朝起きると見知らぬ天井が見えた。自分の部屋ではない。
  慌てて自分には大きすぎるベッドから立ち上がり、辺りを見回そうとした時・・・
  着ていた大きすぎてだぶだぶな服が膝に絡まり転倒してしまう。
  着ていたのはお気に入りの寝巻きではなく、大人が着るようなネグリジェだ。
  当然のように混乱する。
「ここはどこぉ?わたし、なんでこんなところにいるのぉ・・・ううっ・・・ままぁ・・・ぱぱぁ・・・何処なのぉ?うぅぅ・・・うわぁーん!!」
  スタスタと足音がし、何者かがドアの前で足音が止まった。
エレメス「ひめwwwwおはようでござるwwww食事の仕度ができたでござるよwwww」
  この無法者はノックすらしない。いきなりドアを開け放つ。
「ひっ・・・」
  大きなベッドの端にうずくまり、少女は小さな体をさらに小さくしガタガタを震える。
エレメス「!?」
  マガレを起こしに来たのに、ベッドにいるのは見知らぬ5〜6歳の少女である。
  あまりのことに言葉を失い、少女に目をやったまま固まるエレメス。
「こ・・・来ないでよぅ・・・ぱぱぁ助けてぇぇ!!うわーーん!」
  少女の声に我に返ったエレメスは状況を把握しようと頭を回転させる。
  そして、結論付けた。
  あぁ、スレの魔力でマガレが子供になったのだ・・・と。
  よくよく見れば、金髪の髪も顔立ちもマガレにそっくりである。
エレメス「おおおおおぉぉぉおおおもちかえりでござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!1!1!!!1!!!」
  エレメスは自分の部屋に子供マガレをオモチカエリするべく泣き叫ぶマガレを抱きかかえた。
マガレ「いやぁーー!降ろしてよぉ!ああぁぁぁん、わぁぁぁぁぁん、うえぇぇぇぇん!」
  ぽこぽこと手足でエレメスを叩く子供マガレ。
エレメス「大丈夫でござるwwww拙者が大人になるまで手取り足取り腰取りしっかりと面倒をみるでござるよwwww」
  その言葉に良からぬものを感じたのかマガレはさらに泣き叫ぶ。
  その泣き声を聞きつけたセシルが部屋に入ってくる。
  そして目に飛び込んできたのは泣き叫ぶ半裸の少女を抱きかかえているエレメスの姿。
セシル「な・・・ななななにやってんのよぉぉ!動くな、生きるな、死んでしまえ!エレメスゥゥゥゥゥ!!!!」
  手に持っていた弓から高速で矢が放たれる。
  とっさに少女を守るため、背中を向けるエレメス。
  放たれた矢はエレメスの背中にずどどどどどっと突き刺さる。
エレメス「痛いでござる!何をするでござるか!」
セシル「何をするでござるか、じゃないわよぉぉー!あんたこそ何してるの!色々と犯罪じゃない!今すぐ死んでその子に詫びなさい!!」
  背中に般若のオーラを背負ったセシルがエレメスに弓を構えた。
マガレ「うえぇぇぇん・・・怖いよぅ・・・怖いよぅー!うえぇぇぇぇぇん」
  セシルの殺気に怯え、今までエレメスの腕の中で暴れていたマガレはエレメスにしがみついた。
エレメス「よしよしでござる。この怖いおばさんはすぐにいなくなるから大丈夫でござるよぉー。」
セシル「おばっ・・・!だだだだだれが怖いおばさんなのよッ!今すぐ死んでその子と私に詫びろぉぉー!」
  セシルの弓から矢が放たれる。
  しかし、それはエレメスが投げた短剣に弾かれ、短剣と共に床に落ちた。
セシル「なっ・・・!?」
  目が短剣と矢に行った瞬間、すでにセシルの前からエレメスの姿は消えていた。
セシル「何処行ったのよぉぉーーーー!」


