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あくまでむかしのお話


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3階控え室「セイレンのトレーニングルームにて」

「セイレン。少しいいでござるか?」
「うん?お前がこの部屋に来るとは珍しいこともあるな。エレメス」
いつもは汗臭いだのなんだの理由をつけてこの部屋には近寄らんくせに
「いや確かにこの部屋は男臭くて近寄りたくないでござるが……時々ハワードが潜んでいるでようでござるし」

「なに!」
奴がこの部屋にだと!?

「まあ、そんな事はどうでもいいでござるよ」
「よくない!これっぽっちもよくないぞ!」
「うむ。拙者お主に相談したいことがあるのでござる」
「完全にスルーしたな!?ええい、ハワードはどこに隠れてやがる!」
どこだ!クソッまったく気づかなかったぞ!
ドレーニングマシンしかない部屋にどうやって隠れてるんだ!?
「拙者、姫の茶室に皆を集めて待っているでござる。お主も必ず来るでござるよ?」

「まて!行くな、エレメス!クソッ!ハワードはどこだーーー!!」


3階控え室「マーガレッタのお茶会にて」

「で、相談とは何だ?」
クソッ!結局、隠れられそうな場所は見つからなかった……

ん?ハワード……野郎!笑ってやがる!?

「あらあら。どうしたのセイレン?顔が真っ青よ?」
「悪いものでも拾って食べたんでしょ!バカね!」
「……拾った……緑ポーション……飲む?」

「……お前らが私をどう思っているのか、一度問いただす必要があるのかもしれんな?」
今すぐにでもオーラが吹けそうだ
それと拾ったものを人に飲ますのはどうかと思うぞカトリーヌ


「はぁ……あのな?私はエレメスに相談があると言われたからここに来たんだ」
「あらあら。エレメスが相談事なんて珍しいこともあるものね?」
「姫wwwwひどいでござるよw」
「そう思うなら、まず普段の行動から正せ」
「まあ、それは置いておくでござるよ」
「置くな!」
「まあ、落ち着くでござるよw」

「今こそ決着をつけようか?」

「待つでござる!今回の拙者の悩みは拙者だけでなく、セイレンにも影響のある事でござるよ」
「へえ。エレメスとセイレンに影響があるのか?……俺も混ぜて欲しいな!」
「あらあら。セイレンとエレメスは仲がいいのね?」
混ざるって何にだ!?
……マーガレッタ?お前は何を妙にはしゃいでいる?

「ああ、もう!さっさと本題に入れ!エレメス!」
このままでは収拾が付かん

「うむ……いやな?相談とは拙者とお主の悪魔化についてでござる」

瞬間、場の空気が変わる


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ハワードが笑うのを止め、カトリーヌはいつもより無表情に
セシルは心配そうにキョロキョロと皆の顔を見回し
マーガレッタも暗い表情をしている

ふむ。悪魔化か……
「実感が湧かんというのが正直なところだな」
「お主もでござるか?」
「ああ」
急に体が悪魔に変わるといわれて実感が湧く奴などいないだろう
「まあ、何の因果か知らんがこんな体で生きているんだからな……そういう事もあるだろう」
「お主は達観しているでござるな」
「お前もそれほど堪えてはいないのだろう?」
その程度の事で悩む柄でもなかろうに

