「いかんでござる!緊急警報鳴らすでござるよ!」
「おう、緊急警報だ!」

研究所内に響き渡るサイレン。
このサイレンの意味は「最高レベルでの警戒態勢」である。

「くっ・・・できれば事を穏便に収めたかったが、奴が相手では手加減できねぇ!」
「姫!支援頼むでござる!」
「了解!」
次々にかけられていく支援魔法。これで彼らはいつも以上の力を発揮できる。
しかしそれでも標的を仕留められるかは連携にかかっている。
「カトリ、セシル!援護射撃を頼まぁ!」
後方射撃の2人から力強い返事が返ってくる。

「被害状況はどうなってるでござるか・・・?」
標的がこのルートを通ってくるのはわかっているため、待ち伏せしながらエレメスが
マーガレッタに尋ねてみる。
「被害にあったのはセニアとアルマイアですわ・・・なんて痛ましい・・・」
「ゆるせねぇな・・・絶対に仕留める!」
「ハワード殿、後方射撃で隙を作ってもらうゆえ、前衛はお任せするでござる。
拙者はハワード殿が抑えていてくれる間に、ソニックブローで一撃で仕留めてみせる
でござるよ」
正直ここまでの連携をしても標的を倒せるとは限らない。
だが、彼らにとって恐らくこれが最高の作戦であると思えた。

「む!来たでござるよ!気配があの角から!」
「みんないくぜぇ・・・」
セシルが弓をひき、カトリーヌが詠唱をはじめ、マーガレッタはレックスエーテルナの
用意をする。
「3・・・2・・・1・・・GO!」
エレメスの合図に従い、ハワードは前方にダッシュをかける。
敵の怒号が聞こえてくる。

「ノ〜〜〜ビ〜〜〜た〜〜〜ん!!!!」
敵は恐らく考えられるであろう最強の敵、爆裂セイレン=ウィンザーである。

勝負は一瞬だった。
カトリーヌがストームガストを展開、大ダメージを受けながらも構わず突っ込んでくる
セイレンに、セシルが足止め兼ダメージ目的の高速連射。
ハワードが全力でメマーナイトを叩き込み、潜んでいたエレメスが姿を現し、機を
狙っていたマーガレッタのレックスエーテルナに合わせてソニックブロウを叩き込む。
「やったか!?」
エレメスの攻撃の直後に、駄目押しのメマーナイトを叩き込んでハワードが吼える。

「・・・ユピテルサンダー」
「ダブルストレイフィング!」
さらに追撃の雷と、いつの間にやらぶち切れしていたセシルが弓の神技を見せる。
それによって、技術も何もかも捨てて闘争本能だけで走り回っていたセイレンは
何とか沈んだ。
時間にして10秒もたっていないが、それぞれのタイミングが少しでも狂っていたら
あえなく突破されてさらに犠牲が広がったであろう。

「きちんと罠で止められたら楽なのにねー・・・毎度毎度無理やり踏み越えてきて・・・」
セシルが愚痴を言うが、こればかりはセイレンの底力を褒めるしかないと言えた。
わずかながらでも突進力を減衰させているのだから、まんざら意味が無いわけでもない。

この騒動は、セイレンの個人的趣味に端を発する。
彼は1週間のうちに、1度もノービスの侵入者を見ないと抑圧された欲望が暴発するのだ。
要するに性欲の権化になる。
この恐ろしさはエレメスがマーガレッタに飛び込むときの比ではなく、研究所全体が
崩壊の危機に訪れる。
それがほぼ週1のペースで起こるのだからはた迷惑な話である。
そしてノービス禁断症状が出たセイレンは、比較的ノービスに近い少女、つまり2階の
女子を襲うのである。

