぁ?何だそりゃ?」
何時もなら、
「テメエ!いきなり後ろに立つんじゃねえよ!!俺がアサだったらぶっ殺してるぞコラ!!」
とか言うところだが、そんな気分では無かった。
「ラウレルとはさ、そりゃあもう色々話しただろ?
巨乳について熱く語り合ったり とかさ。もし、俺が女だなんて
判ったらそういう事できなくなるのかなー とか考えたら
言えなかったんだよ」
「そんな事……」
無い とは言えない。
「まあ、そんなこんなで隠し通す予定だったんだけど、我慢できなくなったというか……」
更に判らない。我慢とは一体何だ?
「ぶっちゃけ、ラウレルにも俺が女でもあるという事を知って欲しかった」
「な!?何言ってやがるテメエ!!」
思いっきり慌てるラウレルを見て、カヴァクはくすくす笑い始めた。
「おや?何を慌ててるんだラウレル?俺は単に一番仲の良い友人である
お前に秘密を持ちたくなかったってだけなんだけどなあ?」
「……テメエ、俺をからかって遊んでやがるな?」
「勿論」
真顔で言うカヴァクに、ラウレルは迷う事無くソウルストライクをぶっ放した。

ブチキレソウルストライク乱射で吹き飛ばされながら、カヴァクは思った。
(素直じゃないよねえ。俺もさ)






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