「まあ、拙者も悪魔になる事に悩んでいるというわけではないのでござるがなw」
かっか!と笑い飛ばすエレメス

場の雰囲気が少し明るくなる

「じゃあ!何を悩んでいるってのよ!!」
照れ隠しなのかいきなりトップスピードでぶち切れるセシル

「いやこれから悪魔になるでござるからな?それらしい振る舞いというのを皆で考えてみようというのでござるよ?」
そんな事だろうと思ったよ
「別に悪魔だからといって振る舞いを変える必要もないだろう」
「甘いでござる!フェイヨンで売り出したおはぎよりもさらに甘いでござるよ!」
だからどうやってそんな僻地まで行ってるんだ?
「よく聞くでござるよ?セイレン。なんと最近発見されたタナトスタワーの主はで悪魔で剣士らしいでござるよ!」
「だからどうした?」
「今のお主は人間一の騎士であろう。が、悪魔になれば例の魔剣士が上にくる!
ならば拙者達も今から悪魔っぽい振る舞いを勉強してそれにそなえるでござるよ!!」
「なんだ?悪魔っぽいって?」
「だからそれを皆で話し合いたいでござるよ!なんというかこう!
魔剣士タナトスなど我らの中では最も格下!とか言える様な悪魔っぽさを!」

それは微妙に違うだろう


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なんだか妙にハイテンションなまま皆の顔を見渡すエレメス
「なあ、カトリーヌ。お主にいい案はないでござるか!?」
そこでカトリーヌに振るか?
「……悪魔……召喚………儀式………生贄……山羊」
「どうしたでござるか?カトリーヌ」
「……エレメス……変態」
「なぜそうなるでござるか!?」
バフォメットの儀式でも連想したんだろう


「ええい!セシル!お主はどうでござるか!?」
エレメスはさらにテンションを上げながら今度はセシルの方を振り向く
「えっ!わっ私?えーと?」
まじめに考えることでもないだろうに
「まっまず、羽があって……それで飛ぶのよ!で、遠くの音が聞こえたり!超音波を出したりもするんじゃないかしら?」
「お主の発想は貧困でござるなwww」
「だれの発想が貧困かーーーー!!」
まあ、セシルだからな


「ああ、もう!ハワード!お主ならなにか名案が思いつくでござろう!?」
今度はハワードか。いい加減あきらめればいいものを
「えーとだな。まず、マッスルが大事だ!」
「なぜ筋肉が?」
思わず突っ込んでしまう
「悪魔なら筋肉は大切だぞ?それと腕が六本あるとさらにいい!」
「それは種族が違うでござろう!!」
悪魔で人を超えた存在ではあるがな


「姫ー!この連中になにか言ってやって欲しいでござる!」
最後の頼みとばかりにマーガレッタに縋るエレメス

「………………………………」

……様子がおかしいな
「どうした?マーガレッタ」
「どうしたでござるか?姫」


「ねえ?お願いがあるの。……悪魔の話はやめにしないかしら?」


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一旦は戻った空気がまた重いものに変わる

「別に悪魔になる程度の事で心配する必要はないと言っただろう?」
「そうでござるよ。姫。たかだが悪魔になるくらい心配ないでござる」

「心配ないなんて言ってない!」

「ちょ、ちょっと!落ち着きなさい、マーガレッタ!」
セシルが宥めようとマーガレッタの手を掴む

「離して!離してよ!」
掴まれた手を振り解こうと暴れるマーガレッタ

「キャッ!」
「……セシル!」
弾かれたセシルをカトリーヌが慌てて支える

「マーガレッタ!」
「やめろ。セイレン」
マーガレッタに怒鳴ろうとした私をハワードが制止する
「ハワード!」
「俺に任せろ。エレメスもそんな顔をするな」
自らの行いを悔やんでも悔やみきれないといった表情をしたエレメス
「大丈夫」
そういい両腕でバン!と私とエレメスの肩を叩いてから
いまだ半狂乱のマーガレッタに歩み寄るハワード

「マーガレッタ」
「いや!来ないで!」
暴れるマーガレッタに近づくハワード。マーガレッタの平手が体のいたる所に叩きつけられ跡を残す
「大丈夫だマーガレッタ」
マーガレッタの両肩に優しく、しかし力強く手を置きそう話しかけるハワード
「怖い!怖いのよ!皆!皆!!私より先に死んじゃって!何もできな……」
「大丈夫。ここには皆いる。セイレンもエレメスもセシルもカトリーヌも俺も
誰もお前を置いていなくなったりしない!」
「…………いや」
「大丈夫だ!仲間は皆、お前の傍にいる。それは絶対だ!」
「…………」

