「ふぅ、疲れたでござる…。そろそろ3Fに戻るでござるか…」

何時もの様に、2Fで暴れまわる冒険者達を追い返したエレメス=ガイルは、
首を鳴らしながらそう呟いた。

「おぉ、そういえば今日は姫が食事当番でござったwwwこれは急がねばwww」

姫の手w料w理www、そう思うと自然に足の運びも速くなる。
そうでなくとも、早めに席についてなければカトリーヌにつまみ食いされてしまう。
腐ってもござる、否、暗殺者。疾風の如き速さで3Fへの入り口に― …

『ちょっと待った――!!』

辿り着く寸前に、行く手を遮る様に立ちはだかる影。
腰に手を当て、視線でエレメスを射抜き殺さんと睨む女性の名前はヒュッケバイン=トリス。
その眼光は何処かの誰かを彷彿とさせるがきっと気のせいだろう。

「な、なんでござるか、トリスwそんな眼をしたら怖いでござるよwww」

『何 処 行 く の ?』

「何処って、3Fでござるが…。今日は姫の手作りご飯の日なんでござるよwだから其処を―…」

『ふぅん?兄貴、今日はスティールの極意を教えてくれるっていってなかったっけ…?』

「アッ―!!」

しまった、すっかり忘れていた。ちらりとトリスの方を伺うと相変わらずの瞳でこちらを見ている。
足元からオーラと紫電が出ている気するが、きっと気のせいに違いない。そう信じたい。

「すまないでござる、トリス。食事が終わったら必ず教える故…」

取り敢えず、にへら、と笑いながら謝ってみる。

『………………ふぅん、そう?私との約束よりマーガレッタさんの手料理なんだ?ふーん…』

状況ハ劣勢ナリ。
まるでペドメナのMHに突っ込んだかの様な緊張感にエレメスの背を冷や汗が伝う。

「す、すぐ食べて戻ってくるでござるwww約束は必ず守る故、機嫌を直すでござるよwww」

『……解った、行ってきていいよ』

嗚呼、神よ。感謝致します。
普段は祈りもしない神に感謝をささげ、思わず片手でガッツポーズを取る。

「では、トリス、後程…」

軽く頭を下げて、トリスの横を通り過ぎる。兄としての威厳も糞も無いが自業自得だ。

『あ、兄貴。話は変わるけど』

「ん、なんでござるか?www」

嫌な予感を感じつつも後ろを振り返る。

『コレ、なんだとおもう?』

そう言って、トリスのポケットから取り出されたのは―…

「…クレアボヤントクリップ?」

『そう、正解。アルマイアが拾ったのを私が買ったんだけど、他にもう一つ買った物があるのよね』

「…な、何をでござるか?w」

『ガードマフラー』

なんだろう、嫌な汗が噴出してくる。膝がガクガクと震えてきたのに気付き、手で押さえた。

「それで…、そのマフラーは…ど、ど、ど、どうしたんでござるか?」

『ん、ハワードさんにあげちゃった♪』

「アッー!!」

我が妹ながら悪魔じゃないかと一旦意識が遠のいた。危うく魂まで飛ぶところだった。
彼がクローキングを自由に使える様になった日には、菊門がどうなるか…
考えかけたところで頭を振る。

「………それでは、早速スティールの特訓をしに参るでござろうか…」

『ふふ、物分りの良い兄貴は大好きよ?』

ガックリと肩を落としたエレメスはトリスに腕を組まれて連れて行かれた。
その後、エレメスがハワードの魔の手から逃れられたかはまた、別のお話。[完]
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