エレメス「きぃーーーん。」
  すたたたたたっ
マガレ「きゃっきゃっ」
エレメス「きぃぃぃーーーーーん。」
  すたたたたたたたたたたたたっ
マガレ「はやいはやいー。きゃっきゃっ」
  エレメスはマガレを肩車しながら走る。
  マガレは風を浴び、すごい勢いで変る景色に喜んでいる。
エレメス「ききぃぃー!到着でござるっ」
  エレメスはマガレを肩車しながら食堂へ入っていった。
ハワード「よぅ、遅かったな。飯が冷めちまうぜ?」
  パンを齧りながら手を上げるハワード。
カトリ「・・・なんか・・・セシルが・・・怒ってた・・・よ・・・?」
  牛乳の入ったコップを両手で持ち、ちみちみと飲んでいたカトリが言った。
セイレン「そうそう、戻ってくるなり『エレメスは何処!?』って怒鳴り散らしてまた出て行った。」
  肩をすくめながら言うセイレン。
ハワード「・・・って、お前。その子はどうしたんだ・・・?」
  ハワードはエレメスの肩に座ってエレメスの髪の毛をにぎっている子供に気付いた。
セイレン「!!!(ずきゅぅぅぅぅぅぅん!!)」
カトリ「・・・?・・・マガレ・・・?」
  カトリは首を傾げながら言う。
  その子が発する魔力の流れがマガレのそれに酷似しているのだ。
エレメス「質問には食事をしながら答えるでござるよ。」
  エレメスはマガレを降ろし、自分の隣のマガレの席に座らせる。
エレメス「ささ、たんと食べるでござる。」
マガレ「いただきまぁす」
  牛乳を飲み、パンを食べ始めるマガレ。
ハワード「お嬢ちゃん、名前は?」
マガレ「まーがれった」
  もふもふとパンを食べながらマガレは答えた。
カトリ「・・・かわ・・・いい・・・」
セイレン「な・・・なんと言うか・・・普段のマガレからは想像できないな・・・(゚Å゚)ゴクリ」
エレメス「姫はいつも可憐で美しく、そして可愛いでござるよwww」
ハワード「この子が着ている紫とも黒とも言えない色のワンピースは何なんだ?」
エレメス「子供服がなかったゆえ、拙者のシャツでござる。色合いはともかく伸縮自在な布地なので、そう違和感はないでござろう?」
  大きめなタートルネックシャツをワンピースのように着ているのだ。
  と、そこへセシルが戻ってくる。
セシル「エレメス!!ココに居たかぁぁっ!!」
マガレ「!!」
  マガレはエレメスの背中にささっと隠れた。
エレメス「誤解でござるよ、セシル。拙者は別に誘拐もしてないしかどわしてもいないでござる。」
カトリ「・・・セシル・・・その子・・・マガレ・・・」
ハワード「おいおい、いい加減弓を降ろせ。子供が怖がってるぞ」
セイレン「セシル、とりあえず落ち着くんだ」
  セシルはふぅっと溜息をつき、弓を降ろす。
  それからエレメスのところへ行き、エレメスの頭にガンッとげんこつを落とした。
エレメス「痛いでござる!」
セシル「私のことをおばさん呼ばわりしたお返し。これでチャラにしてあげるわ。」
  それからセシルはマガレに向き直り言った。
  マガレはビクッと体を振るわせる。
セシル「驚かせてしまってごめんね。もう怒らないから、大丈夫だから。だから、怯えないでくれるかな・・・?」
  マガレはセシルの顔をじーっと見て、それから笑顔で答えた。
マガレ「うんっ!」
  セシルもにこりと笑い、自分の席についた。
  