徐々に正気を取り戻していくマーガレッタ
やがて

「ごめんなさい。取り乱して」
「大丈夫よ!気にしなくて良いわ!」
「……大丈夫」

大分落ち着いたマーガレッタとそれを慰めているセシルとカトリーヌ

そして

「……お前には、まだ勝てそうもないな」
「……で、ござるな」
「なーに、心配するな!すぐにお前達も強くなるさ!」


「まあ、今はまだ少しお子様だけどな?」


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「ごめんなさい」
マーガレッタが頭をこれでもかと下げる

「謝る必要などないでござる!元はといえば拙者が……」
「いや、私にも責任がある」

「違う。私が……悪いの」

ポツリ、ポツリと話出すマーガレッタ

「古い記憶。ううん、古いのとは違うのかな?けど、とってもとっても昔のどれだけ手を伸ばしても触れられない記憶」
「私はね修道院にいるの。今とはちがう小さなお転婆な私」
「私ね。その時一人でお留守番をしているの。優しい先生や先輩のプリーストは皆用事で出払っていて……」
「その時にね?冒険者が私の住んでいた大聖堂に来るの」
「彼らは一緒に戦ってくれるプリーストを探していたわ」
「お転婆な私はね?彼らに無理を言ってついていくの。退屈な大聖堂から抜け出したくて」
「彼らが向かったのは古い古い古城。馬に跨った強くて怖い悪魔やこの世を彷徨う亡者達」
「いろんな悪魔を倒しながら彼らはどんどん、どんどん奥へと進んでいく」
「そして……沢山の彷徨う者に囲まれて一人ずつ死んでいくの」
「そのお転婆な私はね?勉強が嫌いでまともに支援もできなかった」
「仲間にかけた祝福がいざという時に切れちゃったり、乱戦の中でヒールができなかったり」
「そして結局私だけが生き残るの」
「怖かった……とっても怖かった……頼れる仲間は皆死んでしまって、彼らの死体の真ん中で私は立ち尽くしていた」
「その時ね、大聖堂で教わった特別なお祈りを思い出すの」
「勉強が退屈で退屈で。先生の言葉もまじめに聞いていなかった私がなんとなく覚えていただけのお祈り」
「まわりには死んでしまった仲間達と私を殺そうと狙っている悪魔達」
「必死にうろ覚えのお祈りにすがったわ」
「何度もつっかえながら祈りの言葉を唱えて。そしてお祈りの効果で私は意識を失うの」
「その後のことは覚えていないの。皆が助かったのか?それとも私も彼らと一緒に死んでしまったのか」
「今の私は覚えていない」

「………………………………」
皆、沈黙を守ってマーガレッタの言葉に耳を傾ける
うん?ハワード……なにか懐かしそうな顔を……

「だからね?セイレンとエレメスが悪魔になるって聞いた時とても怖かった」
「また、大切な仲間を悪魔にとられてしまう。そう考えたら夜も眠れなかった」
「ひょっとしたら皆でお茶を飲んでいる時に二人が悪魔になって私達に襲い掛かってくるんじゃないか?」
「そんな風に考えて怯えていたこともあるのよ?」
そう言って自嘲気味に笑うマーガレッタ

………うむ。一度はっきり言っておかなければいけないな

「まったく。そんな事を心配していたのかマーガレッタは」
「そんなことって!」
「何度でも言うぞ。そんな事だ!」

言いながら剣を抜き逆手に持ってマーガレッタに歩み寄る

「ちょっと!?なにやってるのよ!?」
「大丈夫だ。見てろよセシル」
ハワードがセシルを宥めてくれる……かなわないな

「マーガレッタ。この剣を持て」
「なにを」
「いいから!」
マーガレッタに剣の柄を強引に掴ませ
彼女の前に跪く
「で、だ。こう肩の辺りに剣を平らにして乗せるような感じで」
「セイレン?」
うん、いい感じだ
「では、始めるぞ?」
「はじめるって。いったい何を?」

覚悟はいいな?セイレン=ウィンザー

……よし!

