×月○日。

何をどう間違ったのか、すこぶる運が悪い。
「あたし」ことセシルは着用が義務化されているネコミミの位置を調整しつつ、再びだらだらと見回りへと向かった。

「うはwwwww拙者がMVPでござるwwww」

とりあえずこいつが人間どもに排除されるまで、最悪である。
意気揚々とエレメスが取り巻きを引き連れて、あたりに自慢をしながら練り歩く。まるで大名行列みたいに。

いつもならば、誰がMVPだろうと関係ない。
何がどう変わるわけはなく、この研究所を訪れる人間どもと戦うことには変わりはないのだから。
だが、MVPというパワーバランスブレイカーとも言えるものはココ最近では意外な弊害を生み出した。

「最近つまらないから、MVPになれた人はその間一つだけみんなに命令が出来るってのは、どう、どう?」

と、ある日にMVPだったマーガレッタが(ハートエモを出しながら)言い出したのがそもそもの始まり。
文句を言うセイレンをにこやかに殴り倒し強行採決→可決(そもそも賛成はあたしとセイレン以外全員)へと至った。
というわけで『その回から』MVP絶対命令権は効果を発揮したのである。
一回目はマーガレッタ、2回目はハワード、そして3回目の現在と至る、が。
マーガレッタは「男女の衣装を交換すること」
ハワードは「とりあえず鎧を脱げ、話はそれからだ」(このときはなぜかハワードだけ上半身裸で過ごしていた)
そしてエレメスは―

「知っているか、者ども!それなりに昔、一部の人間の間ではネコミミなるものが流行ってたらしい!」

MVPになってみんなを集めたかと思えば、第一声がこれである。
みなそれぞれ一様にリアクションを取るなか、ハワードだけなぜか熱い眼差しでエレメスを見つめているのが気になる。
注目しろという感じでバンバンと壁を叩くエレメスは次々と言葉を紡ぎだす。
そして最後、大きく息を吸い腹の底から声を出して、こう言い放った。

「そこで!私は!絶!対!命令権を使用して!MVPである間!これを!義務付ける!!!」

そういいながらスクロールを引っ張って出てきた文字が
『女子は全てネコミミ着用(着用時は拙者の眼前で着用)』
これである。
まったく持って意味不明。しかも男は何もなし。

「待て!エレメス、とりあえず待て!これでは男女差べ・・・っ!?」

再びマーガレッタに殴られるセイレン。ロードナイトの肩書きが泣いているのが目に見える。

「男がつけても意味がないのだ、この阿呆が!とりあえず貴様なぞ馬に蹴られて死ね!」

そうして、女子一同全てエレメスの前に集められたわけである。


「あの・・・どうして僕も集められてるんでしょうか・・・?」

マーガレッタに首輪をつけられて、イレンドも半べそで参加させられていた。
そうして集まった女子6人&1人はエレメスの前に整列させられて、各々ネコミミ着用となったわけである。

「じゃあ一番左のマーガレッタから!さっさとはじめろ!」

となると、順番としてはマーガレッタ、ヒュッケバイン、イグニゼム、カトリーヌ、アルマイア、あたし、イレンドということだが―
命令するエレメスは、不自然に前かがみでもじもじしながら私たちの様子を逐一監視していた。

「じゃじゃーんっ、これでいい?」

マーガレッタは特に抵抗せずに普通につけた。
猫の物真似しつつ、尚且つ尻尾までつけるあたりは抵抗どころかノリノリである。

「どう、お兄ちゃん。かわいい?」

ここらへんも特に抵抗がないらしい。
エレメスはさらに前かがみになり、うんうんと頷いていた。

「く・・・、兄上の顔を立てるためにも仕方ない・・・」

思いっきり渋い顔をしながらイグニゼムは着用する。
その向こうで物凄くすまなさそうな顔をして妹を見にきているセイレンが凄くかわいそうだった。
そして徐々に前かがみになっていくエレメス。

「・・・ネコミミ、もーど・・・。ぉー・・・」

最後に小さく気合を入れて、ゆったりとイヌミミをつけるあたりがカトリーヌらしい。しかも斜めにずれている。
あえてイヌミミなのはわざとなのか天然なのか、ネコミミじゃないから文句出るかと思いきや、親指をさわやかにおったてているエレメスがかなり憎らしい。

「じゃあ次は私ね?どぅ、かぁいいでしょ?」

この人も大して抵抗がないらしい。でも黒いネコミミなのはこだわりなのか。
遠くで「アッー!金がまた減ってアッー!」とか聞こえてるがこの際無視した。

「・・・やるの?」
「やれ。」
「どうしても?」
「いいからやれ。」
「何で前かがみなのさ?」
「うるさい黙れ、さっさとやれ」
「しゃきっと立ちなさいよ!」
「いいからさっさとやるでござるぅぅぅぅぅ!」
「〜〜〜〜ったく、しょうがないわね・・。」

あたしはこの際どうでもいい。
問題は次。

「ぼ、僕もやるんですか・・・?」
「もちろんだ。」
「って、なんで姉さんは前々回の服を持ってきているんですかっ!?」
「いいからいいから、さ、脱ぎ脱ぎしましょうね〜。」

手をわきわきさせながらマーガレッタはイレンドの着せ替えを始める。
エレメスはなぜかさらに前かがみになってるし。
そして完成、アコライト♀イレンド。

「・・・僕・・・お婿にいけないかも・・・。」
「私が世話してあげるわよー♪あー、もぅかわいい!」(すりすりすり・・・)

「・・・ももも、もうだめでござるぅぅぅぅぅ!」

そうして女子の中へ突っ込んでいくエレメス―!

「こぉぉぉぉの瞬間を待ってたぜぇぇぇぇぇぇ!!」

好機とばかりに突っ込んでいくハワード―!
このとき、なぜか白い光が周囲を包み込んで、なぜかエレメスが消えたのを覚えている。
そして残ったのは肌がてっかてかになったハワードだけだった。


後日談―
4回目のMVPは再びマーガレッタで、今度の命令は

「じゃ、上位職の人は昔の服を、1次の人は上位の服をお試しで!」

「あの、姉さん?なんで僕だけ姉さんのハイプリ服なんですか・・・」
「・・・マジシャンの服・・・きつい・・・」

「・・・あたしぴったりだ・・・。|||orz」

やっぱり、私は不運だと思う。
きっと不運だ、不運に違いない。
・・・明日あたりエレメスにDS撃ち込んでストレス発散させようと心に強く誓った。

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