「お兄ちゃん」
「・・・・・・んあ」
「重い」
「・・・・すまん」
鍛冶師と商人の兄妹が研究所内を進んでいく。
ただひとつおかしな所は
ハワードが妹、アルマイアのカートに『放り込まれて』いる。
現状を説明すると二人は部屋に、もっと言うとアルマはハワードを部屋に連れて帰る途中である。
ならなぜハワードはアルマのカートに、まるで商品のように『放り込まれて』いるのか?
答えは簡単。ハワードはぶっ倒れたのである。

ことの経緯を説明すると、
一週間に一度だけ、彼らは骨休めとして
いつもはあまり飲まない酒を飲んだり、いつもよりも少し豪華な食事をしたりする。
これはいつものことだ。別にどうということは無い。
ただ今日に限っては問題があった。
生体研究所のキッチンを預かっているハワードの調子が悪かった。
ただそれは前々日ほどから続いていたが、ハワードは無理を押して
いつもの仕事、研究所内の見回りを続けた。
そして時間になり、いつものように少し豪華な食事をして、お酒を飲んだ。
この、『お酒を飲んだ』というところが少々、いやかなりまずかった。
体調不良を押して見回りを続け、挙句12人分『以上』の食事をハワードは作った。
もちろん作ったのはハワード一人ではないが、量におけるハワードの負担は一番多かった。
ちなみに、ほかの皆は『今日は良いから休め』と体調不良が見て取れるようになってからだが
ずっと言い続けてきたのだが、ハワードはその助言を受けず最後までやり遂げてしまった。
それでもハワードは、体調不良と疲労だけで倒れるようなヤワな漢ではない。
ならなぜ今こうなっているのかというと・・・・・・




いつもより少し豪華(つまりは手が込んでいる)料理を作り終え、
皆で食事を始めてからおよそ1時間。
いつもはあまり飲むことも無い酒を飲んでいい具合によいが回り始めたところである。
「ハワード、大丈夫なのか?お前体調崩してるんだろ?」
「そうですわね、体調を崩したのがいつかは知りませんけどいつもより顔色が悪ですわね。」
「そうでゴザル。おかげでこの数日拙者は平和であったでゴザルが」
「無理・・・・よくない」
「もぉい〜から、しゃっしゃと、やしゅみなさぃょぉ〜」
皆アルコールが回ってきて言いたいことを言っている。
彼らが普段こういった気遣いの言葉をハワードにかけないのは
彼はこういった心配をされると、逆にがんばってしまう性格だからである。
普段は6人の中で二番目の下戸でありながら酒好きのセイレンが酒を控え
普段は6人の中で二番目の酒豪でほかの皆がよっている所を遊ぶマーガレッタが自分に目を配り
普段は彼から近寄ってくることはまず無いはずのエレメスが心配そうに近寄り
普段はほかのことには目もくれず料理と酒を食べ、飲み続けるカトリーヌがそれよりも自分を心配し
普段は開始5分で泥酔し寝てしまうセシルが机に伏せて半分寝ぼけてはいるが休めと気を使っている
そんな仲間たちの心配も今の彼、
『体調不良と見回りと料理の疲労で弱っている体に酒まで入った
 頑固職人なハワード=アルトアイゼン』には逆効果だった。
「っだいじょうぶだって言ってんだろー!!!」
そういって彼は一番手近にあった『ス○リタス』を手に取り
一気飲みした
「「「「「あっ」」」」」
5人の声がそろうが時既に遅し、度数96%の酒が入った500mlの瓶はどんどん中身が無くなっていく。
5秒後にはすでに空になっていた。
「っはーーー!!どうだ!?大丈夫だろう・・・・・・・が・・・・・・」
言い終わる前に倒れるハワードの巨体。
その後ろには冷たいアクリルの床・・・・・・ではなく、
枕が置かれた木のカートがあった。
「はぁ・・・・ごめんなさい〜」
ため息とともに間延びしたアルマの声が食堂内に響く。
その声にほっとし、皆アルマに「よくやった」「おるかれさま」とねぎらいの言葉をかける。
ハワードはというとうなりながらも意識はもっているようだった。
「ん〜、しょうがないから部屋に連れて行きますね〜」
そういってアルマはハワードが入ったカートと引いて食堂を後にした