「アァァルマイアァァァア!!無事かぁぁぁあ!?」
バタン、と盛大に被害者控え室に飛び込んできたハワード。
ハワードの見たものは、放心状態のセニアと、トリスの胸に顔を埋めて泣きじゃくる
アルマイアだった。
「ま、まさか本当に・・・?」
頑健で知られるハワードの膝ががくがくと揺れ、意識が覚束なくなる。
「うぅ・・・トリスぅ・・・私・・・私・・・うわぁぁぁぁん!!」
「ああ・・・よしよし・・・もう大丈夫だから、ね?大丈夫、もう安全だから・・・」
こんなに親身に心配しているトリスも珍しい。
意識の覚醒を果たしたハワードは、3人の着衣が乱れていることに気がついた。
「あぁぁぁぁんのやろぉぉぉお!!今度という今度は思い知らせてやる!!」
今度はセイレン監禁室に向けてダッシュで出て行くハワード。

入れ違いで入ってきたのはマーガレッタとエレメスだ。
「やれやれでござるよ・・・で、アルマイア殿の様子はどうでござる?」
誰もセニアの心配をしないのは、セニアならセイレンに襲われるのは本望だと思って
いるからである。
「なんとかアルマの貞操は死守したんだけどね・・・服びりびりに破かれちゃって
それがショックらしくてさっきから泣き止まないのよ・・・」
「あらら・・・それは無理もありませんわ・・・」
心底同情したようにマーガレッタ。
「トリスは大丈夫でござったか?」
「あー、あたしはあんまり狙われないからねー・・・アルマを庇いに行ったときに
怪我したけど、それはイレンドが応急手当してくれたから・・・」
話の途中で何も言わずマーガレッタがそばに駆け寄り、トリスに癒しの奇跡をかけ続けて
いる。トリスは平気そうにしているが、実際はかなりの深手だったようだ。
セイレンはノービスに近い少女を狙うため、3人の中では大人びた容姿のトリスは後回しに
される。
真っ先に狙われるのはセニアとアルマイアである。
それはつまり、3人一緒にいるときのトリスは、爆裂セイレンからすると排除する敵と
みなされるのだ。

それは流石にぞっとしないな、と3階メンバーですら腰が引ける状況にも関わらず、
トリスは親友を守るために身を挺したのだ。
むしろ生きてるのが幸運というべきであった。彼女の持つ短剣が加護を与えたのだろうか。
「まあ、なんにしても2人ともぎりぎりであったが無事で何よりでござるよ」
マーガレッタも疲れた表情で頷くしかなかった。

「こぉぉぉのボケナスがぁぁぁぁ!!」
拘束されたセイレンにハワードとセシルの拳がクリーンヒットする。
「毎度の事ながらすまん・・・」
正気を取り戻したセイレンは恥と後悔で穴があったら入りたい、と言って抜けたあたり、
本当に反省しているのかというと疑問だったりもする。
「よぉ・・・セイレン?よくもうちの妹に傷をつけてくれたな?どう落とし前つけて
くれるんだ?ああ!?」
「ア、アルマイアに俺が!?」
顔面蒼白になったセイレンだが、それと対照的にハワードとセシルは真っ赤になっている。
「とは言ったものの、お前が本気で反省するとは思えねぇ・・・どうせ来週にはまた
暴れるんだろうが?」
言葉に詰まるセイレンにセシルは、
「いい加減死んじゃう?毎度毎度あたしたちも死の危険にさらされてるんだけど?」
「重ね重ねすまん・・・」
「じゃあ罰はあとでみんなで決めるとして・・・しばらく縛って転がしておくわよ?」

「・・・ということが毎度のことで繰り広げられているので、僕は転職はモンク、そして
チャンプを目指すことにしますよ」
「なんだ?意味わかんねぇよイレンド」
「つまりは阿修羅でセイレンさんを止めるといいたいんだな?」
「そういうことです。小回りは効きませんが、セイレンさんを止めるという目的ならば、
みんな僕のサポートに回ってくれるでしょう?」
ラウレルもカヴァクもそれには全面的に支援すると約束し、3人は熱い握手をかわすので
あった。

その後、しばらくの間、新聞紙を丸めた剣を持ち、でかでかと「俺はロリペド野郎です。
近づかないでください」と書かれたダンボールを鎧にしたロードナイトが徘徊していたとか
いないとか。


セイレン萌えの方、ごめん、ほんっとごめん
爆裂セイレンの真実、という話
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