エレメス「・・・というわけでござる。」
  食事も終わり、紅茶を飲みながら説明するエレメス。
セイレン「ふむ、スレの魔力か・・・それはしょうがないな。まぁ、一日もすれば元に戻るだろう。・・・至極残念だが。」
セシル「そもそも、なんで怯えてたマガレがあんたに懐いてるのよ!」
エレメス「ふっ、拙者の懐柔術を持ってすれば相手の心なぞがっちりキャッチでござるよwwww」
ハワード「大人のマガレには通用してないけどなー。」
エレメス「痛いでござる!心が痛いでござるよぉ!?ぐさっと来たでござるぅぅぅ!」
  胸を押さえてテーブルに突っ伏すエレメス。
  それを見てエレメスの頭をよしよしとなでるマガレ。
エレメス「ひめ〜〜」
  エレメスはマガレを抱きかかえて頬擦りをする。
マガレ「きゃっきゃっ」
  喜ぶマガレ。
セシル「子供限定の懐柔術ねぇ。」
セイレン「・・・エレメス。後でその懐柔術とやらを教えてくれないか。」
カトリ「・・・セイレン・・・なんで・・・?」
セイレン「え?あ、あの・・・ち、違うぞ!?子供を懐柔して、頬擦りしてうはーとかじゃないぞ!?えぇと・・・その・・・そ、そう!俺はなぜか子供に怖がられるからな・・・!そそそ、それだけなんだからなっ!?」
  セイレンはわたわたと両手を振りながら叫ぶ。
ハワード「エレメス、教えないほうがいいな・・・」
エレメス「そ・・・そうでござるな・・・」
  エレメスはマガレに頬をうにーんと伸ばされながら答えた。
セシル「それにしてもいつものマガレとはかけ離れてるわねぇ。」
ハワード「ま、あのマガレも子供の頃はおてんばだったんだろ。遊ぶ相手もいるし、マガレが退屈しないでいいんじゃないか?」
カトリ「・・・大人に・・・戻るまで・・・エレメスに・・・任せ・・・る・・・?」
ハワード「あぁ、それでいいかな。侵入者たちは俺らが追い返す。エレメスはマガレを守っていてくれ。」
セイレン「・・・うらやましぃ」
  エレメスにじゃれつくマガレを見ながらセイレンはぼそっと呟いた。
エレメス「いたた。りょ、了解でござるwww」
  エレメスはマガレに髪を引っ張られながら答えた。


  それから3日。
  まだマガレが大人に戻る気配はない。
ハワード「スレの魔力・・・今回は長いな。」
カトリ「・・・エレメス・・・楽しそう・・・」
  この3日間、エレメスとマガレはずっと一緒にいる。
  研究所内を探索したり、水場で遊んだり、本を読んだり・・・
マガレ「えれめすぅ〜、おままごとしよぅよ〜。」
エレメス「承知したでござるwwwして、配役はどうするでござるか?」
マガレ「えっとね、えっとね。まーがれったがママで、えれめすがパパ。」
エレメス「夫婦でござるwwww姫と夫婦でござるよwwwww」
マガレ「せしるはママとパパの子供で、はわーどはせしるのおにいちゃん。」
セシル「え?私もなの?!」
ハワード「おいおい、俺もやるのか?」
マガレ「せいれんはお米屋さんで、かとりーぬはパパのあいじん。」
セイレン「ちょ・・・お米屋さんって何だ・・・」
カトリ「・・・あい・・・じん・・・」

セイレン「ちわー、米屋でーす。」
マガレ「あら、こっちにおいていただけるかしら。」
セイレン「了解しましたー。」
マガレ「うふふ、あのね。お米屋さん・・・今日はパパが帰ってくるのが遅いの・・・」
セイレン「お・・・奥さん?!ボクを誘って・・・!?」
ハワード「はいはいはいはい、何をしてるのかなぁ。米屋さん?」
セシル「もぅ、おかーさんったら米屋さんで遊ばないのっ」
セイレン「がくっ・・・美人局だったか・・・」
エレメス「帰ったでござるwww」
マガレ「あら、パパ。おかえりなさい〜、早かったのね〜。」
エレメス「当然でござるwwww拙者は姫一筋でござるゆえwwww」
カトリ「・・・エレメス・・・私とは・・・遊びだった・・・のね・・・・・・許さない・・・・・・呪うわ・・・血を吐きなさい・・・」
セイレン「なんだ、この昼メロ状態」