「我、セイレン=ウィンザーはマーガレッタ=ソリン、セシル=ディモン、カトリーヌ=ケイロン
エレメス=ガイル、ハワード=アルトアイゼン、イグニゼム=セニア、ヒュッケバイン=トリス、
アルマイア=ディンゼ、カヴァク=イカルス、ラウレル=ヴィンダー、イレンド=エベシの騎士であることをここに誓う」
「たとえこの身が魔に堕ちようとも、仲間を傷つけるものあらば我が盾となり防ぎ、
仲間の前に立ちはだかるものあらば我が剣となり斬り伏せる!仲間を守る最強の騎士となることをここに誓う!」

「え?あのセイレン?」
騎士が誓いを立ててる時に話しかけられても困るんだがな
「あー、マーガレッタ。確か作法だと受け入れるときは剣を収めて手の甲にキスして
受け入れないときはそのまま首を刎ねるもんだったと思うぞ?」
ハワード……詳しいな?
「えっ?でもキスって!?」
「別に口にするわけじゃないんだし、さっさとしなさいよ?」
「……さっさとする」
お前ら軽いな、おい!
「見せ場を取られたでござる」
……こういうのは早い者勝ちだ

「もう!皆で好き勝手言って!」
いいながら剣を壁に立てかけるマーガレッタ
「手をとって、甲にキスすればいいのよね?」
「ああ!ぶちゅっといけ!」
後でみていろよハワード
「じゃっじゃあ!いくわよ?」
顔が赤いな。以外となれていないのか?

「貴方を……私達の騎士だと認めます」


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「もう!恥ずかしいったらないわね!」
ニヤニヤしているセシル
マーガレッタから主導権を取れてうれしいのか?
「あらあら。じゃあセシルちゃんもやってみる?」
「え!私は遠慮するわよ!」
「そういわないで!私の手の甲にキスしてみたくない?」
「したくないわよ!」
元に戻ったみたいだな。いや、照れ隠しか?

「姫」
「エレメス」
「拙者、騎士ではなくアサシン故仰々しい誓いは立てられぬが」

エレメス、喧嘩売ってるのか?

「拙者、仲間のためならばどのような手段を用いようとも、相手を殺して仲間を守るでござる」
「拙者、仲間のためなら悪魔になれる男故」

その言葉に微笑を返すマーガレッタ

「ええ、私達を守ってね?エレメス」
「御意」

「お主一人に美味しい所はとらせんでござるよ。セイレン」
「好きにしろ。エレメス」


ああ、そうだ。皆を安心させるためにも、一つ確認を取っておこう

「なあ、皆?私とこいつが悪魔でも仲間でいてくれるだろう?」


皆、一斉に頷いた








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3階控え室「セイレンのトレーニングルームにて」


まったく今日はいろいろあった一日だ。まあ、実りも多かったがな


カタ

うん?なんだこの音は?
まさか……ひょっとして!

意識を集中し部屋の中をじっと見つめる
なにか見えないものが見えるような、今までにない不思議な感覚を覚える
これが悪魔の能力ってやつかな?

まあ、そんなことはどうでもいい

「そこか!!」
槍を壁に向かって突き出す

瞬間

「うほッ! いいスピアスタブ!」

「わざわざガードマントまで用意して隠れているとはな」
無駄な労力を使いやがって

「なあ?セイレン?一つ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
下らんことなら斬り捨てるぞ




「俺が、ホモでも友達でいてくれますか?」

「断る!!!」



                                         あくまでむかしのお話 END

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注1 別にジェニミやリムーバーやウィレスを忘れているわけではありません
   断じて忘れていません

注2 このSSでのマーガレッタ関係はレディムプティオの話とスレに書き込まれた様々なネタを元に
   脳内で合成したものです。スレの皆様に感謝いたします。

注3 微妙に古いネタが入っているのは作者がそこそこの年だからです。

注3 ぺっペルソナー!
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