「ついたよ〜」
「ぉ〜」
部屋に着いてハワードに声をかけるアルマだったが反応は薄かった。
体調不良、疲労困憊、スピ○タス一気による泥酔を考えれば仕方ないかもしれない。
「もぉ〜、しょうがないな〜」
そういってアルマはハワードをカートから取り出そうとして・・・・・・ふと止まった。
『もしかしてこのままやればわたしお兄ちゃんの下敷き?
 それは困るな〜・・・・・・。まずわたしが寝る準備したほうが良いのかな?
 でもそれだと、わたしが準備できるまでお兄ちゃんカートの中でこのままだし・・・。
 こういう時ってまず何すれば良いだろ?楽な姿勢にすれば良いんだっけ?
 それだったらこの窮屈そうなシャツとジーンズは脱がさなきゃダメだよね。
 ・・・いや、ていうか楽な姿勢にするんなら寝かせなきゃダメじゃん。
 少なくともカートの中に入れっぱなしはまずいよね・・・
 う〜ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
思考2秒、悩んで3秒、結論が出るまでに5秒。
10秒対策を考えてアルマが出した結論は
「『チャンジカート!露店開設用モード!!』」
アルマがそういうと先ほどまで木カートだったカート見る見るうちに、
屋台のような、ベッドのような今まで見た事ないような形のカートに変わった。



説明しよう!!『チャンジカート!露店開設用モード!!』とは!!
アルマがぶっちゃけ『露店するたびに商品並べるの面倒くさいから
チェンジカートで屋台っぽく出来るように改造しちゃえ☆』と
安易な考えの下生まれたアルマ専用スキルである!!
 /|| <今回の場合のように使いようによってはベッドとして使うことも出来るのだ!!
( ゚Д゚)<ローグスレから出張ですね。モヒ毛様。



「よし、とりあえず姿勢はこれで良いよね。つぎは・・・・うん、ついでに体拭いてあげよう。」
そういってアルマはハワードの服を脱がし始めた。
「・・・・・・んしょ、次はジーンズだね・・・・・・んしょっ!!」

―以下自主規制。アルマの声でお伝えいたしますのでご了承ください。―


「んしょんしょ・・・・・・背中の方拭けない・・・・・・んっしょ!!ん、これで拭ける。」
「はい、上半身おわり〜。次下半身〜。」
「よしっと・・・・・・やっぱりここも拭いたほうがいいよね。」
「・・・・うわぁ・・・・たってなくてもこれだけおっきいんだ。」
「ん・・・・・・ちょっと拭きにくいかも・・・・・・」
「でも、いつもこれがわたしの中入ってるのか〜・・・・女の子のからだってすごいな〜」
「いあ、よくかんがえたらわたしよりエルメスさんのがすg(ry」
「あ、濡れてきちゃった・・・・・・でもお兄ちゃんこんなだから我慢我慢」
「・・・・・・う〜、でもお兄ちゃんこんなだからがまn(ry」
「・・・・・・うぅ〜・・・・・・元気になったら絞りとってやるぅ」


「はい、おわり〜」
ハワードの体を拭き終わりアルマはバッグから1本のドリンクを取り出した。
ラベルには『アルマの栄養ドリンク 二日酔いにもどうぞ☆』と書いてある。
それはいつも大変な仕事をしている兄たちへのせめてものお礼として
自分で作って3回の冷蔵庫に届けているものだった。
もともと薬師を目指していたのでこういったものを作るのは造作も無い。
ここにきて、閉じ込められ、こうなってしまい、薬師になる夢は果たせなかったが
こうして微力ではあるがその知識と技術をいまの居場所のために役立てている。
「お兄ちゃん〜?これ飲める〜?」
「・・・・ん゛ー?」
「無理っぽいね」
鼻をつまんで流し込む、口移しなど無理矢理飲ませる方法もあるが
この状態の兄にそういうことをするのはさすがに気が引けた。
「しょうがない、打つか」
そういうとアルマは注射器と先ほどのものとは違う瓶を取り出し、
注射器でその瓶に入った液体を吸って、ぴゅっと空気が出たことを確認してから、
丁寧にハワードの腕にアルコールを染み込ませたガーゼで拭いた後注射した。
「さっきのやつのもっと濃いやつね。」
「ぉー」
聞いているのかいないのか、聞いていたとしても理解できているのかどうか
よくわからない返事が届いたのを確認して、アルマはシャワーを浴びにいった。