  さらに3日経った。
セイレン「まだ子供のままだな・・・♪」
カトリ「・・・何か・・・うれし・・・そう・・・」
ハワード「このまま戻らなかったりしてな。」
セシル「え〜〜。それは困るんじゃ・・・」
エレメス「拙者は全く困らないでござるwwww拙者が責任もって姫を育てるでござるよwwwww」
マガレ「えれめす〜えれめす〜」
エレメス「はいはい、ひめ〜wwココでござるよーwwww」
ハワード「なんか・・・いいお父さんなのか、あれは。」
セシル「ぷぷっ、それで結婚式のときに泣きじゃくるのね。」
カトリ「・・・エレメスが・・・パパだと・・・マガレ・・・くノ一に・・・なりそう・・・」
ハワード「はははっ、今までだって男どもを虜にしてきたんだから聖職者でもくノ一でも変わらないな!」
  遠くではエレメスがマガレを肩車して走り回っている。
マガレ「えへへ〜。エレメスだいしゅき〜。」
エレメス「ひ〜め〜www」


   7日目。
  目が醒めた。頭がぼぅっとする。
  昨夜もいつものようにエレメスの布団に潜り込んで一緒に寝たマガレ。
  エレメスが隣で寝ている。
  エレメスはかなり朝早くから起き出すから、まだ夜中のようだ。
  喉が渇いた。ベッドから降り机の上に置いてある水差しからコップに水を注ぎ、口にする。
  もう一度寝なおそうと布団に戻る途中、ふと鏡に目が行く。
  そこにはグラマラスな身体に少し大きめなシャツを身に付けているだけの金髪の女が映し出される。
  しかし、寝ぼけた頭にはただの背景としてしか入ってこず、またベッドに潜り込んで寝なおした。
 
エレメス「ひ・・・ひめっ?!」
  誰かが叫んでいる。うるさい。まだ眠い・・・
  寝返りを打つ。
エレメス「うはwwww姫の顔が目の前にwwwww」
  何か聞える・・・眠い・・・再び意識が闇に溶けていく・・・

マガレ「ん・・・」
  ゆっくりと目を開く。
  目の前にはエレメスのゆるみまくった顔。
エレメス「おはようでござるwww」
  ぼーっとした意識が次第に覚醒していく。
マガレ「?!」
  がばっと体を起こし、辺りを見回す。
  見慣れた自分の部屋ではない、エレメスの私室のようだ。
  そしてなぜか着慣れた大きめのシャツ一枚の姿。
マガレ「きゃぁぁぁぁッ!」
  マガレはシーツを奪い取り、体に巻きつける。
  そしてエレメスにHLを叩き込み、部屋から出て自室に走り去った。

マガレ「お、おはようですわ・・・」
  着替えたマガレは皆がいる食堂へ入っていった。
ハワード「お、戻ったようだな。」
カトリ「・・・おはよう・・・」
セシル「おはよー、マガレ。」
エレメス「ひめwwwwおはようでござるよwwww」
セイレン「・・・おはよう」
ハワード「で、どうだ?子供の時の記憶はあるのか?」
マガレ「え、えぇ。ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳なかったですわ。」
エレメス「なんの、なんのwwww甘えてもらってwwww拙者wwwwうれしかったでござるwwww」
ハワード「はっはっは、お転婆マガレはなかなか新鮮だったな。」
カトリ「・・・マガレ・・・とっても・・・可愛かった・・・」
マガレ「もう・・・恥かしいですわ・・・」
  マガレは赤くなりうつむいてしまう。
セシル「はいはいはい、お喋りはここまで。みんな、とりあえずご飯食べましょ。」




その後、エレメスを見ると顔を染めるマガレとマガレを見ると溜息をつくセイレンがよく目撃されたとか。


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