「うわあぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!」

生体研究所3Fに、叫び声がこだました。
最初に叫び声の源に駆けつけたのはハワードだった。
「どうした! 何があった!」
見ると、エレメスがガクガクブルブルと床に座り込んで震えている。
「エレメス、どうした!?」
エレメスは声を掛けられてはじめてハワードに気付き…
床を這うように進み、ハワードの後ろに隠れるようにしゃがみこむ。
その手は、ハワードのズボンをぎゅっと掴んでいた。
「おぉ、エレメス、ついにお前もその気になってくれたか♪
よし、今夜は特別サーヴィスだ♪ 寝かさないから覚悟しとけよ☆ミ」
だが、エレメスはそんな軽口(?)にも答えず、とある方向に指を向けた。
彼が指をさした先にいたもの…それは。
「…盗蟲?」
エレメスはハワードの問いに、ただただこくこくと首を縦に振るだけだった。
「どうしたお前、ただの雌盗蟲じゃないか…。こんなものが怖いのか?」
だが、エレメスはハワードの問いに答えることは出来なかった。
「…ったく、しょうがないな…よっと」
ハワードが軽く斧を一振り。それだけで、盗蟲は気持ちの悪い破砕音と
残骸を残し…その残骸も数秒でリノリウムの床に溶けて消えた。

「これでもう大丈夫だろ」
ハワードの言葉に、エレメスは長く息を吐く。
「…助かったでござるよ〜」
心底疲れきった声を上げるエレメスに、ハワードは
「お前ともあろうものが、盗蟲ごときにここまで骨抜きにされるとは…意外だな」
と、つい本音を漏らしてしまう。
ハワードから見たエレメスというのは、普段は女好きでおちゃらけてはいるが、
侵入者に対しては情け容赦なく、また彼が本当に本気になったときは冷酷な
暗殺マシーンと化し、冒険者を絶望と血の海に投げ込む…そんなイメージがあった。
空気のようにつかみ所がなく、しかし苦手なものなど一切無い。
そんな彼の二面性にハワードは惚れ込んでいたのだが。

「…恥ずかしい所を見せてしまったでござるなぁ」
エレメスはバツの悪そうに、少し上気した頬をポリポリとかいた。
「そんなに盗蟲がだめなのか?」
エレメスはうーんと唸り、話そうか迷った様子で…やがて意を決し、話し始める。
「…実は昔、かくかくしかじかな任務があったでござる。
任務は(中略)な経緯を得て、最後の詰めの段階に入ったでござるが。
拙者、奇襲作戦で敵陣の中をクローキングして待機してたでござるよ。
そのとき、雄の盗蟲が偶然飛んできて、拙者の…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 」
嫌な事を思い出したのか、少し顔色が悪くなるエルメス。
「まぁ、そのせいで任務は失敗に終わり…拙者は任務失敗による懲罰をうけ…
またその時の盗蟲の体を這う感触が忘れられず…それ以来蟲は苦手なのでござるよ…」

「…ふむ。まぁ、人間誰にでも苦手なものが一つや二つあるものさ。気にするな。」
ハワードの自分に気をつかってくれていると分かる言葉に甘え、エレメスは
「そうでござるが…出来ればこの事はみんなには内緒にして欲しいでござるよ」
とハワードに頼んだが…彼は自分がものすごい大声を上げていた事を失念していた。
「そうはいうけどなぁ…もう遅いぞ」
エレメスははっと後ろを振り返る。そこにはにやにやと笑いをこらえた
仲間たちの姿があった。

「へー、エレメスにそんな弱点があったんだー。以外ー。
今度変な事言われたら、DSじゃなくて盗蟲投げ込んでやろうかしら」
「まぁまぁ、苦手なものは誰にでもありますわ。うふふふふ…これは要チェックですわね」
「…もし盗蟲みかけたら、FBで焼いてあげるから大丈夫…」
「気持ちは分かるぞエレメス。あの黒い悪魔は生きていていい存在じゃない。」

「うはwwwwwwいつのまに後ろにいたでござるwwwwwwww」
エレメスのびっくりした問いに、セシルは平然と
「ハワードが盗蟲を叩き潰す前あたりからずっと様子みてたわよ」
と返す。
どうやら恥ずかしい所も全部見られてしまったようだ。
しかしこれでめげるようならエレメスではない。
これは逆にチャンスだ! エレメスの直結パワーはここからが本領発揮だ!!
「うぅ…姫、拙者、怖くて大変だったでござる…。
今晩、姫に抱きしめられながら寝なければ心に大きな傷が残ってしまうでござるよ」
「あらあらまあまあ、大変ねぇ。でも、それは先約がいるから大丈夫じゃないかしら」
弱弱しくまもってあげたい男を小賢しく演じるエレメスを、さすが慣れたもの、
マーガレッタはさらりとかわす。

…ん? 先約…?

その言葉にエルメスの体中から、嫌な汗がどっと吹き出た。
「エレメス! (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルしてたお前もいつもと違う感じで良かったぞ!
可愛いお前も素敵だ! お前の傷ついた心は俺が一晩かけてゆっくり癒してやるからな!
まぁ要約すると『はう〜。お持ち帰り〜☆』だ!」
案の定放たれる、頼りになる聞き上手なお兄さんからハッテン…もとい一転した
いつもの彼の言葉に、自分が助けを求めた相手がハワードである事を思い至る。
「ちょ…やめwwwwwwwそれは新たな心の傷が増えそうだから
丁重にお断りさせていただきたく思う所存でござ…アッー!」


…。
エレメスの心と*に、新たな傷が増えたのかはまた別のお話。
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