商人のゆったりとしたワンピースと、子供っぽいといわれ続けているが
ミッ○ィーがバックプリントされた下着を脱ぐ。
ちなみにアルマはブラジャーはしていない。というかする必要が無い。
アルマは背と比例するかのように胸のほうも成長が悪かった。
セシルと比べても遜色ないほどの胸は、セシルとアルマを除く4人は
普通以上、マーガレッタとカトリーヌにいたっては巨乳という単語以外に
言い用が無いほどのものであるため、セシルほどではないがコンプレックスであった。
背が低いからセシルほど貧乳が目立たないのと、斧を振り回す前衛職であることが
コンプレックスを軽くしている要因だった。
「さっさと浴びて出ようっと」
いつもは湯船にお湯をためてゆっくりつかるが
今のあの兄をほうってゆっくりする気分にはなれなかった。
「第一、お兄ちゃんといっしょに入るからいいだよね」
いつもは二人一緒に入る。女の子だけで大きなお風呂に入るときもあるが、
基本は兄と一緒に入る。
このハワードが一人入ってしまえばいっぱいになる湯船で
ハワードの腰の上にのって一緒に入る。
それがアルマがお風呂が好きな理由のひとつでもあった。
「とりあえず、ちゃんと洗っておこ」
そういってアルマはいつもとは違うお風呂を簡単に済ませた。

お風呂からでてクマのバックプリントと、ハワードが着なくなった着古したシャツを着て
寝る準備を整えてアルマは部屋に戻ってきた。
「わたしも寝るか〜」
「ぁ゛ー、あるま・・・・・・」
ベッドに行こうとしたところで兄に呼び止められた。
なんだろうと思って、兄のほうへ行ってみて兄の顔を覗き込むような体制になって問いかける。
「どしたの?お兄ちゃ・・・…ん!?」
言い終わる前に兄に抱き込まれた。
「いてくれ」
「!?」
いつもとは違う兄の声色。
いつもの豪快でいて、優しげな声とは違ったどちらかというと弱々しい声。
そんな兄がかわいくて、アルマは「しょうがないね〜」と笑ったあと、
兄にかけてある、兄の体格からしても少し大きめの毛布を自分と兄にかけて眠りに落ちた。



「ハワードのやつ、大丈夫だろうか?」
「どうでしょうね?最後のスピリ○ス一気で二日酔いは避けれないんじゃないかしら?」
「まあ、それは自業自得であるからしかたないでゴザルが・・・・・病と疲労はどうでゴザろうか?」
「きょうは・・・・・・ハワードおやすみ・・・・・・・?」
「でしょうね。まったく!一人欠くといろいろ支障が出るんだからはやめにやすみなさいよね!!」
翌日の朝、5人がハワードとアルマの部屋に向かっていく。
昨晩あれだけやったのだ。心配して部屋を訪れるのは当然だろう。
「でもアルマはどうしたんでしょう?」
「さぁ、でもハワードさんが風邪引いててうつされたとかじゃないでしょうか?」
「うそ、だったら2階も今日は5人体制!?」
「ああ!?マジかよ!!ったく仕事増えるかじゃねえかよ!!」
「まあ、でもどっちにしても今日はハワードさんの看病でアルマは動けないでしょ。」
後ろを2階の面々も続いて歩く。
あれでアルマは研究所内で医学薬学に一番詳しいからハワードの看病は適任だろう。

コンコンとセイレンが軽くノックをして返事が無いことを確認すると
セイレンはとびらを開けて・・・・・・固まった。
「?どうしましたの、セイレン?」
動きを止めたセイレンを不審におもったマーガレッタがセイレンに声をかける。
ほかの皆も同じようで首をかしげていると、セイレンが一歩引き、親指でクイっと部屋の中を指した。
「「「「?・・・・・・!?」」」」
セイレンに促されて3階のメンバーが部屋を覗き込み、先ほどのセイレン同様固まった。
2階の男3人は姉たち3人あいだから顔をのぞかしたり、
セニアとトリスはセイレンとエルメスに乗って同じく部屋をのぞきこみ
やはり兄たち動揺固まった。
10人の仲間たちが見たのはカート?の上でトランクス一枚でアルマを抱き込んで寝ているハワードと、
同じく兄と同じくカート?の上でクマがバックプリントされた下着とシャツを着て
気持ちよさそうに寝ているアルマだった。

その後ハワードはマーガレッタがLAをかけた上で
セイレンのBB、エレメスSB、カトリーヌのSG、セシルのDSで叩き起これ
アルマはとりあえずセニアとトリスのバッシュとDAで同じく叩き起こされた。



それ以後セイレンとエレメスのベッドにセニアとトリスがよく入りこんでくるようになったのは
また別の話
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